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デート計画実行㊳



 この世界、トリニィアの貴族にとって影響力は絶大ながら迂闊に関わると危険と認識されている存在はいくつか存在する。

 比較的交流を持ちやすい存在なら、クロムエイナやリリウッドといった温厚な存在がいるし、関わること自体を恐れられている存在としてはアイシスやメギドといった例がある。


 それとはまったく別のベクトルに置いて迂闊に関わろうとすれば身を亡ぼすことに繋がりかねない存在……まず代表的なのはシャローヴァナルだ。そもそも貴族どころか王族であっても、直接シャローヴァナルに話しかけることは許されないほどの存在であり、迂闊に関わろうとすれば神族全てどころか……文字通り世界のすべてを敵に回しかねない世界の頂点。


 次に幻王ノーフェイスことアリス。世界の実質的な裏の支配者であり、あらゆる情報を握る存在かつ、世界の安定に反するものを容赦なく処分する冷徹さも兼ね備える六王。

 貴族社会においてはアイシスよりもアリスの方が遥かに恐れられており、幻王が貴族の前に姿を現すことは、すなわちその貴族の処分を意味するなどとも言われている。


 最近加わったばかりではあるが、異世界の神であるエデンもそうだ……すでに世界に存在するすべての貴族に対して、忠告または脅しを完了しており、一部の貴族は名前を聞いただけで震えあがるほどに恐れられている理屈の通用しないヤバい神。


 そして……教主オリビアである。


 この世界には実際にシャローヴァナルや神族といった神が存在していることもあり、世界的に信仰心は高めであり宗教に関しても神教が唯一絶対のものである。

 神教の中でいくつか派生しているものの、程度の差はあれど世界中の大半は神教に属しており、オリビアはこの世界における宗教のトップであり、非常に扱いの難しい存在だ。


 基本的に誰かと親しくすることは無く、貴族的な行事にも一切参加せず、そもそも貴族と関わりを持つこと自体が無い。だがその影響力は絶大であり高位貴族であってもオリビアの不興を買えば没落一直線である。


(教主様は、友好都市運営の上位陣や聖堂の高位神官以外とはほぼ関わらない存在。少なくとも私のお父様でも、一度もお話したことは無いでしょうね。ここは迂闊に挨拶などをすべきではないでしょう。あくまでカイト様から紹介を受けた場合にのみ……)


 オリビアと迂闊に関わりを持つのは危険であると判断したエリスは、ひとまず自分の方から行動は起こさないことにした。そもそもオリビアが己に興味など抱かないだろうと思っているのもある。

 だがもちろん、そんな計算を嘲笑うかのような行動をするのが……快人である。


「あ、エリスさん、紹介しますね。こちらが俺と同じ異世界人で、水原香織さんです。そしてこちらが、オリビアさんです」

「初めまして、エリス・ディア・ハミルトンと申します」


 快人から紹介という形で香織とオリビアの名前を告げられたことで、エリスは軽く一礼をしつつ挨拶を返す。あくまで個人として快人から紹介を受けただけで、貴族として挨拶をしたわけではないという意味も込めて、侯爵令嬢であるとは告げずに名前のみを伝える。


「あ、は、初めまして、水原香織です」

「……」


 香織はやや緊張した様子で挨拶を返し、オリビアは静かに見定めるような目でエリスを見ていた。


(教主様が私と、ひいてはハミルトン侯爵家と関わりを持つ気が無いというのは本当に助かります。この状況ならあくまでカイト様に紹介されただけで、ハミルトン侯爵家と教主様の間に交流があるとは思われないはず……おそらく教主様もそれを察して、無言でこちらを見ているだけなのでしょうね)


 無事に終わりそうな予感にエリスは内心でホッとするが、その直後にオリビアは快人の方に視線を向けて口を開いた。


「ミヤマカイト様、確認をさせてください。彼女は、ミヤマカイト様にとって重要な相手でしょうか?」

「重要って言い方はアレですけど、エリスさんは大切な友人ですよ」


 淡々と問いかけるオリビアに対して、快人が苦笑しつつ答えた瞬間、エリスは背中が凍り付くかのような寒気を感じた。


(……カイト様? あの~このタイミングで、その発言は……いや、あの、私は光栄ですよ? 光栄ですが!? 教主様がわざわざそれを確認したということは……あ、あわわ……)


 果たしてそんなエリスの嫌な予感は的中し、快人の返答を聞いたオリビアは一度頷いたあとでエリスの方に向き直った。そして改めて向けられた目には、品定めをするような警戒は消えていた。


「ミヤマカイト様にとって大切な相手であるのなら、私……ひいては神教にとっても重要な存在ですね。初めまして、エリス・ディア・ハミルトン、私はオリビアと申します。今日の出会いが、今後のよき交流につながることを祈ります」

「……ぁ……はい。光栄の極みです」


 思わず天を仰ぎたくなったエリスではあったが、それは無礼に当たるため深く頭を下げた。オリビアの方も名乗り、今後に言及したということは……少なくともオリビアは、エリス個人に関しては交流を持つに値する相手と判断したということであり……店舗内にいる他の貴族から、今日中にでもアルクレシア帝国中の貴族に話が伝わるであろうことを察したエリスは、胃がえぐり取られたかのような痛みを感じつつも、必死に鉄壁の微笑みを浮かべていた。




シリアス先輩「胃がえぐり取られそうな一撃……これはハードパンチャー」

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― 新着の感想 ―
とは言えエリス嬢はちゃんと有能なのがまたw
胃に穴が開く痛みに対して、胃がえぐり取られるとはどのくらいなんでしょう?パワーショベルのバケット叩きつけた感じ?パイルバンカー(浪漫兵器)撃ち込んだ感じ? ……傍で見ている香織さんといい友達になれそう…
 シロさんやアリスは関わろうとしたらヤバい理由があるけど、エデンさんの説明だけ、ただただ理不尽の塊のような紹介の仕方と実際にその通りなのが面白いw  まぁ、シンフォニア王国首都大聖堂の大司祭であるグ…
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