公園デート②
今日は天気もよく公園で過ごすには適しているといっていい。シンフォニア王国自体が一年を通して気候が安定しているのもあるが、気温も程よく過ごしやすい。まぁ、俺にはシロさんの祝福があるので夏や冬だったとしても問題なく快適に過ごせるのだが……。
木陰に辿り着いた後はマジックボックスから取り出したレジャーシートを敷く、そしてそのまま腰を下ろしてのんびりというのが想定していた形ではあるが、今回はイルネスさんの提案で膝枕をしてもらうことになった。
なので俺はどうしたらいいのかとチラリとイルネスさんの方を見ると、イルネスさんはレジャーシートの上に座り、膝の上にハンカチを置いた。
「では~カイト様ぁ、こちらへ~どうぞぉ」
「あ、はい。では、失礼します」
準備が完了した様子だったので、一言断ってイルネスさんの膝の上……ハンカチを広げてくれている場所に頭を乗せる。
ふんわりと香水のいい香りがすると共に、優しくこちらを見るイルネスさんの顔が目に映った。
「寝心地は~いかがでしょうかぁ?」
「なんというか、凄く心地よいですね。いや、もちろん若干の気恥ずかしさはあるんですが、それ以上にホッとするというか……自然と肩から力が抜けてリラックスできる気がします」
「くひひ、それなら~よかったですぅ。ですが~私もぉ、少し気恥ずかしさを感じましたぁ。不思議なものですねぇ。いままでも~何度かぁ、カイト様を膝枕したことはあるはずなのにぃ……やはり~恋人になったということを~意識している部分もあるのかもしれませんねぇ」
パッと見た感じではいつも通り優しく微笑んでいるように見えるイルネスさんだが、確かに感応魔法を使ってみれば若干の緊張のような感情も伝わってくる。
ただ決してそれは固くなるような緊張ではなく、ほどよく……なんて表現するか、俺を恋人だと……特別な相手だと認識しているからこそ、少し今までと違う気持ちという感じだった。
「けど、なんというかいままでも何度か膝枕をしてもらったことはあるんですが、いまだに顔の方向をどうするのが正解かはよく分からないですね。いまみたいに仰向けがいいのか、横向いたほうがいいのか……」
「どうでしょうねぇ? 私も~正解はよく分かりませんがぁ、私としては~カイト様の顔が見えたほうがぁ、嬉しいですねぇ」
「なるほど……でも、確かに俺もこうしてイルネスさんの顔を見て話をしているほうが、心が落ち着くようでいいかもしれません。まぁ、寝たりする場合は話が変わってくるかもしれませんが……」
「寝ていただいても~大丈夫ですよぉ?」
イルネスさんはそう言ってくれるが、別に眠気はそんなにない。いや、いい天気で気持ちがいいし、イルネスさんの膝枕は寝心地がいいしで、寝ようと思えば寝れるような気もする。
だが、なんだろう? それはそれで、少しもったいないような気もした。
「う~ん、眠気はそんなにないですし……なんというか、こうしてイルネスさんと穏やかな気持ちで話しているのが心地よくって、寝てしまうのはもったいない気もします」
「おやぁ? くひひ……なんだか少しくすぐったいですがぁ、嬉しいですぅ」
イルネスさんはそう言って楽しげに笑った後で、片方の手で俺の頭を撫で、開いているもう片方の手で俺の手をそっと握ってきた。
やはりというかなんというか、母性が凄いというか大人の女性って雰囲気が伝わってくる。ただその中にも少し、甘えるような仕草があるというか……いま、俺の手を握っている部分などがそうだが、以前よりもずっと可愛らしさを感じる面も見せてくれるようになった。
明確に異性としての好意も向けてくれているのだと感じて、イルネスさんと同じように少しくすぐったい気持ちになったが……なんというか、うん。悪くはない気持ちだ。
イルネスさんの手を握り返して、さてもう片方の手はどうしようかと考える。イルネスさんのように頭を撫でるというのは、この寝た態勢では難しい。
でもそもそもこの態勢でできることは少ないし、無理になにかをする必要もないか……そんな風に結論付けたタイミングで、頭を撫でていたイルネスさんの手がそれまでとは違う動きをみせた。
俺の前髪をどかすような動きをした後、スッと不意打ち気味にイルネスさんの顔が近付いてきて、ちゅっと小さな音と共に額に唇が触れる感触があった。
少し驚きつつ顔の位置を戻すイルネスさんに視線を向けると、どこか無邪気に見えるような、眩しいほどに幸せそうな笑顔だった。
シリアス先輩「は、ははぁ~ん……ま、前は寝てる時にこっそりやっていた額へのキスを正面切ってやってきたわけだ……や、やるじゃない……」
???「シリアス先輩、足ガクガクじゃないっすか……生まれたての小鹿みたいになってますよ」




