香織とオリビアとのデート①
帰宅がかなり遅くなったので、今日は短めです。
オリビアさんが予約してくれているレストランは、エリスさんが人気店だと言うだけあって外観からしてお洒落な感じだった。
超高級レストランという感じではなく、むしろ景観を重視しているような赤レンガの町並みによく合う、少しレトロさと温かみを感じる雰囲気で、俺としては結構好みである。
ただひとつ気になったのは、レストランの入り口の前でウェイターと思わしき店員が立っており、俺たちを見ると深く頭を下げた。こういう出迎えをするレストランなんだろうか?
いや、でも近くに来て気付いたのだが、お昼時にも拘らず店内に他の客が居ない気がする。
「予約していたオリビアです」
「お待ちしておりました。お席にご案内いたします」
そしてウェイターらしき人から伝わってくる緊張と恐縮しているような感情……ああ、そうか、オリビアさんが予約したってことは、相手は客が教主であると知ってて当然である。
たぶんこれ、オリビアさんが貸し切りにしたとかではなく、店の方が万が一にもオリビアさんに失礼があってはいけないと貸し切り状態にしたのだろう。
「……快人くん、これ私たち超VIPって認識されてる感じかな?」
「間違いなくそうだと思います。俺の感応魔法でも、かなり畏縮してるような感情が伝わってくるので……」
おそらく俺と同じ考えに至ったであろう香織さんが小声で尋ねてきたので、同様に小声で返す。
まぁ、若干驚きはしたが理由を考えてみれば納得だし、俺たちとしても他の客にオリビアさんのことがバレて騒ぎになったりという心配をしなくていいので、むしろ貸し切りでよかったかもしれない。
そんなことを考えつつ、店に入るために繋いでいた手を離すと……オリビアさんがまた一瞬、凄く寂しそうな顔をしていた。なんというか、子犬感のある可愛らしさである。
まぁ、それも一瞬のことであり、すぐにいつも通りの雰囲気に戻った。そして俺たちは店員の案内に従って店の中に入ったのだが、そのタイミングであることに気付いた。
俺たちを案内するウェイターからは強い緊張が伝わってくるのだが、それ以上にオリビアさんから緊張を並々ならぬ覚悟のような感情が伝わってきていた。
……なんだろうこの感情は? オリビアさんの性格、ここまでの言動を考えてみると……あっ、これはもしかしてアレか?
自分が選んで予約した店の料理が俺の口に合わなかったりしたら、それは許されざる大罪だとかそんなこと考えてそうな気がする。
それこそ本当に、失敗したら腹を切って詫びるとか、そんな感じの覚悟の籠った感情が伝わってくるので……ちょっと、これは食事前にフォローを入れておこう。
シリアス先輩「実際マジで、そんな感じのどんな罰でも受けるって覚悟を決めてそうではある」