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新店舗では⑳



 エリスから詳細を聞くにつれて、ハミルトン侯爵は頭を抱えたい思いでいっぱいとなった。七姫五人と知り合ったことももちろん重大な話であり、今後にも大きく影響してくる可能性が高い。

 だが、それ以上に問題なのは快人がエリス主催の茶会に出席してみたいと口にしたことだった。


「……さすがに我々だけで判断するのは難しい。この件は皇帝陛下にも通す必要があるが……仮に開催するとなった場合は、誰を招待するかが問題だな」

「そうですね。カイト様の影響力は桁違いですから、交流を持ちたいと渇望している貴族は本当に多いでしょう。ですが幻王様による忠告、異世界の神様による警告によって貴族側からカイト様に対して行動を起こすのは禁忌となっていましたが、カイト様の方が参加を希望した場合は話が変わってきます」


 快人は貴族の間では非常に有名な存在であり、凄まじい影響力を持つ快人に対し数多の貴族がアクションを起こさない理由は、世界中のあらゆる情報を握り事実上の世界の裏の支配者と言える幻王から各貴族家に届いた牽制の警告文。

 そして、すでに人界に存在する全貴族に脅しという名の警告を完了した異世界の神エデン……この両者の存在によって、貴族たちは快人と交流を持ちたくてもアクションを起こせないという状態だった。

 だがそこに来て、快人が貴族家主催の茶会に参加するとなれば……参加を希望する貴族は後を絶たないだろう。


「……お父様、提案なのですが……仮に茶会を行うことになった場合、貴族家当主は参加させないというのはいかがでしょうか?」

「……ふむ。なるほどな……あくまでハミルトン侯爵家ではなく、エリス個人の付き合いとして主催する茶会であり、参加者もうちの派閥に属するお前の友人……信頼できるものに絞るというわけか……対外的に、ミヤマカイト様との交流は貴族的な付き合いではなく個人的なものであるとアピールもできる。それが最善か……ワシらも参加しないということをアピールするために、開催するなら別邸で行うのも手だな……」

「はい。参加者はかなり絞って、私がカイト様と会わせても大丈夫と判断した数人にするつもりです。これに関しては、急いても失敗するだけですしじっくり考えていく方がよさそうですね」


 真剣な表情で話し合うハミルトン侯爵とエリスを見つつ、静かに考えを巡らせていた侯爵夫人が口を開いて提案する。


「もし可能であれば、知り合った七姫の方々を招待するのはどうですか? 参加してくださるかどうかは分かりませんが、耳の早い者ならシンフォニアでエリスが七姫の方々と会っていたと知っている者も居るかもしれませんし、その時の繋がりで茶会を企画したと名目を立てることもできます」

「なるほど、確かにそれもよさそうですね。七姫の方々のご都合が分からぬ以上、確実な予定としては組み込めませんが、考慮する余地はありますね」


 侯爵夫人の言葉にエリスも賛成し、ハミルトン侯爵も頷いたことで方向性は決まった。これでこの件はひとまず終わりとなり、その後にエリスがテーブルの上に快人から貰った包装された箱を置く。


「……これが、ミヤマカイト様から贈られた品か……」

「はい。卓上時計と仰られていました。カイト様がご自身用に制作依頼した際のあまりということですが……カイト様に関わる品なので、それだけでも十分すぎる価値がありますし、ニフティのカップの製作者が作ったとのことで……陶磁器と木工品では勝手が違うでしょうが、カイト様が依頼するぐらいですから質のいいものだとは思います」


 とりあえず貰った卓上時計に関してもこの場で確認しておこうと考え、エリスは包装を丁寧に剥がし、美しい木箱を開けて中を確認し……『無言で木箱を閉じた』。

 そして少しして、ガタガタと青ざめた表情で震えつつ、混乱した思考で必死に自分に言い聞かせる。


(……み、見間違い。いまのは、私の見間違いです。お願いですから、見間違いであってください。き、きっと箱の開け方が悪かったのでしょう。ちゃんと開ければほら……ほら……)


 祈るような気持ちで再度箱を開けるエリスだが、当然中身が変わるわけではなく……中には芸術品と見紛うばかりの美しい装飾が施された木時計が入っていた。

 その見た目だけでも凄まじい作品であることは伝わってくるのだが、それ以上に気になることがあり、エリスは震える声で呟く。


「……お、お父様……いま、私は心の底から己が未熟であってほしいと祈っています。私の審美眼に問題があって勘違いしているだけだと……そう思いたいのですが……いかがでしょうか?」

「……この暗い色合いながら吸い込まれるような輝き……時計の針に使われているのは……ミッドナイトクリスタルだ」


 縋るような目で尋ねるエリスに対して、ハミルトン侯爵も青ざめた表情で言葉を返し、それを聞いたエリスは天を仰いだ。


(十年にひとつ出回るかどうかの、幻の宝石じゃないですかぁぁぁぁ!? 手に入れたら家宝として保管するような品ですよ……と、時計の針に加工したのですか!? ちょっと、えぇぇぇ……カ、カイト様、これ、渡す品を間違えたとかじゃないですよね? いや、むしろ間違いであってほしいのですが……)




【快人がネピュラに渡した材料】※自分用の品だったので、オルゴールやアクセサリー作って余った宝石類や素材になりそうなものを色々渡した。

・ミッドナイトクリスタルやレインボーダイヤモンド含めた希少宝石多数

・オルゴール作る時に使ったリリウッドの世界樹の枝のあまり

・時計の動力としてトーレに貰った魔水晶(黒)

・その場にいたアリスが適当に押し付けてきた端材


【結果として完成したもの】

二種類の世界樹を贅沢に使い、リリアをして国立美術館に飾るべきと言わしめる加工技術によって装飾を施され、希少宝石などをあちこちにあしらった美しい卓上時計。黒い魔水晶が動力であり、ネピュラの遊び心で特定の時間に演出などがある魔法具の時計に仕上がっている。

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― 新着の感想 ―
なんちゅうハードパンチャーや。迷いも躊躇いも慈悲すら一切ないなんて。
 うん、快人さんの茶会参加の発言は判断が難しいよね。茶会に参加して何か不快な思いをしたら終わりだからね。七姫を招待か……誰が参加するのか楽しみだね!  さて、快人さんのプレゼントした卓上時計は……お…
アリス仕事してあげてww
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