デート計画実行㉘
いよいよオリビアさんと香織さんとのデートの日の前日になったのだが、その日の夕食の席でなんというかリリアさんが物凄く疲れた顔をしていた。
あれ? 朝に今日は仕事もあまりないから終わったらのんびり愛読の月刊誌でも読もうとか、そんな感じのことを言っていた気がするんだけど……。
「リリアさん、かなり疲れた顔してますけど……今日は仕事が忙しかったんですか?」
「……」
「え? あ、えっと、もしかしてまた俺がなにかしたパターンだったりします?」
リリアさんに問いかけてみると、リリアさんはなんとも言えない表情でこちらを見てきた。さすがに俺もリリアさんとの付き合いはそこそこ長くなってきたし、過去の経験からなんか俺が原因のような気がした。
しかし、俺の予想に反してリリアさんは特に文句を言ったり、怒ったりするわけではなく微妙そうな表情で俺の方を見ているだけだった。
「……えっと……」
「ああ、いえ、カイトさんがなにかをしたとかではないんですよ。ちょっといろいろ想定よりかなり時間がかかったというか……まぁ、予想外に疲れたのは事実ですが、ひと段落しましたので大丈夫ですよ」
そういって苦笑を浮かべるリリアさんを見て、俺は首を傾げた。なんとも奇妙な言い回しというか、感応魔法で伝わってくる感情も、別に俺に対して怒ってるわけではないが変に複雑な感じである。
例えるならそう、元を辿れば原因は俺なのだが、別に俺が悪いわけでもないので俺に対して怒ったり文句を言ったりする気は無いという感じだろうか?
う~ん、もしかしたら貴族関係でなにかがあったのかもしれない。ただ少し不思議なもので、ルナさんやジークさんも事情を知らないようで、リリアさんの様子に不思議そうな表情を浮かべていた。
ルナさんやジークさんの問いかけに対してもリリアさんはあいまいな感じで返答していたので、結構個人的な話なのかもしれない。
だとすれば突っ込んで聞くのも失礼だしこれ以上聞かないことにしよう。明日エリスさんのチョコレート店にも寄る予定なので、お土産にチョコレートとか買ってこよう。
一夜明けてデートの当日。予定としてはまず最初に香織さんの店に行って香織さんと合流し、それから一緒に大聖堂に移動。オリビアさんと合流した後で、オリビアさんの転移魔法で目的の都市に向かう感じだ。
ちなみになぜ先に香織さんと合流するのかというと、香織さんは基本的にオリビアさんと話をする際にはオリビアさんが香織さんの店に来る形式だったようで、中央大聖堂にあまり足を運んだことが無いらしい。
友好都市の中心にして人界の宗教の総本山みたいな場所であり、ひとりで向かうのは不安ということで俺と一緒に向かうことになった。
転移魔法で香織さんの店の前に移動して、店の裏手に回る。裏口の方を訪ねてきて、そこにある呼び出し用の魔法具に触れてほしいという話だったので言われた通りに裏口に回り、インターホンっぽい魔法具に触れる。
すると少しして足音が聞こえて、ドアが開き香織さんが姿を現した。
「おはよう、快人くん。待たせちゃってごめんね」
「おはようございます。いえ、すぐだったので全然待ってないですよ」
香織さんは以前一緒に買いに行ってプレゼントした服を着てくれており、あの時も思ったが普段とは違う雰囲気が素敵だった。
ただそれ以外にも変化があったので、そこに触れておくことにした。
「あっ、香織さん髪の毛を少しだけ短くしたんですね。服も相まって今日は全体的にカッコいい大人の女性って雰囲気で、とても素敵ですね」
「ふぐっ……こ、このモテ男めぇ……息を吐くように100点の反応を……そういう女の子の変化にすぐ気付けるのはポイント高いよ。モテオーラをヒシヒシと感じるね。でも褒めてくれて嬉しい、ありがとう!」
俺の言葉に香織さんは少し照れた様子で苦笑しつつ、それでも嬉しそうにお礼を返してくれた。そのまま少しだけ雑談をした後で、香織さんと一緒にオリビアさんの待つ大聖堂へと向かった。
シリアス先輩「ここで気になってくるのは、オリビアの状況……果たして雑念を振り払って、透き通る精神を復活させられたのか……まぁ、復活してても即座に乱されそうだけど……」