デート計画実行㉟
雑貨屋では香織さんはいくつかの卓上インテリアを購入し、オリビアさんも祈りの鐘を模したインテリアを購入していた。
雑貨屋から出て再び手を繋ぎなおし歩いていると、香織さんが思い出したように声をかけてくる。
「そういえば、快人くんはなにも買わなかったね?」
「う~ん、いいデザインのとかあったんですが……あんまり俺の部屋に合う感じのはないかなぁって」
「あ~その辺の相性って大事だよね。ちなみに快人くんは、なんか卓上インテリアとか飾ってたりするの?」
「えっと、普段よく日記を書いてる机があって、その上には薔薇のハーバリウムを飾ってますね」
以前のように毎日びっしりというわけではないが、いまも印象的な出来事などがあった日には日記を書いている。たまに読み返して「あ~こんなことがあったなぁ」とか思い出すのも楽しいものである。
まぁともかく、日記を書いたり手紙を書いたりする用の机があるのだが、そこには依然ロズミエルさんに貰ったハーバリウムを飾ってある。
「お、お洒落……やっぱりモテる男は部屋の中もお洒落だったりするんだね」
「ああいや、ハーバリウムは貰い物で……薔薇姫ロズミエルさんから貰ったものですね」
「……あ、相変わらずとんでもない……ロズミエル様のハーバリウムって、勇者祭とかでたまに展示されたりするぐらい凄いやつじゃん」
「え? そうなんですか?」
意外な情報が飛び出してきた。確かにロズミエルさんの芸術的センスは凄く、貰った薔薇のハーバリウムも素人の俺が見ても素晴らしいと感じる品だし、部屋に遊びに来たジークさんも絶賛していた覚えがある。
「薔薇姫ロズミエルは芸術の分野でも有名で、彼女が施したフラワーアレンジメントなども極めて人気が高いです。ですが、孤高の薔薇と呼ばれるロズミエルは界王陣営意外とはほぼ交流を行わず、フラワーアレンジメントやハーバリウムなどの作品を販売したり、制作依頼を受けたりということもほぼありません。私の知る限りでは、勇者祭やハーモニックシンフォニーといった界王リリウッド・ユグドラシルが関わる行事の際には提供することもあります」
「そうそう、オリビア様の言う通り、ロズミエル様のフラワーアレンジメントとかハーバリウムはすごい人気なんだけど、販売とかすることが無いから……それこそ、ロズミエル様に直接貰わない限り手に入らないんだよ。でもほら、ロズミエル様はクールで物静かだし、個人的な依頼とかは一切受けないって……前に読んだ雑誌に書いてあったよ」
「……なるほど」
おおむね情報は理解したし、納得した部分もある。そして、相変わらずというかなんというか世間的なロズミエルさんの印象はやはりクールで孤高という感じっぽい。
実際は極度の人見知りなので、知らない相手からの依頼とかを受けないだけなんだと思うが……薔薇の小物入れとかも、極々限った店にしか卸してないという話だったし……。
「まぁでも、確かに凄く綺麗なハーバリウムなので人気なのも頷けますね」
「というか、快人くんの部屋って本人が気づいてないだけで凄いものいっぱいありそう。見てみたいような、見るのが怖いような……ま、まぁ、その辺は置いておいて、次はどこに行こうか?」
話を切り替えるように告げる香織さんの言葉を聞いて、俺の頭にはエリスさんの店が思い浮かんだ。丁度いまいる場所から少し歩くだけで着ける距離だし、立ち寄ってみるのもいいかもしれない。
「この近くに、友人がやってるチョコレート店があるんですが、そこに行ってみませんか?」
「あ、いいね。私、チョコレート大好きだよ」
「ミヤマカイト様の友人の店ですか……興味があります」
ふたりとも問題はなさそうなので、次の目的地はエリスさんのチョコレート店に決めて、改めて移動を開始した。
シリアス先輩「……昼食前に胃を殴りに行った」