新店舗では⑥
魔界にある森林都市ユグフレシスにあるリリウッドの居城には、たまたま仕事の都合が重なって集合する形になったカミリア、ロズミエル、ティルタニア、エリアル、ジュティアの5人が同じテーブルを囲んで空いた時間にちょっとしたお茶会を楽しんでいた。
「そういえばさ、そういえばさ、カイトの紅茶ブランド……ニフティの店舗が今日オープンだね」
「あやっ!? きょ、今日でしたっけ? 一ヵ月にカイトクンさんに会った時、もう少ししたら~って言ってたですから、10年ぐらい後かと思ってたです」
「……まぁ、私たちの感覚では10年は少しですが、カイトさんは人間ですからね」
ジュティアがふと思い出したように告げた言葉に、ティルタニアが心底驚愕した表情で答え、カミリアが苦笑しながら時間間隔の違いを指摘する。
実際ここに集まっている5人は一番若くても15000歳は越えており、相応に時間の感覚もおおらかである。
「かなりの人気と予想……つまりは、ニフティは注目度も高いし店舗もかなり混んでるんじゃない?」
「ど、どうだろう? 高級志向の店みたいだから、来店人数とかかなり絞ってるんじゃないかな……」
エリアルの言葉に、ロズミエルがやや小さめの声で言葉を返す。ちなみに彼女たちの中で、ニフティのオープン日の予約抽選に申し込みを行ったのはジュティアだけであり、それ以外は4人中3人が、そろそろ開店というのは知っていても今日がオープンとは知らなかった。
「実際凄い人気みたいだぜぃ。ボクもね、ボクもね、いちおう予約抽選に申し込んだけど初日はやっぱり無理だったね。予約が取れたのは2ヶ月先だったね」
「あやや、予約っていっぱい埋まってるですか?」
「ボクが最後に確認したのだと、4ヶ月先まで埋まってたかな?」
「あ、じゃあすぐですね。ティルも一度行ってみたいと思ってたですから、また今度予約しとくです」
4ヶ月というのはティルタニアにとってはたいして長い時間ではなく、待つのは苦には感じないようだった。ただ唯一の懸念として本人が割と忘れっぽいところがあるので、ティルタニアはポケットから取り出したメモ帳にしっかりとニフティの予約を申し込むことを書き込んでいた。
「ジュティアさんは、抽選に申し込んでいたということは、やはりオープン日に行きたかったんですか?」
「いやいや、そんなことはないぜぃ。ボクってば、ボクってば、カイトのおかげで直接品物は買い付けられるから、その辺りはあんまり焦ってないよ。カフェの方も少し気になってたから、行ってみたいなぁとは思ってるけど、初日である必要はないぜぃ」
「ティルは行ってみたいですが、我慢して予約が取れるのを待つです」
ジュティアはニフティのファンと言っていいほど気に入ってはいるが、商品に関しては快人やアニマに直接注文を入れることで購入できるため、そこまで焦りはない。
カフェに関しても2ヶ月先に予約が取れているのでそれを待つつもりだ。
するとそんな中で、ロズミエルが少し遠慮気味に口を開く。
「……あっ、えっと、私、こういうの持ってるけど……行きたい人がいるなら、一緒に行く?」
「存在を知らなかった……つまりは、優先予約権? そんなのあったんだ。疑問……つまりは、なんでそれをロズミエルが持ってるの?」
「えっと、カイトくんから店内のインテリアに薔薇を使いたいって言われて、ドライフラワーとかハーバリウムを提供して、そのお礼に貰ったんだ。事前に連絡すれば、好きな日に予約を入れてもらえる権利らしいよ」
ロズミエルが取り出した小さなカードには優先予約権と書かれており、効果はその名の通り希望日に優先的に予約を入れることができる権利だった。
ロズミエルは芸術にも造詣が深く、快人にプレゼントしたハーバリウムや趣味で作っている美術品などもかなりお洒落で、快人にとってはインテリア関係では非常に頼りになる相手だった。
結果せっかくだし自分も内装になにか関わりたいと考えた快人に相談を受け、テーブルや棚における小型のインテリアをいくつか提供して、そのお礼に優先予約権を貰っていた。
「なるほど、なるほど、そんなのがあったんだね。いいね、いいね、せっかくだしここにいる5人で行こうか……5人でも大丈夫なのかな?」
「う、うん。人数の制限は特に無いって聞いてるよ。さすがに多すぎたら問題だと思うけど、5人なら問題ないと思う」
ジュティアの提案に他の面々も頷き、こうしてせっかく集まっているのだから一緒に行こうと日程の相談を始めた。
シリアス先輩「なるほど、優先予約権……これ、この手の話で快人が相談しそうな相手っていうと、エリーゼもいるよな? エリーゼも持ってそう」
???「まぁ、あの子はコーヒー党なので紅茶ブランドに積極的に行こうとはしないでしょうけどね。なんだかんだで律儀なので貰ったからには一度は使って足を運ぶでしょうが……」