カナーリス⑮
カナーリスさんが用意してくれた菓子類はどれもお洒落な雰囲気で、貴族や富裕層向けなのか高級感あふれる品が結構あった。
ただ、芸術的で上品な……どうやって食べればいいか分からないようなものばかりではなく、普通にシンプルなケーキとかも用意してある感じだ。
「……このドームみたいのはもしかして……ミルクかけて溶かす感じのやつですか?」
「はい。チョコドームですね。やっぱりこういう遊び心的なのは大事にしたいところですし、シンプルですけどワクワクしません?」
「それは確かに、実際いまワクワクしてますしね……おっ、おぉ……中はフルーツケーキですか?」
「チョコレートと相性がいいですからね。ちなみに中のフルーツケーキは国ごとに特産のフルーツを使ったものにしてますので、若干それぞれの国でフルーツの組み合わせが違います。快人様の前にあるやつは、シンフォニア王国で採れるフルーツで作ったものですね」
「凄いですね。けど、なんか調理が難しそうなものも多いですね」
「まぁ、この手のスイールは見た目のインパクトも大事ですからね。映えってやつですよ。まぁ創造した店員には皆、最高レベルの菓子制作技術を与えていますので、難しいやつでもサッと作れますよ。あっ、ちなみに今快人様が食べてるやつは自分が作りました。たはぁ~お菓子作り出来る女子的要素でポイント稼いで申し訳ない!」
なるほど、それなら安心というか……クオリティ凄いことになるのでは? 実際このケーキも滅茶苦茶美味しいし、見た目も華やかだ。
ただ、やはりさすがというべきかカナーリスさんは、基本的にこの世界にある食材を使っており、ベビーカステラの時のシロさんのように現存しない素材を作りだしたりはしていない。
各国の特色や特産品に合わせたメニューを考えているみたいだし、そういう辺りの思考が極めて常識的なので本当に安心して任せられる。
「作ったというのは、創造したとかじゃなくて調理したってことですよね? カナーリスさん、料理も上手なんですね」
「たはぁ~まぁ、全能ですから……って言うと根も葉もないですが、料理とかはたまにやってましたので結構経験もありますよ。あ~でも、本当にそんなに高頻度でやってたわけじゃないので……う、う~ん?」
「どうしました?」
「いや、自分の感覚としては本当に時々やってただけで、経験は少なめって言いたかったんですけど……それでも通算すると数億年とかになるので、だったら自分並大抵の相手よりよっぽど料理経験値あるので、どう判断するべきか迷いました。たはぁ~億年がそんなに長くないってのは、感覚がゴッド過ぎですね!」
「あはは、それは確かに難しいところですね」
カナーリスさんの言葉に俺も苦笑しながら同意する。カナーリスさんにとっては本当に時々少しやってた程度でも、膨大な年月を生きているため通算の経験値で言えば料理人やパティシエを遥かに凌駕している。というか、億年がそんなに長くないってのは、流石に全能級の神様……スケールが文字通り桁違いである。
「カナーリスさんはいろんな世界を旅してきたんですよね?」
「ええ、あちこち回りましたね。知り合いの多さはちょっと自慢です……おっと、自分こう見えて察しのいいタイプでして、これは別世界の話を求められているパターンですね! お任せください! じゃあ、せっかくなのでおやつを食べているタイミングなので、別世界の面白スイーツの話でも……実は別世界には指で食べるスイーツというのも存在するんですよ」
「え? 指で? それは、指の部分に口があったりする種族とか、そういうわけではなく?」
「ええ、快人様の同じように経口摂取できる種族が敢えて指で食べるスイーツです。プニプニしたゼリーのような形状でして、それに指を入れると少しずつ体内に取り込まれていくんです。あれ? それだと味がしないのでは? と思うかもしれませんが、この世界とかには存在しない特殊な素材で調理されていまして、指から吸収しているはずなのに味を感じるんですよ」
「それはまた不思議で、面白いですね。どんな感じなのか興味がありますね」
「お任せください……はい、こちらです。少量にしてありますので、是非お試しあれ! たはぁ~自分気の利く女自称してもいいですかね?」
俺が興味を持つのが分かっていたのか、カナーリスさんはさっと話に出ていたスイーツを取り出した。見た感じは半透明の容器に入った普通のゼリーである。
これに、指を入れる?
「……お、おぉ……え? あっ、凄い。本当になんか味がしますね。な、なんか、なにも口に入ってないのに味を感じるってのが不思議な感じですが……ラムネっぽい爽やかな味わいですね」
「はじめは本当に感覚に戸惑うでしょうね。何度か食べると慣れるんですか……いや、食べるって表現していいのかは悩みどころですがね。まぁ、このスイーツはこの世界に存在しない食材をいくつも使ってるので、快人様相手にならともかく、カフェに出したりはできませんけどね」
「むしろ、俺に出してよかったんですか? なんかこう、俺の居た世界の神とシロさんが契約を結んでたみたいに、異世界の品はいろいろ制限があるのでは?」
「ああ、大丈夫です。その世界の創造主も快人様のファンなので、むしろ喜ぶと思いますよ。たはぁ~さすが快人様はモテモテですね!」
うん、えっと……なんで、会ったこともない別の世界の神様が俺のファンなのだろうか? シロさん関係で世界創造主の間で有名になってるって言ってたけど、その関係だったりするんだろうか……う、う~ん。深く考えないでおこう。
シリアス先輩「なんか世界創造の神たちの間で、快人に対してだけは特別措置するような話ができていたとしても不思議ではない雰囲気」
???「これはアレですね。『ただしカイトさんに限る』特例……TK特例と呼びましょう」
シリアス先輩「変な造語作るな……」