カナーリス⑬
カナーリスさんはやはりかなり優秀というべきか、いろいろな世界を旅してきた経験が生きているのか全能の神という超常の存在でありながら、商売などに必要な目線も持っているというか……シンフォニア王国用以外の店舗も、それぞれの特色に合わせたものだった。
アルクレシア帝国用の店舗は、高級感がありつつもどこか歴史を感じるような……アルクレシア帝国の伝統にのっとった外観や内装に仕上げており、アニマとキャラウェイに感心していた。
対してハイドラ王国はカフェ部分にテラス席を用意して、海を見られるように計算していたり、外観や内装も高級感がありつつもカジュアルさも感じられるような雰囲気だった。
「……これ、正直……文句のつけようないよね」
「ああ、自分たちが考えるより遥かにいい、それでいて自分たちが出した要望にも的確に答えているし、来店する客層を見据えての調整も細かくしてある。このまま即オープンしても問題なさそうだ」
「たはぁ~おふたりにそう言っていただけると、ありがたいですね! ああ、カフェのメニューとかも三国でそれぞれ変えてたりします。基本的な紅茶などのラインナップはそのままに、それぞれの国用のブレンドや限定メニューを用意してる感じですね。そうするとほら、他国の店舗にも足を運んでみたくなるでしょうからね」
これもまた非常に有効そうな手段だ。店舗限定メニューというのはやっぱり興味をそそられるし、ニフティ自体が富裕層をターゲットにした紅茶ブランドなので、他国へ足を運ぶというのがそう難しくない人も多いだろう。
「それだといっそ、各店舗にオリジナル商品とかあってもいいかもですね」
「ああ、実はそれなんですがネピュラさんも同じことを考えてくださいまして、新しくオリジナルの茶葉を作ってくれました。たはぁ~ネピュラさんの慈悲には感動しますね! ちなみにそれぞれシンプルに、各国の頭文字にリーフって付けた分かりやすい名前にしてあります。この辺が書類ですね。ブランド展開商品に関しては、自分に一任していただけるとのことだったので、量産準備も進めてあります」
「素晴らしく仕事が早いな……ふむ、なるほど……予算内で収まっているので問題ないというか、ほとんど予算を使ってないが……カナーリス殿、これで大丈夫なのだろうか?」
「大丈夫ですよ。基本的に自分が関わるなら設備投資とかにお金は必要ないです。創造できますからね……茶葉の栽培に関しては、専用の躯体……ああ、えっと、この世界で言うところのゴーレムとかですかね? そういうの作って管理させてるので、人件費もいらないです。この辺りもシャローヴァナルには許可とってるので問題なしって感じですね。たはぁ~自分、仕事のできる女を自称してもいいですかね!」
自称もなにも、仕事できまくるというか……まだ各国から候補地を書いた手紙も届いてない状況だというのに、もうほぼ完璧に開店準備が終わってる感じで仕事が早すぎる。
まぁ、そもそも仕事任せた時点で無表情ながらやる気MAXみたいな感じだったので、相当張り切ってくれたのかもしれない。
「まぁ、とはいえまだまだカフェのメニューとか検討すべき部分は多いですし、皆さんの意見も聞かせてください。自分、いろんな世界でいろいろなもの食べてきましたので、経験は豊富なんですけど……この世界に合った味付けにできてるかとかもチェックしてもらいたいところですね。たはぁ~これは、快人様に手料理を振る舞えちゃいますね!」
相変わらず表情は変わらないのだが、カナーリスさんはどっか楽し気であり、その声を聴いているとなんだかこちらも微笑ましい気分になった。
けど、それはそれとして……ネピュラの新作の茶葉か……明らかに反応するであろう方々がいるな。その辺りは、先んじて直接発注するように伝えておかないと……。
「そういえば、いままではアニマに回してもらってたんですが、今後は俺の友人の発注とかもカナーリスさんに回してもらった方がいいですかね?」
「ええ、自分の方に回してもらえたら大丈夫です。というか、なんか魔法具みたいなの作りましょうか? 快人様の世界で表現するところのタブレット端末的感じで、その魔法具を操作すれば発注が出来る感じにすれば、手紙云々の手間は無くなると思いますしね」
「……そんなの作れるんですか?」
「いまざっと全知使って調べましたけど、この世界に現時点で存在する術式と魔水晶で問題なく作れますね。この世界にも箱に入れた書類とかを対となる魔法具に転送するものとか存在するようなので、それの応用で行けそうです。まぁ、多機能にはできませんけど注文するぐらいなら問題なくできます」
「なるほど、じゃあ、せっかくなのでお願いします」
「お任せを!」
う~ん、やっぱめちゃめちゃ有能である。これは本当に紅茶ブランドに関してはカナーリスさんに全部任せても問題なさそうだ。
シリアス先輩「まぁ、そもそも全能って時点で完全なるチートだし、なんでもできるな」
???「シャローヴァナル様の許可が必要だったり、契約上無理だったりしない限りはなんでも行けそうですし、しっかり配慮できる方なので本当に丸投げでもいい仕事してくれそうではありますね」