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香織とオリビアとのデート⑫



 香織が早々に行動を起こしている中、オリビアは真剣な表情で舞台を見ながら思考を巡らせていた。オリビアは確かにデートの経験は皆無であり、世間知らずな面もある。ただし、極めて真面目な性格をしており、デートに関してもしっかりと参考となる書物などで勉強してきていた。


(ミズハラカオリは、舞台の関係が進展する場面がいい雰囲気の場所と言っていました。いい雰囲気というのは抽象的すぎて判断が難しい所でしたが、関係の進展となれば未熟な私でも理解することができます。参考文献なども含めて考えれば、この手の演劇における推移は、出会い、交友を深める、恋仲になるという三段階と考えていいでしょう。出会いに関しては関係の進展と表現するのはやや強引ですし、恋仲になる過程を描く物語において恋仲になるというのはクライマックス……さすがにそれでは遅すぎるでしょう。となると、となると交友を深めていく場面が、タイミング的に適切と考えるべきですね。ですが、この段階はもっとも範囲が広い……)


 性格的な部分なのか、本当にまじめに状況や段階を考え恋人繋ぎに移行するタイミングを図ろうとしていた。もちろん思考をしながらも演劇もちゃんと見ており、内容が頭に入ってこないということもない。

 現在の演劇は序盤であり、小さな村の御神木として崇められている木の精霊と村の青年が出会うシーンが演じられていた。


(ミズハラカオリに聞いた助言や、参考文献の紹介をなどから考えると……恋愛物の物語を鑑賞するにあたり、重要なのは共感性と感情移入……登場人物の境遇などに対し、己に共通する部分を見つめることで共感性を高め、登場人物の心情を考察することで感情を移入し、深く物語を楽しむことができるはずです。となれば、適切なタイミングを図るためにも、まず私はこの演劇における物語と自身を照らし合わせて、共感を得られる部分を見つける必要がある)


 助言した張本人である香織が聞けば「い、いや、いちいち真面目過ぎる!?」と、そんな感想を抱いたかもしれないが、とりあえずオリビアは真剣そのものである。

 恋人繋ぎに移行するために最も適したタイミングを探るため、より深く物語を理解しようとしていた。


(外の世界をまるで知らない精霊を青年が連れ出し、精霊が知らなかったものを教えていく……この境遇は、少々私にも覚えがあるものですね。なにも知らなかった無知な私を、ミヤマカイト様が導いてくださり、そのおかげで私の視野は以前とは比べ物にならないほどに広がりました。いま思えば、以前の私はなんと狭い世界で生きていたのか……信仰や役割を言い訳に使い、経験の伴わない知識で満足していたことがいかに愚かだったか、いまはとてもよく理解できます)


 幸いにも演じられている物語は、オリビアにとって共感を持ちやすいシチュエーションであり、自分の境遇に照らし合わせるという部分はすぐに成功した。

 ヒロインである精霊と己の境遇にそれなりに共通する部分も多く、ヒロインの精霊も村を守護する使命を重視するやや硬い性格であり、比較的感情移入もしやすかった。


(……見えてきました。いまは序盤の出会いを起点とする物語がまとまり、ここから徐々に親交を深めていく展開になるはずです。そのあとでなんらかのトラブルや困難が発生し、それを乗り越えて最終的に結ばれるという形とみました。もちろん幸福な結末ではなく悲恋のような結末になる可能性もありますが、この演劇はミズハラカオリが強く推奨してきた劇団のもので、この劇団の演目は全て最終的にはハッピーエンドになると聞いています)


 いちおう最終的にどの演劇を見るかを決めたのはオリビアではあるが、恋愛物が大好きな香織の意見はかなり多く含まれており、香織がハッピーエンド至上主義のため、オリビアの予想通りこの物語は最終的に青年と精霊が結ばれる幸せな結末になる。


(となると、私が行動を起こすべきタイミングは……この後に徐々に交流を深めていき、互いが互いを想い人と意識し始めるぐらいのタイミングが適切なはずです。となれば、重要になってくるのは登場人物の感情の変化を鋭く察すること……いままで以上に集中しなければ……)


 ともかく真面目かつ真剣そのものなオリビアではあるが、果たして気付いているのかいないのか……ヒロインの精霊の境遇が己と似ていて感情移入しやすい状態……自然と「もし自分が同じ状況なら?」という考えは湧いてくる。

 そうなった場合に、彼女が恋仲に相手役として誰を思い浮かべるのか……そして、そういった想像により、事前の祈りで散々苦戦したことが再び起こりえるのも、必然ではある。




シリアス先輩「やっぱ同じ恋愛ザコ勢と考えても、アリスとは方向性が違うというか……オリビアの場合は、キリッと真面目な顔で一直線に『自爆』しにいく感じか……」

???「自分自身の心境とかは後回しに考えがちのタイプですから、突っ込んだ先で我に返って恥ずかしくなる感じですかねぇ」

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― 新着の感想 ―
 香織さんの助言をめちゃくちゃ真面目に考えてたw しかもいい雰囲気っていう見えないものをしっかり分析しようとするところはオリビアさんらしさがあるね。  あっ、舞台の内容は精霊と聞いてリリウッドさんと…
恋愛における〜・・・的な学術研究のレポートかなw
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