閑話・神々の集い①
快人とオリビア、香織のデートが近付く中……快人の預かり知らぬ場所に置いて、別の計画が動こうとしていた。
そこは異様な光景だった。真っ白な空間がどこまでも広がり、巨大な円卓がひとつだけ置かれている空間。特別に作られたその空間の円卓には、人知を遥かに超越した者たちが座っていた。
「……全員集まったようですね」
静かに呟くのは、この空間を用意した主催者。トリニィアの創造主にして、世界の頂点……創造神シャローヴァナル。
「まぁ、後々もっといろんな子たちにも話をする必要はあるとは思うけど、とりあえずシロが呼んだ相手はほぼ集まってるんじゃないかな?」
シャローヴァナルの言葉に答えたのは、かつてシャローヴァナルから分かたれた力を元に生まれた存在にして、魔界の実質的なトップ……冥王クロムエイナ。
「私としては、癖のあるメンバーが多いし、愛しい我が子に迷惑をかけちゃうような問題児がいないかどうかが心配だね……え? アリス、なんでいきなり私の前に鏡を置いたの?」
端末である楽園を後方に控えさせて席に座り、どこか緩い口調で告げるのは虹色の目と機械の片翼が特徴的な異世界の神……機神マキナ。
「よく見ておいてください。いまその鏡に映ってるやつが一番の問題児なので、しっかり覚えておいてくれぐれも暴走しないようにしてください。いい加減私にマキナ係が定着しつつあって面倒なんですよ……」
呆れたような表情でツッコミを入れるのは、トリニィアの裏の支配者とも呼べる存在……幻王ノーフェイスことアリス。
「と、というか、こ、ここ、これ、私場違いでは? あまりにも恐れ多すぎる感じが……」
円卓に集まった者たちを見て青ざめた表情でガタガタと震えているのは、神界の最高神の一角……運命神フェイト。
「いや~大丈夫じゃないですか? 今回の招集は準全能級以上なわけですし、自分の見たところ貴女は十分に基準を満たしているかと思いますよ。というか、自分もこの世界では新参者ですし、場違い度で言えば中々な気もしますね。あっ、そうそう、ネピュラさんは個人的にささやかな祝いだけするってことで、不参加だそうです」
フェイトを軽くフォローしつつ、ピクリとも動かない表情で明るい声を出すのは、数多の世界を渡り歩いて最終的に快人の世界に住み着いた神……流転神カナーリス。
いずれも準全能級以上の……文字通り神の力を持つ実力者たちばかりであり、言ってみればいまこの空間内にトリニィアに存在する上位者たちが一堂に会していた。
「というか、機神さんはお久しぶりですね」
「あ~えっと、確か18億年ぶりぐらいだったっけ? しかし、流転神だとか放浪神だとか呼ばれてた貴女が、愛しい我が子のところに住むようになるとは、ビックリだったよ」
「たはぁ~ひとえに快人様の魅力によるものかもしれませんね」
「わかる。愛しい我が子の可愛さは留まるところを知らないからね。そりゃ神だって魅了されるよね」
「……自分的には、快人様はカッコいい枠なんですが、まぁその辺の感じ方はそれぞれですね」
長年あちこちの世界を放浪していたカナーリスは、以前にマキナの世界を訪れたこともあり顔見知りだった。快人のことを称賛するカナーリスの言葉に、マキナはどこか誇らしげな表情で頷いていた。どうやら機嫌はいいようである。
「雑談も結構ですが、その前に必要なことを終わらせましょう。今回の集まりで何を話し合うかは全員理解しているでしょうし、わざわざそのことを語る必要はありません。ですが、その前に重要なことを……ここにいる全員で契約を結びます」
静かに告げたシャローヴァナルの言葉に、集まった者たちの表情が引き締まる。シャローヴァナルとマキナがそうであるように、世界創造クラスの神々は契約を非常に重要視する。
なにせ、全能級レベルが喧嘩になってぶつかり合えばそれこそ数千億年戦い続けても決着が付かないような事態にもなりかねないので、揉め事を避けるために世界創造の神同士で契約を結ぶのはよくある。
もちろんその契約に全知全能の神の行動を縛れるような拘束力はないのだが、世界創造の神同士の契約を破る者は他の神からも信用をされなくなり孤立、場合によっては敵視されるため基本的に世界創造の神同士で交わした契約を破る者はいない。
その契約をこの場で結ぶということは、それはこれから先に話し合うことに関係しているという意味である。
「まず、第一にこの場にいる者たちの独断行動……抜け駆けを禁じます。独自判断でなにかを実行する際は、最低限他の者ふたり以上に承認を得てから行うこととします。次に、これから行う話し合いの場においては我々は立場、能力に関わらず対等に発言できるものとします。例えば、この話し合いの場においてフェイトが私の意見を否定ないし非難したとしても、それを不敬とはみなしませんし、話し合いの後の私とフェイトの関係に影響を及ぼすこともありません。思うがままの発言を行わないことこそ、他の者への侮辱であると考えてください」
「畏まりました」
「以上が契約の内容となります。異論がなければ円卓に触れてください」
シャローヴァナルの語った契約の内容に、終結した全員が同意し円卓に触れたことで、円卓の中央に全員の魔力によって作られた複雑な模様……契約の証が浮かび上がった。
これにより準備は整い、いよいよシャローヴァナルは本題を口にする。
「……それでは、これより二か月後に迫った……『快人さんの誕生日に関する話し合い』を始めます」
~会議メンバー~
シャローヴァナル(全能級かつ論外)
クロムエイナ(最近全能級に到達した)
アリス(マキナとの特訓で全能級に片足突っ込んでる準全能級)
フェイト(準全能級)
マキナ(全知全能級の中でも上位)
カナーリス(全知全能級ではあるが、マキナよりは少し劣る)
ネピュラ(不参加)
準全能級<全能級<全知全能級<<<<絶対者
物語の終わり:比較できない論外
シリアス先輩「快人への特大の胃痛が用意されてた!?」