カナーリス⑯
カナーリスさんはあちこちの世界を旅した経験を色々話してくれて、本人が話し上手なこともあってかなり楽しかった。
このトリニィアのように比較的俺の居た世界と似た異世界もあれば、まったく別の常識や生態系がある世界も当然ながら存在している。
以前にリリアさんがマキナさんから貰ったご褒美のドラゴン模型で見た機械と生物が融合したような生物がいる場所にも、カナーリスさんは行ったことがあるらしい。
「本当にいろんな世界があるんですね。そういうのって世界創造の神様が、どういう世界にするかとか決めてるんですか?」
「う~ん、その辺りは千差万別ですね。例えばこの世界、シャローヴァナルの作った世界は本人の意向がかなり強く反映されてます。元々参考にした世界に似せて作ってるようですし、細かな部分にまで調整を加えてたりしますしね。まぁ、この世界はかなり小さめなので細部まで手を加えやすいってのはあるかもしれませんね」
「そういえば、マキナさん……あ、えっと、俺の居た世界の神様も似たようなことを言ってた気がしますね。この世界は小さすぎて、本体で行くにはかなり制限がかかるとか……」
「マキナ……ああ、機神ですね。彼女は世界創造の神の中でもかなり存在規模の大きな神ですから、確かにこの世界に本体を持ってきたりするのは大変かもしれないですね。自分の場合は、元々いろんな世界を旅するように調整……えっと、権能とか能力をカテゴリーごとに分割して特殊な次元に格納して、存在を小さくしてるんですよ。で、必要なときに必要なものを引き出して使うって感じで……ざっくりと言えば、クラウドサーバーに保存してるようなものって思ってもらったら大丈夫です。たはぁ~まぁ、制限とかは当然あるんですけど、おかげでスリムでスレンダーな自分です!」
なるほど、カナーリスさんは元々いろいろな世界を旅していたみたいだし、当然トリニィアのように小さな……あくまで世界創造の神基準でという前提はつくが、小さな世界にも悪影響を与えず来られるように色々調整しているのだろう。
「おっと、話がそれましたね。まぁ、そんな感じにシャローヴァナルみたいに細かく調整している神も居れば、世界作った後ほったらかし……それこそ、数十億年後とかに自分の世界を見て『あれ? こんな世界だったっけ?』とかって神も居ますね。まぁ、そういう輩の中には、久しぶりに見たら好みじゃなかったから世界滅ぼして作り直そうとかって、無責任極まりない結論に達するのとかも居ますし、本当にそれぞれですね」
「なんか、創作物とかだとそういう神様は創造した世界の住人に返り討ちにあったりしそうなイメージがありますね」
「そういうのもいますよ。世界創造の神と一括りにしてはいますが、能力はそれぞれですし、中には単に世界を創造する類の能力が得意だっただけで、実力自体は準全能級にも遠く及ばないレベルとかもいますし、返り討ちにあうパターンもありますね。あとはまぁ、そもそも思いつきで滅ぼそうとしてたので、嫌がって抵抗してくるのを見て、罪悪感が湧いたり面倒になったりで、やられたふりして止める神とかもいますね。まぁ、そういう連中はそもそもなぜ作ったって感じではありますけどね。たはぁ~神なんて仰々しく言っても、所詮はそんなもんですよ」
なんとなくではあるが、カナーリスさんのスタンスとして神も人間も力の差はあれど大きな違いはないという感じなのだろう。
だからこそ全能の神という割には親しみやすく、いろいろと話しやすいのかもしれない。
「なんというか、そういう話とかを聞いてるとカナーリスさんが優しい方だなぁって伝わってくるみたいで、表現は難しいですが少し嬉しい感じですね」
「おっと、快人様、そういう無邪気な笑顔は大変にデンジャラスですよ。自分のハートにグサッとクリティカルヒットするので、キュン死の危険がありますね。たはぁ~まぁ、そういってもらえるのは普通に嬉しいんですけどね! あっ、ところで話は変わるんですが、ブランドの代表としての顔見せも兼ねて各国の王に謁見する話ですが……」
「ああ、いつになったんですか?」
「3日後ですね。ああ、三国ともです。同時に行けば手っ取り早いので三国同時に訪問して謁見するつもりです。ああ、全部本体なので失礼には当たらないかと……たはぁ~同時にいっぱい存在できる女で申し訳ない!」
店舗のオープン予定も概ね決まっており、カナーリスさんが紅茶ブランドの代表として本格活動する日も近い……いや、いまの時点でもう仕事やりまくってる気がするが、冗談ではなく本人にとって片手間程度の労力すらもかかってないのが凄いところである。
ともあれ、その辺りも含めてカナーリスさんには安心して任せられるので、かなり気は楽だ。
シリアス先輩「ライズ……問題なし。クリス……問題なし。ラグナ……大恩人の神が謁見にくるという、ある種のボディブロー……今回の胃痛はラグナか……」
???「相手が全能の神と知っているからこそ、謁見される側という状況に頭抱えてそうですね」