カフェデート④
楽しく雑談をしつつ目的のカフェに到着した。さすがの高級感というべきか、ハイブランドのショップと言われても納得しそうな外観であり、ドアなどにも装飾が多くて高級感が漂っている。
ひとりであれば、金銭的に問題なくとも雰囲気に気圧されてしまいそうな感じではあるが、今回は事前に食べ歩きガイドで確認してきているので見た目に圧倒されたりということは無かった。
店内に入ると、すぐに店員がやってきて席に案内してくれる。店員の雰囲気も高級店らしく洗練されている感じで、貴族家のメイドや執事といった印象を受けた。
この店の店内には観葉植物などが複数あり、薔薇のドライフラワーなどの飾りも多い。シンフォニア王国は緑豊かな国なので、こういう雰囲気は結構合っているような気もする。
「テーブルとテーブルの間もスペースがしっかり確保してあって、広々とした雰囲気ですね。広さに対して席数が少ないのは、あえてそうしてるんですよね?」
「そうですねぇ。このランクの高級店となると~回転数ではなくぅ、客単価を重視するでしょうしぃ、少数の客たいして~質の高いサービスをというコンセプトなんでしょうねぇ」
「なるほど、確かに高級レストランみたいな雰囲気ですね」
軽く雑談をしながら黒色と金の表紙が重厚な雰囲気を演出しているメニューを開く……なるほど、値段書いてないな。たぶん、メニューの値段を気にするようなランクの客が来るような場所ではないのだろう。
いや、もちろん店員とかに聞けば価格は教えてくれるのだろうが、わざわざ書いてないということは知りたがる客もほぼいないのだろう。
高級レストランとかでもそういう、メニューに値段の書いてない店はある。寿司屋とかもそうかな? まぁ、寿司時価のものが多いのも要因だろうけど……。
「俺はオリジナルブレンドの紅茶と、レアチーズケーキにしようかと思いますが、イルネスさんはどうします?」
「では~私はぁ、カイト様と同じ紅茶と~フルーツタルトにしますぅ」
まぁ、普段あまり来ない高級店ということで若干気圧されてはいるが、金銭的にはまったく問題ない。それこそグロリアスティーとか一杯で滅茶苦茶高い紅茶も飲んだ経験があるわけだし、事実としてお金はいっぱいある。
アニマが凄いというのもあるが、マグナウェルさんの鱗で作ったアクセサリーだとか、ニフティだとかの収入もかなり多いし、結局元の世界に帰ることが無かったので電卓の権利も俺が持ったままである。
他にも俺の意見からアイディアを得た商品とかがあると、クロは律儀に俺にも権利を分配してくれるので、結構定期的にそういった権利関係のお金も入ってくる。
いや、本当に大半をアニマに渡して運用してもらっている状態でも、使いきれないどころか減るより増えるほうが早いレベルなので、浪費するのは問題だがもう少しこういう高級志向の店にも意識してくるようにした方がいい気もする。
少しして紅茶とケーキが運ばれてきたので、さっそくいただくことにする。さすが高級カフェというべきか、レアチーズケーキはかなり美味しく舌触りもいい。
紅茶のオリジナルブレンドも、流石にアインさんとかジュティアさんの作るものには及ばないものの、かなりレベルが高い気がする。
「……タルトって綺麗に食べるのが難しそうですけど、イルネスさんはすごく綺麗に食べますよね。音とかも全然しないですし……」
「ナイフなどがあれば~それを使うのが一番楽ですがぁ、無くとも~クッキー生地に対してぇ、フォークの先を~軽く差すようにしてから小さく動かせばぁ、音を出さずに~綺麗に食べられますよぉ」
「なるほど、勉強になります」
イルネスさんの食べ方は本当に上品というか、クッキー生地の固さで綺麗に食べるのが難しそうなタルトを、本当に上品に食べており、マナーについてよく知らない俺でも見ていて感心するほど洗練されていた。
「ですが~少し残念なこともありますねぇ」
「残念なこと、ですか? 味が好みじゃないとか、好きなフルーツが入って無かったとか?」
「いえ~タルトも紅茶もとても素晴らしいですよぉ。それとは関係なく~こういった高級な店ではぁ、互いに食べさせ合ったりというのがぁ、難しそうなのでぇ。そこは~少しだけ残念ですねぇ」
「あ、ああ、なるほど、確かに高級店だと一口ずつ交換というわけにはいきませんね。それはまた今度、別の機会にやりましょう」
「くひひ、はいぃ。とても~楽しみですぅ」
なんというか、イルネスさんがそうやって要望というか……恋人らしいことをしたいという風な希望を言ってくれるのが、なんだか嬉しかった。
いままではなにかしら希望があっても、こちらが聞かない限りあまり口にすることは無かったし、こういう風に意見を伝えてくれるようになったのは、自惚れではなく俺とイルネスさんの心の距離が縮まった証拠でもあると、そう感じた。
シリアス先輩「た、確かに、高級カフェだとイチャラブ的な行動はしにくい! こ、これは助かったか……」
???「店出てからいちゃつくだけでは……?」