閑話・神々の集い⑤
アリスに連れられて特殊な空間にやってきたリリアは、即座に意識を飛ばしそうになった。シャローヴァナル、マキナ、カナーリスという世界創造の神に、クロムエイナ、アリス、フェイトとトリニィアでトップクラスの存在達……その中に自分が混ざるかと思うと、拒否反応が猛烈な胃の痛みとなって襲い掛かってくるようだった。
もっとも、そんな心境なのはリリアだけではなく、同様に連れてこられたライズ、クリス、ラグナの三人もであり、表情には「どうしてこうなった?」という感情がありありと現れていた。
「揃いましたね。それでは再開しましょう」
「いや、待ってよシロ。いきなり再開じゃリリアちゃんたちがついてこれないでしょ? まぁ、カイトくんの誕生日の話し合いだっていうのは聞いてると思うけど、リリアちゃんたちを呼んだのは、もちろん人族の関係者への伝達関係もあるけど、なにより誕生日を祝うパーティに関しては人族の文化って感じだから、その辺の知識を期待してる部分もあるね」
「……そういえば、魔族の方々はそういったことをしませんね」
さっそく話し合いを再開しようとしたシャローヴァナルを止めつつ、クロムエイナが簡単に四人を呼んだ理由について説明する。
「うん。魔族は長命な種族が多いからね。記念日にお祝いしたりってこと自体あんまりないんだよね。自分の誕生日とか年齢をよく覚えてない子も多いしね。でも人族は王族の誕生日にパーティしたり、そういうことをよくやってるからね」
「な、なるほど、分かりました。どこまでお力に成れるか分かりませんが、全力を尽くします」
「ありがとう。ああ、それでこの会議中は参加してる人は全員対等に意見を言えるって契約を結んでるから、普段はシロに対して迂闊に話しかけたりもできないだろうけど、今回はシロの意見に文句を言ったりしても大丈夫だし、それが後々影響することとかはないから安心してね」
「「「「……」」」」
クロムエイナの言葉にリリアを含めた四人はなんとも言えない表情を浮かべた。もちろん理屈としては理解できる。理解できるのだが……では実際にシャローヴァナルに対して意見を言う勇気があるかと言われれば、首を縦に振るのは難しかった。
かといって最大級の配慮をしてくれているといっていい神々に対し、そんなことを言えるわけもなく、どうすればいいんだというのが心境ではあった。
するとそのタイミングで、カナーリスがリリアたちの方をチラッと見ながら告げる。
「クロムエイナさん、理屈は分かりますが実際にそれをするのは難しくないですか? 自分とかであれば、別に平然とシャローヴァナルとかにも意見が言えますけど、リリアさんたちにとってはかなりのプレッシャーでしょう。なので、提案なんですか……チーム分けしませんか?」
「チーム分け?」
「ええ、もちろん人族の方々はパーティ慣れしてますし、きっといい感じのプランを考えてくれるとは思いますよ。でもそれはそれとして、安定感はあっても斬新さは無くなるかもしれません。たはぁ~高度に多角的な意見がうんぬんかんぬん的な、つまりはよく知らないからこその斬新な意見も時にはいいと思うわけですよ」
注目を集めつつ、カナーリスは相変わらずの無表情ながら明るい声で告げる。カナーリスはネピュラの指導もあってリリアたちの精神的なプレッシャーも察しており、それを軽減できる方法を考えていた。
「なので、2チームに分けて計画の案を作ってみませんか? 片方はパーティに慣れている人界の四人と知識豊富で意見を上手く纏めてくれそうなアリスさん。そしてもう片方は、自分、シャローヴァナル、マキナさん、クロムエイナさん、フェイトさんという形で分けて、それぞれで大まかな計画の案を作ってみて、それを照らし合わせながら調整しませんか?」
「あ~なるほど、ディスカッション形式ってことですね。こっちのチームは私が代表して意見を言えばいいわけですから、シャローヴァナル様とかに直接意見を言うのは私になるわけで、リリアさんたちも気楽に意見を出しやすくなるってことですね」
「そんな感じです。たはぁ~新参者がいきなり仕切り始めて、申し訳ない!」
カナーリスのその提案はリリアたちにとってはまさに救いと言えるものだった。確かにそれであれば、最終的に意見を纏めて発表するのはアリスが行うので、リリアたちとしては非常に気が楽だ。
二つの案を照らし合わせながら相談するというのも話し合いやすい形であり、人界の四人以外の面々にも文句はないようだった。
「じゃあ、異論はなさそうな感じなのでカナーリスさんの案でやってみますかね。じゃ、リリアさんたちはこっちに集まって、他の面々はシャローヴァナル様のところに集まる感じで……とりあえず、大まかな流れだけなので時間は30分程度にしましょうか。全部できなくても、30分経過した時点で出来ているところまで発表して、話し合う感じで……」
話し合いの方針は決まったため、カナーリスが提案した通りのチームに分かれて快人の誕生日の計画の相談が始まった。
シリアス先輩「さすが、絶対者の指導を受けたまともな神……」
???「まぁ、とりあえずの話し合いはここまで、どんな計画になったのかは実際にカイトさんの誕生日になってのお楽しみですね。とりあえず次回からは、オリビアさんと香織さんのデートに移行です」