香織とオリビアとのデート⑦
最初にちょっとしたイベントというか、間違いなくオリビアさんの勘違いによるものだとは思うが、互いに料理を食べさせ合う形となった以外は、滞りなく食事は進んでいった。
人気店というだえかって料理はどれも美味しかった。野菜中心のメニューであり、ヘルシーな感じで女性人気も高そうだ。念のために恥ずかしさを我慢して、事前にピーマンが苦手ということも伝えてあったのでピーマンが入った料理が出てきたりすることは無く、美味しく食事をすることができた。
「そういえば、昼食の後の予定はどんな感じですか?」
今回のデートプランについては、俺は詳しく知らない。午前中はウィンドウショッピングを楽しむという話は聞いていたが、午後に関しては詳しくは知らない。
さすがにこのまま買い物を続行というわけではないとは思うので、劇とか音楽とかの鑑賞ではないかと予想はしている。
今回のデートプランの作成はオリビアさんが主体であり、香織さんがいろいろアドバイスをしている形だ。オリビアさんはもちろんというべきか過去にデートをした経験はゼロであり、香織さんに関してもここまでのやり取りからあまりそういった経験は無いように思える。
となるとやはり、ある程度定番を抑えた感じになるんじゃないかとは予想している。劇とか音楽とかを鑑賞……どこかこの街ならではの観光場所があるならそこを見るというのもあり得る。
赤レンガ造りの町並みだから夕焼けと合いそうだし、夕方はどこか景色のいい場所にいくのではないだろうか? そして日が暮れるぐらいのタイミングで夕食じゃないかな?
「いちおう予定としては、午後に劇を見る感じだね」
「なるほど、劇ですか……なにか丁度いいものが公開されてたりするんですか?」
「うん。いま凄く人気の劇団がこの街で公演をしてるんだよ。雑誌とかにも特集記事とか組まれてるだよ」
「へぇ、それは楽しみですね。劇を見るのは久しぶりなので、楽しみですよ。オリビアさんは、劇とかは普段見ることはあるんですか?」
この世界に映画とかは無い。まぁ、映像魔法具がもっと普及してきたら作られるかもしれないが、少なくともいまの時点ではそういうのはない。
デートの定番と言えば演劇か音楽鑑賞であり、香織さんの言うように人気の劇団とかは雑誌で大々的に特集を組まれたりする。
「いちおう勇者祭の折に創生物語などの演劇は鑑賞したことがあります。アレは中央大聖堂までのセレモニー会場で行われるので……それ以外となると見たことはありません。ですが、参考にした文献には、デートに置いて演劇の鑑賞は王道であると記載がありました。ミズハラカオリに相談したところ、絶対に恋愛をテーマとした演劇にすべきと強く勧められましたので、そちらを選びました」
「あ、いや、そんなに強く……言ってはない気が……いや、その……私そういうの結構好きだから、紹介に力が入っちゃった可能性も……」
なんとなくではあるが、香織さんはアリスのようにコテコテの恋愛的シチュエーションに憧れているような節がある。
アリスほど分かりやすい感じではないが、先程料理を食べさせ合った時も、どことなく憧れのシチュエーションを体験出来て嬉しいという様子があった。
だからだろうか、その手の恋愛物の劇とかもかなり好きなのかもしれない。俺は恋愛物の劇っていうと……前にフィーア先生と一緒に見たのが最後かな? 冒険譚風の劇であれば、シロさんと一緒にハイドラ王国の建国記念祭で見たが……。
「ちなみに香織さんはよく演劇を見たりするんですか?」
「う、う~ん……難しい質問だね。いや、凄く好きなんだけど、ああいうのにひとりで行くのはちょっと抵抗があったりして、本当に時々ぐらいしか……茜さんに一緒に行こうって誘ったこともあるんだけど『いややわ、恋愛物はなんかむず痒くて苦手やねん』って……」
「ああ、言いそうですね」
茜さんは間違いなくそういうタイプというか、仮にデートするとして定番のシチュエーションとかじゃなくて、普通に買い物とか観光するような感じになりそうな気がする。
そのままオリビアさんと香織さんと、演劇について話をしつつ、昼食の締めとなるデザートを口に運んだ。
シリアス先輩「演劇鑑賞、定番ではあるが……どういう展開に持っていく気だ? ふつうその手のシチュエーションで定番は、互いの手が触れ合ってドキッとするとかそんな感じだけど、すでに街を移動するときに手を繋いでいるわけだし……う、う~ん、分からん。恥ずかしがってテンパる割に、オリビアは行動力が凄いから、なんかやりそうではある」