公園デート③
公園の木陰でイルネスさんの膝枕で休むのは至福の時間だったが、ずっとそうしているというのももったいない。というか、普通に寝てしまいそうな気もしたので、ある程度で起き上がって今度は並んで座って雑談をすることにした。
「カイト様ぁ、軽食などもご用意できますがぁ?」
「ああ、ここって飲食もできるんですね。お腹が空いてたりするわけじゃないですが、なにかつまめたりするといいかもしれませんね」
「ではぁ、クッキーなどは~いかがでしょうかぁ?」
「ありがとうございます。いただきますね」
イルネスさんが用意してくれたのは一口サイズのミニクッキーであり、ひとつ食べてみるとほんのり甘くバターの風味が口に広がって美味しかった。
雑談の合間に食べるにはちょうどいいと、そう思っていると……イルネスさんは続いて筒のような……というか完全に水筒らしきものを取り出していた。
「……用意がいいですね。というか、もしかしてここに来ることを想定してたりしました?」
「いえ~そういうわけではありませんよぉ。ただ~もしかするとぉ、カフェに行った後で~カイト様と他の場所にも行けるかもしれないとぉ、期待していたのは事実ですぅ。なので~いろいろと用意はしてきましたねぇ」
「ありがとうございます。というか、本当にいろいろしてもらって……」
「気にしないでくださいぃ。私が~好きでやっているのでぇ、なんといえばいいのか~私がぁ、なにかをすることでぇ、カイト様が快適に過ごす手助けをできると思うと~それがひどく嬉しくてぇ、幸せなんですよぉ。なので~準備している時もぉ、楽しかったですぅ」
そういって微笑むイルネスさんの言葉が嘘ではないというのは、感応魔法を使わなくても伝わってきた。なんというか、本当に俺の世話を焼くのが楽しいというか、幸せなのだという気持ちがストレートに伝わってきて、少し照れくさくもあった。
「なんというか、俺が言うのも変ですが、さっき言ってた通りイルネスさんは凄く献身的な感じですよね。俺としては嬉しいですが、無理はしないでくださいね」
「はいぃ。ですが~本当に無理はしていませんよぉ。普段の仕事に関しても~同じですぅ。特に~カイト様の屋敷のアレコレをするのはぁ、私にとっては~楽しい時間なのでぇ、本当に~好きなことをして過ごせている時間と言えますねぇ」
「そういわれてしまうと、なにも言えませんね。でも、お礼は言わせてください……イルネスさん、本当にいつもありがとうございます」
「くひひ、カイト様にそういってもらえるのはぁ、とても~嬉しいですぅ」
本当に日頃から常人の何十倍もの仕事をこなしており、能力的に本人は余裕そうではあったが心配している部分もあったのだが、どうやら本当に楽しく仕事をしているみたいなので安心した。
そしてホッとすると同時に、ちょっとこう……せっかく恋人同士で一緒にいて、見える範囲に他の人も居なくてほぼふたりきりの状況なので、もう少し恋人らしい感じで過ごしたいなぁという欲が湧いてきた。
いまこのシチュエーションで、すぐにできることと言えば……。
「……イルネスさん、えっと……肩を抱いてもいいですか?」
あ、改めて言うのはちょっと緊張するな……イルネスさんが拒否したりしないというのは分かっているつもりだが、それでもやっぱり多少の緊張はしてしまう。
俺の言葉を聞いたイルネスさんは、一瞬キョトンとした後で、嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「はいぃ。喜んでぇ」
「じゃあ、失礼しますね」
無事に許可ももらえたので、隣に並んで座るイルネスさんの肩に手を置いて抱き寄せる。小柄なイルネスさんは思った以上に華奢な感じで、肩もかなり小さくで……なんというか、柔らかかった。
イルネスさんは軽く俺にもたれかかるように形となって、密着している部分と肩に置いた手に微かなぬくもりを感じて、少しくすぐったくも幸せな気分だった。
とりあえずこのまま、軽く雑談をとそう思ったタイミングで、ふとイルネスさんが思いついたように口を開いた。
「……カイト様ぁ、もし~ほかになにかしたいことがあればぁ、私に確認する必要はありませんよぉ」
「へ? えっと……と、いいますと?」
「いえ~カイト様はぁ、お優しい方なので~私の気持ちを慮ってくださるのは分かりますぅ。なので~今後の簡略化のためにぃ、前もって言っておこうかと思いましたぁ……なにをしてくれても~いいんですよぉ。私はぁ……貴方のものですからねぇ」
そういって微笑むイルネスさんは、全てを包み込むような慈愛に妖艶さまで含まれているかのようで、思わず息を飲むほどに美しかった。
シリアス先輩「ぐあぁぁぁ、の、ノーガードスタイル……だと……」
???「もともとガードはしていなかった気もしますが、本人に宣言するのはまぁ、いちゃついてますね」