デート計画実行㉝
帰宅が遅くなったので、今回はやや短めです
とりあえずというべきか、周囲を見てみて一番大きい雑貨屋に入ってみることにして、そのすぐ前までやってきた。
とはいえ、流石に両手を繋いだまま店の中で買い物は難しい。商品を手に取ったりもできないし、大きめとはいえ雑貨屋の中で三人並んで移動するのは、他の客にも迷惑だろう。
「じゃあ、店に入る前に手を離しますね」
「えっ……あっ……はい」
あ、あれ? いま一瞬オリビアさんが、捨てられた子犬のような寂しそうな顔をしたような……手を離すと言われて寂しかったのだろうか? いきなりそんな可愛い反応は反則だと思う。
「あ、いや、あくまで一時的にです! 買い物するのに手を繋いだままだと、他のお客さんとかにも迷惑ですしね。店を出て次の場所に向かう時はまた繋ぎましょう」
「は、はい! ……はっ!? あっ……あぁぁ……」
とりあえず慌てて告げると、オリビアさんはホッとしたような可愛らしい表情を浮かべたのだが、直後になにかに気付いた様子で青ざめて震えだした。
う~ん、俺も何度かオリビアさんと話してそれなりに親しくしている自覚もあるので……なぜこんな反応をしたのか、すぐに察することができた。
「も、申し訳ありません! ま、まるでミヤマイト様の慈悲を乞うかのような浅ましい反応をし、あまつさえミヤマカイト様に気を遣っていただくなど……」
「はい、ストップ。大罪とかじゃないですし、罪もありません。なんなら事前にちゃんとその辺りを話し合っておかなかった俺にも責任はありますし、オリビアさんの反応で意見を変えたとかじゃなくて元々そうするつもりでした。なので、オリビアさんが責任に感じるようなことは一切ないです……ね?」
「は、はい……な、なんという、慈悲深さ……この神々しさに温かさ、まさしくミヤマカイト様は慈愛の化身っ」
「……大げさです」
即座に土下座でもしそうな感じだったオリビアさんの言葉を遮り、オリビアさんには何の責任もないので気にしなくていいと伝えると……とりあえず当初の目的通り、大罪を犯した的な反応を止めることはできた。
だが代わりに、感極まった様な……信仰心MAXみたいな目で見られているし、自然な動作で祈り始めてる。いや、ここ店の前なのでとりあえず早く中に入ったほうが……。
祈り始めてしまったオリビアさんを再び説得して、手を離した後で雑貨屋の中に入った。ここは小物を中心に置いてある雑貨屋っぽく、卓上インテリアっぽいものなどがいくつもあって店内はかなりお洒落な雰囲気だった。
「おぉ、お洒落だね~。可愛いインテリアも多いね……私の店の雰囲気には合わないけど、自室とかで使う分にはよさそうだし、なんか卓上インテリアとか買ってもいいかもね」
「卓上インテリアですか……この品々には、いったいどのような効能があるのでしょうか?」
「効能というか、机の上とか棚の上に置くことで華やかだったりお洒落だったりで、視覚的に楽しんだりする感じですね。ひとつ置くだけでも、机の上の雰囲気とかが変わって結構いいですよ。それに中にはペン差しになってたり、メモを挟めたりって実用性のあるものもありますよ」
「なるほど、流石はミヤマカイト様! 叡智を感じるお言葉に、私の見識も広がる思いです」
基本的にオリビアさんって信仰心が飛び抜けてるせいか、基本的になにを言っても好感度が上がる気がする。いまも本当に尊敬してますって感じの目でこっちを見ている。
最初に会った時と比べて、表情がある程度豊かになったこともあって、ここまで好意全開の表情を向けられると嬉しくもくすぐったい気分だった。
……まぁ、それがオリビアさんらしいと言えば本当にその通りなのだが……。
シリアス先輩「こいつも犬属性持ちだと……いや、確かにアニマ辺りと滅茶苦茶気が合いそうではある」