デート計画実行⑨
今日は帰宅が遅くなったので、少々短めです。
アイスティーを飲みながら、のんびりジュティアさんと雑談をしていたのだが、なにやら途中からジュティアさんが考えるような表情を浮かべ始めた。
特に会話の流れでおかしな部分は無かったのだが、なにかあったのだろうかと気になって問いかける。
「ジュティアさん、どうかしましたか?」
「ああ、いやね、いやね……なんていえばいいのか……カイト、ボクになにかしてほしいこととかない?」
「う、ううん?」
なんでそんな話の流れになったのか分からず首をかしげるが、ジュティアさんの表情は真剣そのものである。
「いやさ、カイトの助けになれたらいいなぁって思って紹介するつもりが、結局カイトひとりでも問題なかったわけだし、いまもこうして新作の美味しい紅茶をご馳走してもらってて、なんだかね、なんだかね、ボクの方が貰いすぎって感覚が強くてさ……いや、カイトがそういうのを気にしないってのは分かってるんだぜぃ。でもさ、でもさ、ボクの心境としては、ボクの方もカイトになにかしてあげたいって気持ちが強くてさ……なんかないかなぁって……」
「なるほど、ジュティアさんの気持ちはなんとなく分かりますが、すぐには思い浮かないですね」
ジュティアさんの心境は分かる。例えば俺が逆の立場で、ジュティアさんに紹介を頼まれて力になるつもりで出かけたはいいが、ジュティアさんひとりでも問題なかった感じになり、その上でジュティアさんにお礼としてお茶なんかをご馳走になったとしたら……なにかしてあげたい、なにか力になりたいって心境になるとは思う。
なので、出来ればなにか要望を出したいところなのだが……急になにかしてほしいことはあるかと言われて、これをしてほしいとすぐには思いつかない。
なにか、無いだろうか……あんまりジュティアさんの負担にはならず、こういう機会でもないとなかなか頼めないような……あっ、そうだ。
「……ジュティアさんって歌が得意なんですよね? ハーモニックシンフォニーでも大合唱の時に聞きましたが、凄く綺麗な歌声でしたし……」
「え? うん。まぁ、精霊族は大体皆歌は得意だけど、ボクも歌に関してはそれなりに自信があるぜぃ。精霊族にとっては、歌は自然との対話のひとつとして凄く重要なものだからね。みんな、みんな、歌や音楽に関しては結構力を入れて練習するんだぜぃ」
「なるほど……じゃあ、せっかくなんで、ジュティアさんの歌を聞かせてほしいって言ったら、大丈夫ですかね? ハーモニックシンフォニーの時は、合唱だったので……ジュティアさんのソロの歌も聞いてみたいなぁと、いまふと思ったんですが……」
我ながら、中々いい提案なんじゃないかとは思った。ジュティアさん自身も言っていた通り、精霊族にとって歌は得意分野であり、ジュティアさんも例に漏れず歌には自信がある様子。
俺としてもジュティアさんの綺麗な歌声を聞ければ嬉しいし、ジュティアさん側としても得意分野だから披露しやすいのではないだろうか?
そう思っていると、ジュティアさんは明るい笑顔を浮かべて頷いた。
「いいよ、いいよ、そういうことなら任せてよ! カイトの期待に応えられるように、しっかり歌うぜぃ」
「ありがとうございます、楽しみです」
ジュティアさんは俺の要望を快く了承してくれて、いくつかの魔法具を取り出して手早く準備を始めた。シンフォニア王国の建国記念祭で出店をやったときに買った周囲に音が漏れないようにする魔法具っぽいのもあるので、どうやらこのままここで歌ってくれるみたいだ。
急な提案ではあったが、なかなかどうして楽しみである。
シリアス先輩「デート計画実行というサブタイトルで、てっきりオリビアとデートするんだと思ってたら……なんかジュティアとデートしてる……これはタイトル詐欺では?」
???「いつも通りでは?」
シリアス先輩「……まぁ、確かに」