閑話・神々の集い③
当然と言えば当然ではあるが、快人本人が預かり知らぬところで、誕生日に向けてのサプライズパーティの話し合いは進んでいく。
会場の問題を神特有の常識外れの能力により、新しい世界を作り出すという力技で解決し、話し合いは次の段階へ進む。
「会場に関してはこれでいいでしょう。誰が創造するかでもめる可能性はありますが、まぁ、その辺は世界創造できる方々で話し合うなり殴り合うなりしてください。それで、ここから先は具体的な内容を詰めていくわけですが……さすがに、私たちだけで全部決めるわけにも行かないでしょう」
アリスが告げた言葉に何人かが同意するように頷く。ここに集まっているものは快人の知り合いの中では一部であり、快人の誕生日パーティの内容をここにいる者だけで決めてしまうというのも問題があった。
もちろん集まっているのは世界の上位者ばかりなので、ここにいるメンバーで全て決めてしまったとしても文句を言える者はいないだろうが……。
「でもさ、シャルたん。カイちゃんの知り合いを全員呼ぶわけにはいかないよね? 前の船上パーティの時を参考にするにしても、流石に話し合うには数が多すぎるよ」
「そうですね。その辺りはやはりある程度代表者的な人に絞って呼ぶべきですね。魔界に関しては私とクロさんが居るので、六王回りへの伝達とかは私たちで大丈夫でしょう。神界もシャローヴァナル様とフェイトさんが居れば十分……となるとやはり人界関係ですね」
パーティの詳細を話し合うためにこの場にさらに何人かを追加して話し合いを行う形となり、集まっていた者たちは少し考えるような表情を浮かべた。
そして少しの沈黙ののち、シャローヴァナルが淡々と告げる。
「……リリアですね」
「リリアちゃん……になるよね、やっぱり。カイトくんの恋人だし、人族だから誕生日パーティとかの知識もあるし、ここにいる全員と顔見知りだし……」
「というか、リリアに関しては最初から呼んでおけばよかったんじゃない? 私もリリアのことはちゃんと評価してるから、同席することに文句とかないし」
「……いやぁ、それは流石にリリアさんが恐縮してしまうのでは? 自分、まだイマイチ世界情勢に疎いのですが、人界の三国王とかでは駄目なんですか?」
そう、現状集まっているメンバーに人界関係者を加えるとなると、条件に最も合致するのはリリアであり、本人にとっては災難でしかないが快人の影響でここにいる上位者全員と知り合いでもある。
例によってこの手の胃に厳しい事態となると、真っ先に被害を受けることになるリリアに何人かが同情したような表情を浮かべるが……他に適任も居ない。
「カナーリスさんの意見は分かりますが、カイトさんの家周りはどの国にも属さない特殊な場所なので、伝達とかを考えるとやっぱリリアさんが適任なんですよね。まぁ、本人の胃痛が心配なので軽減するために……人界の三国王も呼びますかね? それで、四人加えて話し合う感じでいいでしょ」
「……えっと、人界の三国王は……どの肉塊だったっけ?」
「ライズ・リア・シンフォニア、クリス・ディア・アルクレシア、ラグナ・ディア・ハイドラの三人ですよ」
「あ~そうそう! そんな名前だったね!!」
相変わらず我が子以外にはほぼ興味のないマキナは、快人の恋人辺りは名前も覚えているのだが、それ以外はほぼ忘れており、新参のカナーリスの方が詳しい始末だった。
その様子を見てアリスが呆れたように溜息を吐いた後、軽く集まっている面々を見渡して口を開く。
「えっと、じゃあ私が分体使って呼びに行ってきますよ。この空間って時間の流れは大丈夫でしたっけ?」
「ええ、ここは時間的にも他と隔離されているので、いくら過ごしても外の時間は経過しません」
「了解です。じゃ、ちゃっちゃと呼んできますね」
こうして、誕生日パーティの話し合いに人界の三国王とリリアが加わることとなり、計四人の人族が胃に凄まじいダメージを負ったのは言うまでもないことである。
シリアス先輩「たぶん、人を追加するって話が出た時点で読者のすべてが思ったであろう『リリアだろうなぁ……』という予想に違わず、しっかりと胃痛をブラックホールするリリア……」