公園デート⑪
ある程度豪華な食事にも慣れているとはいえ、こういった本格的なコース料理は……自分でも意外だがほぼ初めてといっていいかもしれない。
リリアさんの屋敷で出る料理も貴族らしい豪華なものも多いが、コースとして出てくることは無いし、六王祭では高級店でコース料理を食べたけど……あれ事実上の中華料理だったし……。
「イルネスさんはこういうコース料理とか出る店にもよく来たりするんですか? なんか、落ち着いた雰囲気で慣れてる感じがするので……」
「いえ~ほとんどないですねぇ。私は~そもそも食事が必須ではありませんのでぇ、食事自体をあまりとることがありませんからねぇ。マナーなどは~知識としては覚えていますがぁ、実践する機会はほとんど無かったのでぇ、見苦しくなければいいのですがぁ」
「いや、もの凄く綺麗というか、上品というか……よく分からない俺の目から見ても、これが洗練されたマナーなんだなって感じるぐらいですよ」
実際イルネスさんのテーブルマナーはほぼ完璧なんじゃないかと思う。詳しく知らない俺の目から見ても、食べ方がすごく綺麗と感じるわけだし、相当洗練されている気がする。
リリアさんも食事するときは凄く綺麗に食べるのだが、イルネスさんはそれ以上って感じがする。
「それは~少々褒めすぎだとは思いますがぁ、同席しているカイト様に不快感を与えていないのであればぁ、よかったですぅ」
「むしろそれに関しては、俺の方が心配です。へ、変じゃないですかね?」
「とても~素敵ですよぉ。姿勢も綺麗ですし~顔も凛々しくてぇ、ついつい見惚れてしまいそうですねぇ」
「そ、それは褒めすぎな気が……」
とりあえず俺のマナーも対面してるイルネスさんに不快感を与えるようなものではないようで安心したが、それはそれとしてストレートにそんな称賛をされると少々照れくさい。
イルネスさんが本心から言っているのは感応魔法を使わなくてもわかるし、どこか幸せそうに笑うその顔は本当に綺麗で、俺の方こそ見惚れてしまいそうだった。
そんなことを考えていると、イルネスさんが不意に苦笑するような笑みをこぼして口を開いた。
「ですがぁ、せっかくの機会なので~少しマナーに反した行動をとってしまうかもしれませんねぇ」
「へ? マナーに反した行動ですか?」
「はいぃ。こうして~カイト様とふたりきりの状態ですしぃ、どうしても~カフェの時にできなかったことをしたくなってしまいますぅ」
「……あっ、それって……」
「……少しぃ、席を近づけても~構いませんかぁ?」
イルネスさんが言わんとすることをはすぐ察することができた。カフェの時にできなかったという発言で、イルネスさんがなにをしたいかも分かるし、この個室では基本的にはふたりきりで他の目は無い。
次の料理が運ばれてくるタイミングと重なると人が来るかもしれないが、その辺りはたぶんイルネスさんが料理が配膳される感覚は把握しているのだろう。
となればそれを断る理由も無く、イルネスさんの提案に頷く。するとイルネスさんは席を近づけ、一口サイズに料理を切り分けてから、片手を添えながら差し出してきた。
「……それでは~カイト様ぁ、どうぞぉ」
「いただきます……な、なんか場所が場所だけあって少し照れくさくはありますね。嬉しいですけど……」
「そうですすねぇ。私のワガママに付き合わせてしまって申し訳ないですがぁ……是非カイト様にこうしてあげたいと思っていましたのでぇ、嬉しいですねぇ。次の一口もぉ……ああ~そういえばぁ、こう言って差し出すんでしたねぇ……あ~ん」
甘い声でそう告げながら微笑むイルネスさんが本当に魅力的で、恋人らしいことができているこのシチュエーションも大変すばらしくはある。欠点としては、ちょっと気恥ずかしくて料理の味が分かりにくいことだろうか……まぁ、そのぐらいイルネスさんの笑顔が眩しいというか……嬉しそうで本当によかった。
シリアス先輩「あ、あ~明日はコミカライズ版9巻の発売日だなぁ! 電気書籍版もたぶん同時発売だし、カバー裏にはばっちり私も居るので是非購入してほしいところだね!! 活動報告のリンクから公式HPに飛んで、そこから通販サイトなんかへのリンクもあるよ!!!」
???「……全力で本編の展開から目を逸らそうとしてる。あと発売日は『明後日』です」