カフェデート②
今日はイルネスさんとカフェに行く約束をしている日であり、家の玄関で待ち合わせをして出かけることになっている。
イルネスさんと出かけたことは何度もあるが、今回は恋人になっての初デートということもあり少し自分でもソワソワしてるかなぁという感じはある。
まぁ、とはいってもカフェに行くだけなので仰々しいものではない。ただ店が高級カフェなので六王祭で来ていた少し上品な服を着ていくことにした。
玄関前に到着するとタイミングがピッタリというか、丁度イルネスさんもやってきた。イルネスさんは黒色のロングスカートに、少しだけ飾りのようにフリルがついた白い長袖の上着を着ており、薔薇を模したアクセサリーを控えめに身に付けた感じで、なんというか清楚な雰囲気である。
以前一緒に出掛けた時は暗めの色合いの服を着ていたが、今日は白を基調とした明るめの雰囲気の私服であり、以前とは違った雰囲気がなんとも新鮮だ。
「おはようございます、イルネスさん。丁度いいタイミングでしたね」
「おはようございますぅ。くひひ、息が合っていますねぇ」
「ですね。あっ、その私服もすごくよく似合ってますよ。清楚で上品な雰囲気がイルネスさんに合ってて、素敵です」
「ありがとうございますぅ。カイト様も~とても素敵ですよぉ。六王祭の折に着ていた服ですねぇ。私は~六王祭には不参加だったのでぇ、このタイミングで見れて~得をした気分ですぅ」
そういえば、六王祭にイルネスさんが来た時は夜のタイミングで、あの時は屋台で食べ歩きするつもりで汚れないように上着はマジックボックスにしまっていたので、上着を着た状態をイルネスさんが見るのは初めてかもしれない。
「じゃあ、ここで長々と話していてもなんですし、出発しましょうか」
「はいぃ。では~デートの始まりですねぇ」
……ふむ、デートか……そうだよな。俺とイルネスさんは恋人同士なわけで、これからデートに行くわけだ。となればなんとなくではあるが、いままで出かけた時と少し変化が欲しいとも思う。
「……イルネスさん、もしよければ手を繋いでいきませんか?」
「はいぃ。では~よろしくお願いしますぅ」
俺が手を繋ごうと提案すると、イルネスさんは優しく微笑みを浮かべてすぐに了承してくれて、軽くこちらに手を差し出してくる。
そして手を繋ぐと、思った以上に小さく柔らかな手の感触にドキッとした。イルネスさんは少し体温が低めなのか、少しだけひんやりとした手が心地よい。
「……思った以上に~落ち着けないものですねぇ。どうにも~緊張してしまいますぅ」
「イルネスさんが緊張するのは珍しいというか、初めて見るかもしれません。やっぱり、初デートだから……ですかね?」
「そうですねぇ。こうして~誰かと恋仲になるのもぉ、手を繋いで出かけるのもぉ、初めての経験なのでぇ、少し~落ち着かない気持ちですぅ」
傍目に見ればいつも通り穏やかで落ち着いているように見えるイルネスさんだが、確かに若干……本当に意識しなければわからない程度ではあるが表情がやや硬く、感応魔法でも緊張しているような気持ちが伝わってきていた。
ただそれ以上に幸せそうというか、楽し気な気持ちも伝わってくるので緊張してはいるものの、いまの雰囲気を楽しんでくれているというのは分かって安心した。
「俺もそんなに自信満々にってほど経験豊富ではないですが、出来るだけイルネスさんをリードできるように頑張りますね」
「はいぃ。とても~頼りになりますぅ」
とはいえ、イルネスさんが緊張しているというのは本当に少しだけであり、別にガチガチになってたり気持ちが空回りしていたりというわけでもないので、俺がリードできるようなことはほぼないだろう。
ただ、恋人らしい行動というか……そういう部分に関しては、俺の方が積極的に動きべきだとは思う。
そんな風に考えた俺は、少し手だけ繋いだ手を緩めてイルネスさんの指に触れるように手を動かす。するとその動きだけで、イルネスさんは俺の意図を察してくれたのか指の間に隙間を作り、俺の指を受け入れてくれる。
恋人繋ぎの形でしっかりと手を繋いだ俺とイルネスさんは、軽く微笑みあった後で街に向けて出発した。
シリアス先輩「あ、もうこの時点で甘いし、ヤバいので……逃げたい」