デート計画実行⑦
家に戻ってきてジュティアさんを俺の部屋に案内した後で、カナーリスさんに新商品に関しての確認を取る。ちなみにカナーリスさん曰く、トリニィア内ならば神域以外どこでもカナーリスさんの名前を呼べば聞こえるとのことらしい。
シロさんの領域である神域を除外しているあたり冗談とかではなくマジっぽいし、ついでに言うとあくまでカナーリスさんの名前を呼んだ時にだけ聞こえるようで「普段の会話を盗み聞いたりしないので安心してください」と言っていた。
……考えてみれば当然のプライバシー尊重ではあるのだが、シロさんとかマキナさんとかアリスとかクロとか、普段から俺の会話を聞いてるであろう相手がそこそこいるので、あまりにもマトモすぎて一瞬ビックリしてしまった。
「カナーリスさん、ちょっといいですか?」
「はいはい、なにか御用ですか?」
部屋を出て虚空に向かって呼びかけると、次の瞬間にカナーリスさんが目の前に現れた。
「いまジュティアさんが来てるんですけど、前にカナーリスさんが言っていたあとで発売予定の新作を出せたらなぁと思いまして、カナーリスさんに確認を……」
「ああ、なるほど、大丈夫ですよ。では、快人様の部屋にお持ちする感じで大丈夫ですかね?」
「はい。よろしくお願いします」
「何分後をご希望ですか? 自分、時間に正確な女を自称しているので、ご指定の時間にピッタリお届けできますよ」
「えっと、じゃあ、3分後とかで……」
「了解です」
そんなやり取りをした後で、部屋に戻りジュティアさんの座っている席の向かいに座る。そういえば、自分の部屋が広すぎるので、普段から来客があった際は俺の部屋に案内していたけど……応接室とかあまり使う機会ないなぁ。
いや、仕事とかそんな関連の客ではなく友人を招くなら、普通に自分の部屋で問題ないのか?
「ジュティアさん、実はもう少し先に発売予定のニフティの新作の紅茶があるんですが、それを用意する形で大丈夫でしたか?」
「え? し、新作!? もちろん、もちろん、とっても嬉しいけど……いいのかな?」
「はい。ニフティの責任者の方にも確認を取って許可を貰いましたので大丈夫ですよ」
「それなら、それなら、ありがたく。ボクってば、ニフティの大ファンだから……凄く、凄く、楽しみだぜぃ」
目を輝かせて喜んでくれるジュティアさんの姿は、小柄な外見にマッチしていてなんとも可愛らしかった。
そのまま少し他愛のない雑談をしていると、先程お願いしてから3分ピッタリの時間に部屋がノックされてカートを押してカナーリスさんが入ってきた。
「カナーリスさんありがとうございます……あれ? その服装は?」
「給仕をするので執事っぽい服にしてみました。最初メイド服着てみたんですけど、たはぁ~自分やっぱクール系だからですかね? 思ったより似合わなかったので、急遽執事服に変更しました」
「なるほど……カナーリスさんはスラっとしてるので、確かにそういう感じの服の方が似合うかもしれませんね。バッチリ着こなせててカッコいいですよ」
「ありがとうございます。素敵な誉め言葉に、自分の胸がトゥンクって高鳴ってしまいますね! おっとお客様んもご挨拶しなければいけませんね。自分、快人様よりニフティを任されております、カナーリスと申します」
いつも通り無表情のままで軽快な口調で話した後で、カナーリスさんはジュティアさんの方を向いて自己紹介をする。
するとジュティアさんも背筋を伸ばして、綺麗な姿勢で礼をした。
「初めまして、界王リリウッド様の眷属のひとりでジュティアと申します。噂程度ではありますが、カナーリス様のお話はお伺いしています。今後ニフティを利用させていただく機会も多いかと思いますので、どうかよろしくお願いします」
「あ~お気持ちはなんとなく理解できますが、話しやすい砕けた口調でOKですよ。自分、よくその辺にいる野良ゴット的なやつなので、別に敬ったりする必要とかはナッシングです。特にいまは、快人様の部下的ポジションなわけですし、快人様より下の感じで……たはぁ~野良ゴット改め部下ゴットですね!」
「……い、いや、その辺によくいたりはしないような……ま、まぁ、でもでも、そう言ってもらえるならお言葉に甘えて、普段通りに話すことにするぜぃ」
ジュティアさんはカナーリスさんが全能の神であると聞いていたみたいで、かなり畏まった感じだったが、例によってカナーリスさんは特に畏まった態度をとる必要は無いと答えていた。
というか、自分のことを俺の部下って言ってる時がめちゃくちゃ嬉しそうな声色で、なんというか相変わらず表情はまったく変わらないのに感情の機微が物凄く分かりやすい方である。
シリアス先輩「よくその辺にいる野良ゴット……いてたまるか!?」




