デート計画実行①
オリビアさんと日程の相談をした結果、香織さんとオリビアさんと三人で遊びに行くのは来月の香織さんの店の定休日に決まった。
場所はてっきり友好都市だと思っていたのだが、アルクレシア帝国にある交易都市に行くらしい。まぁ、考えてみればオリビアさんは友好都市内では有名人だし、私服を着たとしても気付かれて騒ぎになる可能性もあるので他の町に行くというのは納得できる。
だが、もちろん不安もある。オリビアさんは友好都市以外だと身体能力などが人並み以下……いや、いちおう本人はそれでも常人ぐらいの体力があるつもりではいるみたいなのだが、前に一緒に出掛けた時のことを考えると……ある程度意識してフォローする必要はある気がした。
「……不思議だよね。なんでこんなことになったんだろうね? 快人くんもそう思ってるだろけど、それ以上に私がそう思ってるから……はい、卵とじカツ定食」
「ありがとうございます……うん? というか、香織さんはもしかして知らなかったんですか?」
「いや、デートプランとかの相談は受けてたんだよ。でもまさか、そこに自分が加わることになるとは思ってなかった」
「う~ん……というか、俺はオリビアさんが真面目過ぎてデートって言ってるだけで、実質三人で遊びに行く感じかと思ってたんですが、しっかり計画を立ててるならそういうわけでもないんですね」
香織さんが出してくれた定食を食べつつ、俺は少し考えを改めていた。俺はてっきり名目上だけデートで、実質的に三人で遊ぶような感じかと思っていたのだが、オリビアさんがデートのつもりでしっかり計画を考えているのであれば、そういう気持ちで臨むのは失礼だろう。
「うん。オリビア様も、かなり熱心にいろいろ調べて考えてたからね。だからこそ、なんで私もって感じなんだけど……いや、分かるんだよ。オリビア様的には、いろいろ協力した私へのお礼のつもりなんだって……分かるんだけど……突然すぎて胃は痛いよ。ああ、いや、快人くんと出かけるのは楽しみなんだけどね」
「香織さんが嫌がったりしてないのはよかったです。まぁ、でも、香織さんの方は本当に気軽に遊びに行くような感覚でも大丈夫だと思いますよ」
「う~ん、でもほら女性ふたりに男性ひとりって形でのデートは、この世界では一般的かもしれないけど、私たちにしてみれば違和感も覚えるだろうし、そのせいで変にギクシャクしたりしないかは心配だね」
「……そ、そうですね」
「……君、さては複数人の女性と同時にデートした経験あるね? ……やはり、モテ男か……」
過去で言えば、リリアさんとジークさんとの同時デートやベビーカステラ関連ではあったがクロとアリスと一緒にデートしたこともあるし、なんなら海に行った時もデートに換算するなら同時にふたりどころの話では無い。
「あ、あはは……まぁ、それはさておき、思いがけない流れではありますけど……なんだかんだで香織さんと出かけられるのは嬉しいですね。こうして定食屋とかで話す機会は多いですけど、一緒に出掛けたりしたことは無かったですし、香織さんは明るくて話しやすいので一緒に遊ぶと楽しそうですからね」
「……君、そういうところだぞ……本当に、そういうところだからね!」
「え? えっと……」
「はぁ~本当に困った後輩だよ。でもまぁ、そうだね。いまさら断る気もないし、せっかく一緒に遊びに行くことになったんだから私もしっかり楽しもうかな。恋愛経験豊富でプレイボーイな快人くんの素敵なエスコートに期待だね」
相変わらず香織さんは切り替えの早さは流石というか、気を取り直したように明るい表情に変わって、どこか悪戯っぽくウインクをしてきた。
「ハードルが上がりますね……というか、プランはもうできてるのでは?」
「あ~いや、私もオリビア様もデート経験とかは全然なくて、変に詰め込んでも失敗するだけかなって、割と大雑把なプランにしててね。だから、ある程度快人くんのリードをアテにしてる感じだね」
「なるほど、上手くエスコートできるかは分かりませんが、香織さんとオリビアさんに楽しんでもらえるように頑張りますね」
「ぐっ、またそんなイケメンスマイルを……こ、これがモテる男のオーラ……」
「ううん? えっと、小声でなにを?」
「なんでもない!? なんでもないから、気にしないで!!」
「え? あ、はい」
期待に応えられるように頑張ると返すと、香織さんはなにやら少し引きつった笑みを浮かべた後で顔を逸らし、ブツブツとなにかを呟いていたが声が小さくて内容までは聞こえなかった。
まぁ、本人が気にするなといっているのだからそれ以上聞くのも失礼だし、気にせず定食を堪能しよう。
シリアス先輩「ぐっ、胃痛キャラはヒロイン力も結構高いから油断ならないな……あと、そういえば番外編だったか閑話だったか、重信とかが訪ねて来た時に快人がちょくちょく定食を食べに来てる的な発言をしていたし、そこそこの頻度で足を運んでる感じか……」