公園デート①
お待たせしました。コミカライズ版の9巻の発売日は9月25日です! 今回もあとがきに表紙を掲載します。公式HPなどは活動報告をご確認ください。
入場料を支払ってイルネスさんと共に公園の中に入る。門が開いて入るのかと思ったら、門の脇に扉があり徒歩の場合はこちらから入場する形らしい。門を開けて入るのは馬車で訪れた場合などなのだろう。
中に入ってみてまず目に飛び込んできたのは、広い緑のカーペット……芝生のエリアだった。というかパッと見た感じ大半が芝生のエリアであり、ところどころに大きな木やベンチも見える感じだ。
なるほど、ここは先程イルネスさんが語ったように休憩を主目的に置いているのだろう。植物園のような観光を目的としたものではなく、例えばのんびりと芝生の上で休憩したり、木陰でゆっくりと過ごしたりといったものに適した雰囲気だ。
正直入場料があって貴族向けの公園と聞いて身構えていたが、仰々しい感じじゃなくてホッとしたというか……こういうのでいいんだよって気持ちだ。
「いい雰囲気ですね。人も全然いないですし……」
「この公園はぁ、利用者が~ゆっくりと過ごせるようにぃ、入場人数も調整しているみたいですからねぇ。空いている時間帯だったのは~幸運でしたぁ」
「ですね。ゆっくりできそうです……どの辺りがいいですかね?」
「あちらの~木陰になっている芝生はいかがでしょうかぁ?」
「あ、いいですね。暑くはないですが、日差しはちょっと強めなので日影が過ごしやすそうですね」
あんまりあちこち動き回るような場所ではないので、どこかに腰を据えてのんびり過ごそうと考えて、イルネスさんと相談の結果大きめの木の下で過ごすことにした。
芝生が本当に綺麗で、その上で寝転がりたい気持ちもあるが……いまはちょっといい服を着ているので、それは止めておこう。マジックボックスの中にレジャーシートがあるから、それを敷いてその上に座る感じがいいだろう。
「ふと~思い出したのですがぁ」
「はい?」
木の下に歩いて向かっている途中で、ふとイルネスさんが呟くように告げた。
「昔~ある方に言われましたぁ。私の本質は~献身なのだとぉ。本質というと~少々仰々しいですがぁ、性格的に~誰かになにかをしてあげるのがぁ、性に合っているという感じでしょうねぇ」
「それは、結構納得できるというか……実際俺も日頃イルネスさんにはお世話になりまくってますし、イルネスさんが優しくて献身的な方だというのに異論はまったくないですね」
実際いまは俺の家の家事をほとんど行ってくれているし、以前と変わらず俺の身の回りの世話もしてくれていて頭が下がる。
以前もそうだったが、いまも髪はイルネスさんに切ってもらっているので、それも含めてお世話になりまくっている。
イルネスさんの性格的にも献身的というのはピッタリ当てはまるようなイメージで、母性的とでもいうべきか……実際アレコレ俺の身の回りのことをしているときは、楽しそうにしている気がする。
「はいぃ。私自身も~その評価はその通りだと思いますぅ。それでなのですが~今日のデートもぉ、とても楽しく幸せですがぁ、やはり性格でしょうかぁ? カイト様になにかをしてあげたいという思いが強くなっていますぅ。なので~カイト様さえよければぁ、少し~私のワガママにお付き合いいただけませんかぁ?」
「え? ええ、もちろん構いません……けど、いったいなにを?」
そもそも俺のためになにかをしてあげたいというのがワガママだとは全く思わないのだが……まぁ、なんにせよ俺に不都合はまったくない。
ただこのタイミングで言い出したということは、この公園でできることをやりたいという感じかな?
「木陰での休憩に~膝枕などはぁ、いかがでしょうかぁ?」
……そういって微笑むイルネスさんの表情はとても優しく、思わず見惚れてしまいながら俺は首を縦に振った。