デート計画実行⑬
友好都市にある異世界料理店水蓮。開店前の店内には、頼まれていた商品の納品に来た茜とフラウの姿があり、香織が作った軽食を食べながら話を聞いてた。
「ほ~ん。私服を買うのにオススメの場所なぁ……やっぱ、衣装関連やとハイドラやな。店舗の数が全然ちゃうし、前衛的なデザインがよう取り沙汰されてるけど、定番のデザインとかも多いからな。けど、なんや? わざわざ友好都市以外で買おうて思うほど、大事なようでもあるんか?」
「あ~うん。まぁ、その……なんて言えばいいのかな……流れというか、偶然というか、快人くんとデートすることになってね」
「え? そうなん? おぉ、ええやん! ウチそういう話は結構好きやで……」
「あと教主様と」
「なんでや!? なんで、いまの流れで唐突に教主様出てくるねん!?」
「いや、唐突に出てきたというかそもそもの発端というか……えっと、最初っから説明すると……」
香織が快人とデートするということを口に知っときは、ニヤニヤとどこか楽し気な表情を浮かべていた茜だったが、その後にオリビアも一緒という言葉を聞いて即座にツッコミを入れる。
茜もこの世界で暮らしていて長いので、男性ひとりに女性ふたりというデート形式が一般的であるというのは知っているし、そこに対しては特に突っ込む気は無かった。だが、もうひとりが教主ともなれば話は別である。
そんな茜に対して、香織は苦笑しつつ事情を説明していった。
「……なるほど、それはまた……なんちゅうか、相変わらず大変やな。いやでも、裏を返せば教主様に気遣ってもらえるぐらい親しくできてるってことでもあるよな? そう考えると得なんか? う~ん、悩ましいとこやな」
「あはは、本当にね。まぁ、決まったものはしょうがないしせっかくだから楽しむつもりだよ。友好都市に店を構える前はあちこち旅していたとはいえ、最近は友好都市以外の街で遊ぶ機会ってあんまりなかったし、そういう意味では楽しみだね。まぁ、そんなわけで、せっかくデートするなら服も思い切って慎重しようかってね。最近は売り上げも多くて結構余裕あるしね」
オリビアと快人と三人でデートすることに関しては、もう諦めて割り切っており、香織としてはせっかくの機会を楽しもうという考えだった。
「そんなわけで、茜さんにアドバイスがもらえたら嬉しいなぁって感じで相談したんだよ」
「……お話は分かりましたがカオリ様、再考したほうがよろしいのでは? 会長の格好を見てください、こんな前衛的すぎ……いえ、馬鹿みたいな恰好をした方にファッションに関して尋ねるのは無謀では?」
「きいつこうて前衛的って表現したなら、そのままいけや! なんでわざわざより貶すような表現に変えてんねん! そして、香織、お前はお前でなに『一理あるかも?』みたいな顔してんねん!」
「あ、いや、あはは……」
フラウの言葉を聞いて、茜がいま着ているのがヒョウ柄の服……茜曰く古き良き大阪のおばちゃんスタイルという格好だったので、確かにファッション関係で頼るのは間違いかもしれないと一瞬考えた。
そして鋭い茜はそんな感情の変化も素早く察して、香織に対しても鋭いツッコミを入れていた。
「はぁ、まぁ、ええやろ。それやったら浪速のファッションリーダーを自称したこともあるウチが、しっかりコーディネートしたるわ」
「会長、ご存じですか? 自称って、誰にでもできるのですよ」
「やかましい! ともかく、そんなわけで移動の料金はきにせんでええから、その分は服代に回しや」
「え? 茜さん、一緒に来てくれるの? 私としては嬉しいし、安心できるけど……大丈夫なの?」
「最近大口の取引終わらせたばっかで暇やし、気にせんでええよ」
「会長、衣服代は経費には?」
「含まれるわけないやろが!? 自分で買え!」
香織の買い物に茜も付き合うことを提案する。転移魔法が得意な茜が一緒であれば、距離的な問題はほぼなくなるので、香織としては非常に助かる。
そのまま三人でハイドラ王国のどの都市に買いに行くかを話し合った後で、転移魔法にて買い物に出かけた。
シリアス先輩「こっちは、打って変わって平和な感じだな……」
???「でもまぁ、カオリさんは胃痛属性持ちなので、デート中はなんかあるのでは?」
シリアス先輩「胃痛属性って……」