MKロイヤル
雲ひとつない気持ちいい晴天の日。今日はニフティの店舗が三国同時オープンする日であり、なんというか俺もついに自分の店を持つようになってしまったかと感慨深い。
……いや、まぁ、俺の店って言っても名義上だけで、管理運営はカナーリスさんだし、その上の全体の統括はアニマなので全然関わってはないが……。
まぁ、それはそれとして、オープン日初日であり、さらには三国同時オープンという異例の状態……それを取り仕切ると共に、三店舗すべての責任者でもあるカナーリスさんは当然かなりの多忙……だと思ったのだが……。
「う~ん、自分としてはやっぱこれがいいと思いますね。主張の強さよりは、柔らかく温かみのある方がイメージにマッチする気がします」
「そうですね。妾も似たような意見ですし、これベースにさらに調整を加えていく形ですかね」
その忙しいであろう当人は、ネピュラとどこか楽し気に会話をしていた。まぁ、カナーリスさんのことだから店舗に関しては問題ないと思うのだが、こうして目の前で見ると「大丈夫なのだろうか?」と心配な気持ちもわいてくる。
そんなことを考えていると、ふたりともこちらに気付いた様子で振り返った。
「主様、おはようございます!」
「これは、快人様おはようございます。今日はいい天気ですね」
「おはよう、ネピュラ。おはようございます、カナーリスさん……えっと、たぶん大丈夫だとは思いますけど、きょうオープン日ですよね?」
「ええ、ニフティの店舗は三国とも大盛況ですよ。今回は事前に各国の王の協力を得て、事前予約必須にしてありまして、店舗内の滞在時間にも制限をかけてるので流れとかは問題ないです。私は表には立たずに裏から見てますが、来店された方にはかなり好評な感じですね。たはぁ~接客が壊滅的に不向きで申し訳ない!」
とりあえず聞いてみた俺に対して、カナーリスさんは明るい声でまるでいま見ているかのように説明してくれた。というかたぶん、いま見てるんだろうなぁ……。
「そういえば、カナーリスさんは三国の店舗に同時に存在してるって言ってましたが、分体みたいな感じですか?」
「あ~そうですね。認識としてはそれで問題ないかと……厳密に言えば自分のは概念的なやつでして、複数個所に同時にカナーリスという存在がいるっていう一種のルール的な形式なので、厳密に言うとちょっと違いますが、その辺り細かくアレコレ言うと長く複雑になるので、分体に近いという認識で問題なしです。違いと言えば、自分の場合はどの国の店舗にいる自分も『すべて本体』ってとこぐらいですかね? たはぁ~凄く簡単に言っちゃうと、右手と左手を別々に動かしてるような感じです!」
「な、なるほど?」
詳しくは分からなかったが、なんとなく凄そうな力というか、全部本体ってことは……全部全能? 分体の上位互換みたいな力って感じかな? まぁ、その辺りは流石の全能神である。
「……ところで、ふたりはなにをしてたんですか?」
「ああ、ネピュラさんと相談して、後々ニフティで取り扱おうと思ってる最上級グレードの茶葉の選定ですね」
「まだ完成まで時間はかかると思いますが、せっかくの主様の紅茶ブランドなので、主様の名を冠した茶葉があるといいと思いまして、試行錯誤しているところです。主様考案のMKブレンドがありますし、同じように完成した茶葉にはMKの文字を入れたいと思っています」
「なるほど、それはなんか凄そうだけど、ちょっとワクワクするな……」
「特別な品って響きはいいですよね。完成したら希少性を保つために、購入にはかなり制限をつけるつもりです。手に入れられたことが一種のステータスになったりすればいいですしね。たはぁ~ブランドのイメージ先着の一種ってやつです!」
どうやらふたりが作っていたのは、神界におけるグロリアスティーみたいな、超高品質かつ高級な茶葉ということらしい。
それはまた相当凄い茶葉が出来そうではあるが、なんかそういう一部の客のみが買える最上位の品ってのは……ちょっとカッコいい気もするので、楽しみではある。
「せっかくですし、主様の意見も聞いてみたいです。お時間があるようでしたら、付き合っていただけませんか?」
「うん。今日は特に予定はないし、俺のイニシャルを入れるなら俺もいろいろ知っておきたいから、是非協力させてもらうよ」
「ありがとうございます!」
明るい笑顔を浮かべるネピュラの頭を軽く撫で、そのまま俺はカナーリスさんとネピュラと共に茶葉についてあれこれ話し合っていった。
マキナ「いやいや、なんか変な食いしん坊キャラに認定されてるみたいだけど、いくら私でもシリアス先輩の体をそのままむしゃむしゃ食べたりしないよ」
シリアス先輩(霊体)「だ、だよな……よかった」
マキナ「ちゃんと体をワッフルに変えてから食べるから!」
シリアス先輩(霊体)「そういう話じゃないんですけど!? というかそこまでやるなら、普通にワッフル創造しろよ!!」