公園デート⑫
コース料理にペアリングしたワインを楽しみつつ、ゆっくり会話と食事を行い、店を出るころにはすっかり日は沈んでいた。
いや、まぁ、店に付いた時点で夕方だったので夜になっているのは当然と言えば当然だ。高級店エリアは見た目も綺麗な建物が多く、照明魔法具などの明かりに照らされている外観などを見ると、夜は夜でなかなか趣がある。
「もうすっかり暗くなって……るんですが、この辺は凄く明るくて夜って感じがあんまりしないですね」
「この辺りはぁ、照明魔法具もいいものを使っていますし~とても明るいですねぇ」
そう、高級店エリアは非常に明るい。眩しいような明るさではなく、あちこちに設置された照明魔法具によって昼ような明るさがある感じだ。
「でも空はちゃんと夜ですし、これはこれでなんかいい雰囲気ですね」
「はいぃ。夜の澄んだ空気が心地よいですねぇ」
「せっかくですし、少し遠回りして散歩しながら帰りましょうか?」
「喜んでぇ」
実のところ高級店エリアから俺の家はかなり近い……そもそもリリアさんの屋敷がある場所が、かなり富裕層向けの地域であり、周囲には伯爵や侯爵といった高位貴族の屋敷も存在している。
となれば富裕層向けの高級店エリアもその地域の近くにあるのは必然であり、今日もこうして徒歩で出てきているように歩いて移動してもあまり時間はかからない程度の距離であり、帰ろうと思えばすぐに帰ることができる。
ただそれは少しもったい無い気もしたので、食後の休憩も兼ねて散歩して帰ることにした。まぁ、夜とはいえまだ遅い時間ではないので、開いてる店も多いのでウィンドウショッピングも兼ねてといったところだ。
「来る時とは違った通りを歩く感じでいいですかね。まだ結構店も開いてますし、どこか気になる場所があれば買い物をするのもいいですね」
「そうですねぇ。こちらの通りを歩くと~日用品などを扱う店が多いのでぇ、いいものがあるかもしれませんねぇ」
「あっ、そうなんですね。もしかして、リリアさんの屋敷で使う日用品とかもこの辺で買ってたりするんですか?」
「一部はそうですねぇ。ですが~お嬢様にも商会との付き合いなどがあるのでぇ、そういった伝手から~纏めて仕入れているものも多いですぅ」
「ああ、なるほど……そういえば時々、リリアさんの屋敷に荷馬車が着てたりしますね」
当然ではあるがリリアさんは公爵なので、屋敷の中で扱う日用品に関しても高品質なものが多い。そういった品は高級店エリアで買い出しをしているのかと思ったが、付き合いのある商会などが持ってきてくれる感じらしい。
まぁ、一部はこの辺で買っていると言っていたので、細かなものなどはこの辺で買っているのかもしれない。
そんなことを考えつつ、俺は頭の中でこの周辺の道を思い浮かべる。店の並ぶエリアを通って、大回りして家に帰る感じだと、調整すれば途中で公園に寄れる。
高級店エリアの公園ほどのサイズではなく、普通の公園ではあるのだが……その辺りがいいだろうか? 実は今回のイルネスさんとの初デートに備えて、ちょっとしたプレゼントを用意してきたのだが、いつ渡そうかと悩んでいた。
いや、いまになって思えばさっきのレストランで食後に渡したりするのが正解だったとは思うのだが、なんだかんだで高級レストランでのコース料理に緊張していたので、すっかり忘れていた。
なので、どこかしらでイルネスさんとふたりっきりのシチュエーションになりたいので、公園はひとつの候補だ……まぁ、最悪家に帰ってからでも大丈夫ではあるが、その辺は状況を見て考えよう。
シリアス先輩「公園デートはタイトル詐……なに!? 新しい公園……だと……そして不穏な発言が……プレゼント?」