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香織とオリビアとのデート⑧



 レストランを出て演劇が行われる劇場に移動しつつ、オリビアは思考を巡らせていた。


(予想外の事態はありましたが、デートの食事において必須項目は達成することができました。この流れに乗って次の演劇においても目標をしっかりと達成したいところです。しかし、参考文献には演劇に置いて行うべきことというのは記載がありませんでした。ですが、『いい雰囲気になった』という曖昧ながら変化を示す表現があったので、なにかしらが必要になってくるのでしょう。私の洞察力が試される試練と考えてよさそうですね。万象天地未来を見通すシャローヴァナル様は、きっとこの試練を乗り越えることで私が成長できると考えてミヤマカイト様をデートに誘うように申しつけられたのでしょう)


 もちろんそんな事実は一切ないのだが、とりあえずオリビアにとってこの演劇は事前にシミュレートするのが難しかったものであるのは間違いない。

 劇を鑑賞するという形式上、オリビアが能動的に起こせるアクションは限られており、快人の演劇鑑賞を邪魔しないように最終的にいい雰囲気となれる手段を考えていた。


(参考文献などには劇の最中に手を繋ぐというものがありましたが、すでに私とミヤマカイト様は手を繋いでいます。であれば、手を繋ぐというのは除外……しかし、それ以外にミヤマカイト様の演劇鑑賞を邪魔せずに起こせる行動というのは……はっ!? まさか、そういうことなのですか……手を繋ぐという行為には段階があると記載があったはずです。いまのように普通に手を繋ぐ段階の上に、互いの指を絡めた形の繋ぎ方があった筈……な、なるほど、この演劇をもってその段階に進むというわけなのですね!)


 もし仮に、快人や香織に心の中を読む力があれば、オリビアの思考を見て「生真面目さを拗らせるとこうなるのか」という感想を抱いたかもしれない。

 だが、オリビアの思考を読める者はいない上、感情が分かる快人も悩んでいたオリビアの悩みが解決したようにしか感じないので、オリビアが考え実行しようとしていることがなにかまでは気付かない。


(ミズハラカオリ、聞こえますか? 頭の中で考えるだけで構いません)

(……え? な、なんですかこれ? 急にオリビア様の声が頭に響いてきたんですけど……魔法かなにかですか?)

(いえ、私は友好都市以外ではほぼ魔法は使えませんので、これは魔法による会話ではありません。ただ、貴女に関しては日頃世話になっている礼も兼ねて、神族の祝福に近いものを与えてありますので、その繋がりを辿って魔力の波長を共鳴させていますので、魔物が魔力波長で会話する状態に近いです)

(………………待ってください情報量が多いというか、私のことなのに私が知らない情報しかない!? い、いや、まぁ、その辺りは後でしっかり聞くとして……どうしたんですか? こんな方法で話しかけて来るってことは、快人くんには聞かれたくない話なんですよね)


 あまりにもツッコミどころが多すぎる内容ではあったが、とりあえず香織はいろいろな確認を後回しにすることに決めた。なんとなく胃痛の予感がしたので、デートの最中に胃痛を喰らうよりは、あとでゆっくり胃を痛めながら確認したほうがいいだろうという判断である。


(ええ、この後の演劇に関して我々がミヤマカイト様に対して起こすべき行動についてです)

(……なるほど?)


 当たり前のように自分も含まれていることになんとも言えない表情を浮かべつつも、香織はひとまずオリビアの話を最後まで聞くことにした。

 そんな香織に対して、オリビアは先程達した結論について説明する。


(……真面目過ぎるというか、オリビア様らしいというか……えっと、つまりアレですよね? いわゆる恋人繋ぎ的な事をするってことですよね。えぇぇぇ、さ、さすがにそれは結構恥ずかしいんですが……)

(ですが、我々がデートを完璧に完遂するためには必要なことです)

(そ、そうですかね? そんなに早い段階で恋人繋ぎとかするんですかね? ああいや、でも、異性とデートするって時点である程度距離は近いって判断だとすれば、想定するシチュエーションが友達以上恋人未満とかだと、そういうのもあるかも……う、う~ん。自分の恋愛経験の無さが恨めしい)


 オリビアの理論にはツッコミどころを感じていたが、香織も恋愛関連には疎いというか、彼女の知識は恋愛物の創作物が中心であり、比較的大胆に距離を詰めているものも多く、デートの段階にまで進んでいるならありえなくはないと結論付けた。

 単純に恋人繋ぎというのに、淡い憧れがあったのもあるが、とりあえずそのままオリビアと香織は演劇中にどう行動すべきかを話し合っていった。


 しかし、ここでふたりには大きな誤算がひとつ。オリビアが語ったように、現在のふたりは魔物の波力波長による意思疎通に近い状態でやりとりをしている。

 となると……。


(……どうしよう? 全部聞こえてるんだけど……)


 そう、祝福の影響で魔力波長による会話を読み取れる快人には、ふたりの会話が丸聞こえであり、なんとも言えない気まずさを感じていた。




シリアス先輩「恋愛経験ない者同士が相談してる内容を、恋愛経験豊富なやつが聞いてる状態。かといって快人に内緒で話をしているつもりであろうふたりの会話に割り込むのも憚られる感じか……」

???「カイトさんは、魔力波長だけじゃなくて魔力に念話とかも盗聴することができるんですよねぇ。ただこれは感応魔法と祝福の合わせ技による影響なので、カイトさんが普段無意識に展開してる魔力に触れるぐらいの距離じゃないと盗み聞きはできないんですが……今回は手を繋いでるぐらい近くなので、バッチリ聞こえてますね」

シリアス先輩「それってつまり、快人が感応魔法をオフにすれば聞かなくて済むってこと?」

???「いえ、カイトさんは確かに感応魔法をオフというか、感情を読み取らないようにはできますが、魔力を体外に一切出さない状態……ツヴァイさんとかがしてる状態は高度すぎてできないので、魔力は纏ったままです。感情を読み取る機能だけオフにしてる感じですね。なので、周囲で急激に大きな感情の動きがあったりすれば強制オンになりますし、あくまで機能の一部をオフにしてるだけで感応魔法自体は展開されてるので、今回の状態はカイトさんが意識して防ぐのは無理ですね」

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― 新着の感想 ―
 演劇での目標は特に決めていなかったんだ……あぁ、なるほど、恋人繋ぎか。確かに、同じ手繋ぎでも恋人繋ぎの方がいちゃラブ度が高いね。  衝撃の新事実。香織さんは神族の祝福に近いものをオリビアさんから与…
なるほど、そうきたか。 そして、ソウキタカ・・・カイトくんにこの距離では隠し事はできそうもないなこの情報だと。特にこの2人みたいな方だと余計に。 知らないふりしつつ自分からやってしまうか、相手から…
さすが地球代表胃痛戦士w予想外の所で予想外の胃痛案件が飛んでくるとはww しかし、この会話聞かれてるともしわかったら二人どんな反応するか気になるなw
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