デート計画実行⑭
オリビアさんと香織さんとのデートの予定まであと8日ほどとなり、だからと言って特にこれ以上俺がすることは無い。
目的地は決まっているし、大まかなスケジュールもあちらが用意してくれている状態なので、俺はのんびりと当日を待てば大丈夫である。念のために行く予定の場所付近の飲食店や、人気のお店などは雑誌で調べておいたが、他にすることと言えば……う~ん、服でも買いに行こうか?
絶対に必要というわけではないが、新しい服で出かけるというのはいいものだと思う。
「おう、邪魔するぞカイト、暇か?」
「……メギドさん……そういうのって普通、訪ねてくる前に聞きません?」
「うん? いや、どっちにせよ顔は見ようと思ってたから、会った時に聞くのが手っ取り早いだろ。ああ、ちゃんと玄関から入ってきたぞ。お前の家の転移阻害は、強力すぎて俺じゃ無視はできねぇからな」
「え? そうなんですか?」
「ああ、お前のとこの神辺りがなんかしてんじゃねぇか? 神域と同じぐらいに強固だな」
ノック無しで部屋のドアを開けて現れたメギドさんに、若干呆れつつも言葉を返す。まぁ、仮に俺に都合の悪い時に尋ねてきたりした場合は、アリスとかが止めてくれると思うので問題は無い。というか実際に特に予定はなかったし……。
「なるほど……ところで、今日はなんでその格好なんですか?」
「ああ、船上パーティの時の感じだと、カイトはこの姿が好みなんだろ? 体格的にクロムエイナやシャルティアに近いしな、だからこの姿で来てやった」
現在のメギドさんは、パーティで見た少女の姿である。いや、あの時の感想としては「その姿なら芸術語るのも様になるのに……」って感じだったのだが……高評価と言えば高評価かもしれない。
「まぁ、突っ込みたいところが無いわけじゃないですけど……とりあえず、俺になにか用ですか?」
「おう! 暇なら俺と出かけようぜ……なんだ? あれだ、えっと……ああ、そうだ、デートってやつだな! いや、シャルティアとかクロムエイナが、カイトに抱かれる前にはそういうことを繰り返してちゃんと段階を踏めとかそう言ってきてな。まぁ、そんな感じだ。カイトと出かけるのは面白そうだしな……」
「なるほど? でも、まぁ、丁度良かったです。俺もいま服でも買いに行こうかなぁ~って思ってたところだったんですよ」
「お、服か! いいな、それならやっぱハイドラ王国がいいぞ。衣服に関しちゃあの国が人界では一番だ。俺は結構ハイドラには詳しいからな、案内してやるよ」
「それは助かりますね。じゃあ、よろしくお願いします」
「おぅ! 任せとけ!」
相変わらずのストロングスタイルというか、恋愛云々に関してもメギドさんは真正面から来るので驚く半面、変な駆け引きとか無いので気楽ではある。
実際メギドさんは人界の中でもハイドラ王国がお気に入りで、毎年建国記念祭にも顔を出しているという話なので、案内してもらうには適任だろう。
「んで? なんの服を買うんだ? 一口に服って言っても、用途に合わせて様々だからな」
「あ~カジュアルな感じの、普段使いできるタイプの服がいいですね」
「なるほどな……じゃあ、変に高価なものよりは安くて質のいいものがよさそうだな。いくつかいい店を知ってるから、そこに行ってみるとするか」
見た目に反して意外とインテリなところもあるメギドさんは、思いのほか的確に目的地を決めてくれた……いや、いまは少女の姿なのでインテリ風なのも結構雰囲気としては合う。
見た目ってやっぱ重要というか、普段はあんなに脳筋MAXな見た目で芸術とか語ってると違和感が凄いのに、少女の姿になると今度はミステリアス感が強くなるのは不思議なものだ。
まぁ、とりあえずメギドさんは服にも詳しそうだし、これならいい買い物が出来そうだ。
~分かりやすいあらすじ~
胃痛戦士「よ~し、デートに備えて服を新調したりしちゃおう! 同郷と一緒にほのぼの買い物しちゃおっかなぁ~」
主人公「よし、じゃあ胃を殴りに行くか……」
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シリアス先輩「ひ、ひどすぎる……慈悲は、無いんですか……」