カナーリス⑭
カナーリスさんが仮設置した店舗を見学してから数日経ち、各国の王から店舗を開いてほしいという希望の土地の連絡がきた。
やはりというべきか、どの国も首都でありかなりいい土地っぽい感じがする。まぁ、カナーリスさんは未来を見て土地が分かった上で店舗考えていたので、特に問題はない。
「ちなみにカナーリスさん、オープンっていつ頃からできるんですか?」
「別に明日でも大丈夫ですよ。すでに品物の量産体制は整えましたし、シャローヴァナルにも許可をもらって店員も創造して、この世界の基礎知識の学習なども含めた研修も終わってます。たはぁ~つまりは、いつでもOKという感じですね」
「さすが、仕事が早いですね。でもいきなり明日オープンとかってなると、むしろ困らせていまいそうですね」
「そうですね。各国への配慮もそうですが、アニマさんたちもオープン記念のキャンペーンなどを行いたいと言っていましたし、その辺の宣伝も含めて……来月オープンぐらいが妥当かなぁと思いますね」
「じゃあ、アニマたちにも確認して問題なければいまから一ヵ月後にオープンにしましょうか」
カナーリスさんの力なら、それこそ店舗を現地に用意するのは一瞬であり、本人の言葉通りいつでもオープンは可能だろう。
でもまぁ、今日の明日にオープンですなんて言ったら各国の王たちの胃を痛めつけるだけなので、ある程度の期間は開ける形になった。
「ああ、そういえば快人様。丁度おやつ時ですし、店舗で出そうと思ってるスイーツを試食しませんか? 私の部屋に招待しますよ。たはぁ~まぁ、もともと快人様の部屋ですけどね!」
「ありがとうございます。じゃあ、せっかくなのでお言葉に甘えて……」
丁度甘いものでも食べたいなぁと思ってたところだったので、カナーリスさんの提案をありがたく受けさせてもらうことにした。
そのまま歩いてカナーリスさんの部屋に移動して、中に入ると……あれ? この部屋こんなに広かったっけ? 部屋は自由に調整してくれていいと伝えてあったので、アリスとかがやってたみたいに時空間魔法で空間を拡張しているのかもしれない。
「……あっ、もしかして空間の拡張をしてます?」
「おっと、お伝えするのが遅くなってしまって申し訳ないです。しばらくはブランドと店舗の方を優先してたんですが、ひと段落したので昨日自分の部屋の模様替えをしたんですよ。そのついでにいくつか空間を作って、部屋そのものを切り替えられるようにした感じですね。あっ、いまの部屋は快人様やネピュラさんを招くように作った部屋で、くつろぎやすいように広めにしてます」
「なるほど……え? いくつも部屋があるんですか?」
「はい。まぁ、ほら、自分全能級ですから、同じ場所に位相だけズラして複数の空間作ったりとかも余裕なわけなんですよ。たはぁ~これは住宅問題も全部解決出来ちゃいますね! まぁ、表に出してない空間から出るには時空間転移が必要ですが……おっと、快人様、どうぞこちらの席に……あっ、自分相席いいですか?」
「ありがとうございます。ええ、もちろん……というか、むしろ立ったままで居られたりしたら逆に気を使いますよ」
俺が了承するとカナーリスさんは向かいの席に座り、軽くパチンを指を弾く。すると今までなにもなかったテーブルの上に色鮮やかなケーキと、淹れたての紅茶が現れた。
「ささ、どうぞ遠慮なく召し上がってください。たくさんありますが、好きなだけ食べて、食べきれなければ残してもらっても大丈夫ですよ。残ったものは適当な魔力とかエネルギーに変換して再利用しますので……たはぁ~エコ意識が高くて申し訳ない!」
相変わらずの無表情ではあるが、カナーリスさんの声はどこか弾んでいるように聞こえ……なんとなくではあるが、楽しそうな雰囲気だった。
シリアス先輩「だって、口調とか雰囲気が軽めだから誤魔化されてる感あるけど、カナーリスって快人に対する好意はどちゃくそに高いだろうし……」