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デート計画実行㉛



 オリビアさんの転移魔法によって目的のアルクレシア帝国の交易都市ルファンに到着した。前に一度来たとはいえ、その時は本当にエリスさんのチョコレート店に行っただけなので、あまり詳しくは見て回ってない。

 以前来た時も思ったが赤レンガの建物が多くお洒落な雰囲気の町並みで、観光スポットとしての人気が高いというのも頷ける。


「雑誌では見たけど、綺麗なところだね」

「ですね。俺も前に一度だけ来たことがあるんですが、その時はゆっくり見て回ったりもしなかったので楽しみですね……えっと、オリビアさん、大丈夫ですか?」

「は、はい! 問題ありません。お見苦しいところをお見せしてしまいましたが、もう大丈夫です。心に湧き上がる動揺はいまは見て見ぬふりをすることで解決しました」


 それは、果たして解決しているのだろうか? とりあえず思った以上にオリビアさんが緊張している感じがするので、やはりというかある程度は俺がリードする必要もあるかもしれない。

 だが、それはそれとしてあくまで今回のデートの計画者はオリビアさんなので、出来るだけオリビアさんのプランに沿うように動きたいものだ。


「……それで、オリビアさん。最初はどこに行くんでしょうか?」

「ミヤマカイト様のお心のままに」


 おかしいな? なんか思った以上に初手で全部こっちに丸投げされたんだけど……。俺が若干困惑していると、香織さんが苦笑を浮かべながら口を開く。


「あはは、オリビア様らしいというか……言葉が足りないというか……快人くん、お昼まではウィンドウショッピングを楽しもうってことになっててね。私やオリビアさんも雑誌とかで見たことはあっても来たことは無かったから、のんびり街を歩きながら気になった店とかに入れたらな~って感じだよ」

「ああ、なるほど……じゃあ、せっかく大きな通りですし道なりに行ってみましょうか」


 なるほど、目に付いた店で買い物をしたりしつつって感じだから、オリビアさん的には行く場所の決定権……店を選ぶ権利は俺にあるので、俺の自由に決めてほしいという感じで言ったのだろう。

 ともあれ疑問は解決したので、さっそく出発と行きたいところだったのだが……オリビアさんからなにかを躊躇するような感情が伝わってきた。


「オリビアさん?」

「あ、その、ミヤマカイト様! 未熟な身ながら、私もデートについて様々な参考文献を見て学んできました。デートにおいて、対象の相手と……手……手を……繋ぐのが作法と……なので、その……」


 言わんとすることはなんとなくわかった。手を繋ぐことが本当に作法かどうかという問題はさておいて、恋愛小説とかデート特集の雑誌とかで勉強したのであれば、デートでは手を繋ぐものという認識を持ったとしても不思議ではない。

 もちろんここで「明確なルールというわけではないので、気にせずこのまま行きましょう」といえば、オリビアさんは俺の言葉を了承してくれるだろうが……緊張と恥ずかしさが混ざったような表情で必死に要望を口にしようとしているオリビアさんを見ると、果たしてそれでいいのかという気持ちになる。


 まず根本的な部分……オリビアさんが俺を嫌っていたりで手を繋ぐのが嫌ということは、ありえないと断言できるレベルだ。普段の様子からも好意的に見てもらえていることは理解している。

 だからたぶん、オリビアさんのいまの心境としては「恥ずかしくはあるけど手を繋いでデートをしたい」という感じのものだとは思う。


「皆初めての場所ではぐれてもいけませんし、手を繋いでいきましょうか」

「あっ……は、はい!」


 微笑みながらそう提案すると、オリビアさんは表情の変化こそ大きくはないものの明るい表情に変わった。オリビアさんはあまり感情が顔に出にくいというか、頬を赤らめたりというのはあるのだが、表情自体の変化は少な目だったりする。

 もっとも、シロさんと比較すれば分かりやすすぎるぐらいなので、俺にはまったく問題ないレベルである。


 俺が手を差し出すと、オリビアさんはおずおずといった感じで俺の手を握る。小柄なオリビアさんの手は小さく、柔らかくすべすべしていて体温はやや低めな感じだった。

 というか、オリビアさんって肌滅茶苦茶綺麗な気がする。本人が大聖堂の外にほぼ出歩かないことも要因かもしれないが、雪のように白く、かといって不健康そうな感じではない。神聖さを感じるというか……まさに聖女という感じだ。


 そんなことを考えつつ、俺は香織さんの方に向かって開いたもう片方の手を差し出す。


「じゃあ、香織さんも手を繋いでいきましょうか?」

「そ、そうだよね。この流れだと、私もそういうことになるよね……あ、いや、緊張してないよ? わ、私大人だし、人生経験とか結構豊富だし、て、手を繋ぐぐらい余裕だよ」


 結構動揺している感じはするのだが、それを突っ込むのは野暮だろう。ともあれ、俺を真ん中にする形で手を繋いで、改めてデートに出発した。




シリアス先輩「ぐっ、こ、コイツ、やっぱり侮れない。恋愛クソ雑魚モードでも、なんだかんだで自分から動いてアプローチしてくるところが、アリスとは違って行動力があって、砂糖の危険が高い……」

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― 新着の感想 ―
 交易都市ルファンか。そういえば、エリスさんの店に行くかもしれないって話をしていたね。あの時は同郷の人と『もう1人』と来るかもってフラグのような感じだったし、何よりエリスさんの胃痛戦士っぷりは計り知れ…
両手に花とかいう次元じゃない…… やはりこの主人公、強くなりすぎでは……?恋愛強者すぎる
ここまで弱いのひっさびさに見たわ
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