カナーリス⑫
カナーリスさんが家に住むようになって数日、ひいては紅茶ブランドをカナーリスさんに任せて数日経ち、開店する予定の店舗の内装を話し合うことになった。
アニマとキャラウェイと俺で視察する予定で、場所はアニマの執務室で問題ないということだったのでそこに集合していると、ほどなくしてカナーリスさんがやってきた。
「いや~お待たせしました。いろいろデザインのや内装の案を貰ったので、仮って感じで亜空間内に作ってみたのでチェックをお願いします。たはぁ~仕事の早い女で申し訳ない。ああ、内装とかは全然調整可能なので、変更の案があったら言ってください」
「実際に現地に建てる前に見学できるのはいいですね。けど、えっと、カナーリスさん……えっと……顔がへこんでギャグマンガみたいになってるんですけど……」
「おっと失礼、ちょっと前に『多重次元粉砕キック』を喰らったばかりでして、修正忘れてました」
現れたカナーリスさんの顔は、まるで粘土細工の球体が横からぶん殴られたような形で変形しており、何事かと思ったが俺が指摘するとすぐに元に戻った。
いろいろとツッコミどころはあるが、多重次元粉砕キックとやらが言葉通りの威力だったとして、それを受けて顔が変形する程度のダメージなのは流石全能級というべきだろうか……いや、そもそもなんで多重次元粉砕キックなんて物騒な一撃を喰らってるのかは分からないが、カナーリスさんはいろんな世界の神と交流があるらしくその辺りでなにかあったのかもしれない。
「……しかし、カナーリス殿。確かに早い段階で店舗の確認を出来るのはありがたいですが、まだ各国から出店用の土地の通知などは届いていない状況では早急すぎる気も……」
「土地の広さによって店舗のサイズも変わりますし、いい内装や外観の店舗を仮組できても実際の場所には置けないってパターンもある可能性はありますよね?」
アニマとキャラウェイのツッコミはもっともではある。実際に土地のサイズによって店舗のサイズも変わってくるし、周囲の景観などに合わせて調整する必要もあるだろう。
だが、まぁ、それはあくまで一般的な話であり……カナーリスさんクラスの方には当てはまらない。いや、俺はシロさんやマキナさんともよく話すので、たぶんカナーリスさんは『すでに土地のサイズや周囲の景観を知っている』と分かっているのだが、アニマやキャラウェイが不安に思うのは仕方ない。
「ああ、その辺りは未来の情報を見て確認してありますので、場所や条件、日当たりや店舗からの景色も配慮して仮組してるので安心してください。たはぁ~なんでもありで申し訳ない!」
「……そういえば、シャローヴァナル様と同格の神様だったね、アニマ」
「ああ、そのぐらいできて不思議ではないという考えに至らなかった自分たちが未熟だ。事実、ご主人様は動じておらず凛々しい表情のままだから、そのことを即座に察知されたのだろう」
まぁ、その辺りは世界創造の神様との交流の差というか、経験の差が大きく影響するのでアニマたちの落ち度では決してない。
ともあれ、気を取り直してカナーリスさんが作った亜空間で店舗の確認をすることになった。
「まずこちらが、シンフォニア王国に建てようと思っている店舗です。全体的に白を基調としたデザインで、高級感を感じられる造りにしてあります。シンフォニア王国だと高級店の立ち並ぶエリアになるので、周囲の店舗との景観を崩さないようにしつつも注目されやすくするために、装飾などを多めにしていますね」
「これはまた見るからに高級感があふれるデザインで、貴族向けの店って雰囲気が凄いですね。柱とかの装飾も滅茶苦茶凝ってますね」
「まぁ、自分の場合頭に思い浮かべて創造するだけなので手間はかかってないんですよね。たはぁ~お手軽3Dプリンターみたいなもんですね!」
シンフォニア王国用に用意したという店舗は、白い外観に金色の模様や装飾のある非常に美しい店舗で、貴族ご用達と言われても違和感のないデザインだった。
俺も高級店が並ぶエリアにはよく足を運ぶが、確かにシンフォニア王国の高級店はこういった雰囲気のデザインが多いかもしれない。
そして中に入ってみると、これはまた少し面白いデザインになっていた。
「……これ、もしかして半分はカフェになってるんですか?」
「はい。味を確かめてから買いたいパターンもあるでしょうし、富裕層には余裕ある買い物とかをしたい人も多いので店舗内の半分はカフェにしています。販売している紅茶を楽しめるのはもちろんですが、新商品などの反応を確かめやすいという利点もあります」
「なるほど……」
アニマとキャラウェイはいろんな店に出資したりしているので、説明が無くてもある程度意図は分かるのか、書類を片手に店舗内のあちこちを確認しており、よくわかってない俺にはカナーリスさんが説明て付いてくれている。
まぁ、実際俺は本当に見学してるだけみたいな感じだし、純粋に高級店感ある店内の雰囲気を楽しんでいた。
シリアス先輩「カフェエリア限定商品とか用意すると、それはそれで凄いことになりそう」
???「まぁ、その辺りはたぶん個数限定にしたり、そもそもカフェを利用するのを予約制のみにしたりするんでしょうね。高級店なのでその辺りはいろいろ調整できますしね」
シリアス先輩「あと毎回だけど、普段の会話から快人大好きオーラが溢れてるアニマは相変わらず」