公園デート④
イルネスさんと公園でのんびりしていると、入り口の大きな門が開くのが見えた。他にも利用者が来たってことだろう……門が開くってことは馬車で来たのだろうか?
そんな風に考えながら、なんとなく門の方を向いて……驚愕した。
「……え? 空飛ぶ絨毯!?」
「秘宝ですねぇ。なかなか珍しいものが見えましたぁ」
「……秘宝? えっと、アレって魔法具とか魔法ってわけではないんですか?」
入ってきたのは馬車ではなく、空を飛ぶ絨毯とその上で肩を並べ合っている夫婦っぽい方々であり、見た目の雰囲気から貴族っぽい感じだったのだが、なによりその空飛ぶ絨毯に驚いた。
空を飛ぶ魔法はかなり高度なものであり、魔法具にするにしても転移魔法とはいかないまでもかなり大きな魔水晶が必要となる。実際空飛ぶ荷台とかフライングボードもかなりの大きさだった。
しかし、入ってきた空飛ぶ絨毯は薄くあの厚みで空を飛ぶような術式を込めた魔水晶を入れられるとはとても思えなかったので、てっきり乗ってる人が魔法で浮かせているのかと思ったのだが……秘宝という聞きなれない単語が聞こえてきた。
「はいぃ。かなり珍しいものなのでぇ、カイト様が知らないのも無理はないですよぉ。秘宝というのは~簡単に言えばぁ、現段階で魔法具では作れない特殊な効果を持った物の総称ですねぇ。古代遺跡などから~稀に発見されることがあるみたいでぇ、品物自体が魔水晶に近い効果を持っていましてぇ、あのように~利用できますぅ」
「な、なるほど、そういう古代のオーパーツみたいなのがあるんですね」
「魔水晶との差はぁ~術式を書き換えたりすることができずぅ、秘宝ひとつに効果はひとつのみですねぇ。極めて貴重な品ですがぁ、発見された際には~オークションなどで販売されてぇ、裕福な貴族や大商人や王族などが落札することがありますねぇ。あれも~そのような経緯で入手したものでしょうねぇ」
「へぇ、そんなに珍しい品ならかなり高額になりそうですし、相当の財力がある人にしか手に入れられないんでしょうね」
知らなかった……そういうオーパーツ的なものもこの世界にあるとは……でも確かに考えてみれば、特殊な魔物の素材を使って作った品とかに変な魔力が宿ってたりとか、漫画とかゲームでもありがち話だし、実際に魔法があるこの世界において、そういった不思議な品が存在するのも納得だ。
「そういった秘宝を探して~あちこちの古代文明や遺跡を調査する方もいますねぇ。カイト様の知り合いで言えばぁ、ハプティ様が~秘宝ハンターと言っていい活動をしている方ですねぇ」
「あ~なるほど、そういえばトレジャーハントしてるとか、そんなことも言ってましたね。本人の主張的には義賊らしいですが……」
まぁ、ハプティさんはアリスなので……そう考えれば結構納得できる。そういった未知の品の捜索や管理もアリス……というか幻王陣営が行っているのだろう。秘宝のオークションとかもアリスの息がかかっている可能性は十分にある。
物凄くザックリ表現してしまえば、分体としてのハプティさんの仕事は、秘宝探しということなのだろう。
「まだまだ未発見の秘宝とかもありそうな感じなんですかね?」
「そうですねぇ。特に魔界には~過去に滅び他種族なども多いですからねぇ。或いは~過去の魔界が荒れていた時代にぃ、力持つ魔族が隠したりしていた品もあるでしょうねぇ。地中深くから発見されたりすることもあるみたいですからねぇ」
「へぇ……なんかそういうのって、ロマンがあってちょっといいですね」
「くひひ、そうですねぇ。思わぬ品が発見されるかもしれないと思うとぉ、確かに~ロマンを感じますねぇ」
いつか機会があれば、秘宝に関してみ調べてみたいものだ。もしかしたら、王立博物館とかそういう場所に展示されていたりする可能性もあるし、見ることもできるかもしれない。
『秘宝』
魔法具では再現が不可能、或いは元になった素材が不明でありつつ魔法の力を宿した品の総称。非常に珍しく貴重な品であり、秘宝を探すハンターも存在している。
……なお、その正体は『シャローヴァナルが過去に試しに創造した特殊なアイテム』であり、魔族などが使えばどんな風になるのかと、実験的に世界の各地にバラまいた物で、過去にあれこれ試行錯誤していた時代の名残の品々である。
シリアス先輩「……やっぱりあいつが元凶か!?」
???「だいたい、世界にある未知の○○系とか、再現性が無いものはシャローヴァナル様がお試しでアレコレしてたものですね……さすが、だいたいの元凶」