カナーリス⑤
とりあえずネピュラを呼んだほうが話がスムーズということで、ネピュラにも応接室に来てもらった。
「お呼びでしょうか、主様」
「うん。ちょっとネピュラにも同席してほしくて……」
「なるほど、確かに妾が居たほうが話がスムーズですね。こんにちは、カナーリスさん。妾も同席して構いませんか?」
「はひっ! あ、はい。こ、こんにちは、ネピュラさん……ど、どうぞ」
「う~ん。もう少し自然に話してほしいところですが……それは今後の課題ですかね」
「うぐっ、も、申し訳ない。なんとか名前を呼ぶのだけは詰まらず言えるようになったんですが……」
カナーリスさんは相変わらず表情は変わらないのだが、声が明らかに緊張しているというか恐縮している感じがするので、以前の話で言えばネピュラの方が立場が上だったのかもしれない。
まぁ、ネピュラの方は気にした様子もなく苦笑しているので、特に心配はいらなさそうだ。
「それで、妾を呼んだということは、妾とカナーリスさんが知り合いということが分かったからということでしょうか?」
「そ、そうですね。と、というか、ネピュラさん……快人様に、神であったことを話したんですか?」
「ええ、絶対者たる妾に主様に隠すようなことは存在しません。後々驚かせない様に先に伝えておきました」
「なるほど、ネピュラさんらしい……あ~でも、それなら自分が無理に、さん付けで呼ぶようにならなくても大丈夫だったんじゃ……」
「いえ、やはりいまの立場は以前とは違うものですし、相応の態度であるべきだと思います。カナーリスさんなら問題なく適応できると信頼していますしね」
「ネ、ネピュラさんっ……は、はい! 自分、頑張ります!!」
感極まったような声を出しながら無表情というのはなかなか器用ではあるが、カナーリスさんはネピュラを本当に尊敬しているようだった。
まぁ、いまもネピュラはかなり凄いし、格落ちした状態でそれなら以前はもっとずっとすごかったんだろうし、それも当然の反応かもしれない。
「しかし、それでしたら話がしやすいですね。快人様、自分、今回ですね。かなりぶしつけなお願いをしようと考えて来たんですよ。たはぁ~図々しくて申し訳ない! どうやってその話に持って行こうかと悩んでいたんですが、ネピュラさんの事情をすでにご存じなら話が早いです」
「うん? お願いですか?」
「その、大変に無礼な話とは自覚してるんですが……自分を快人様の家に住ませていただけないでしょうか!」
「え? 俺の家に?」
「はい! 決してお邪魔はしませんし、部屋が無いというのでしたら亜空間でも作ってそこに住みますし、家賃もしっかり支払います!」
「別にいいですよ」
「駄目だと仰られるのも当然と思いますが、自分はどうしても………………うん? あ~すみません、快人様、いまもしかしてOK出してくれました?」
「え? あ、はい」
別に断る理由も無かったし、部屋もいっぱい余ってるので問題ないと思ったのだが、カナーリスさんの方は予想外だったようで戸惑った様子で聞き返してきた。
「……いやいや、落ち着きましょう、確かにお願いしたのは自分ですが、もっとしっかり考えて決めるべきです! まだ二回ぐらいしか会ってない無表情で死んだ目の怪しいやつをいきなり家に住まわせようとしたりしちゃ駄目ですって! もっとこう警戒心とか、いや、もちろん自分に快人様を害するような意思はありませんが……」
なんか、カナーリスさんって全能級の神様の割にはびっくりするぐらい感性がマトモというか、世界創造の神ってシロさんやマキナさんのイメージが強かったので、ここまでマトモだとちょっと戸惑ってしまう。
「カナーリスさん、主様はカナーリスさんが妾の知り合いということなども考慮してくれているとは思いますが、それ以上に極めて人を見る目に優れた方なので、カナーリスさんが善性が強い者であると分かった上での返答だと思います」
「そ、そうなんですか……快人様、自分としてはもちろんありがたいですが、気を使いすぎないでくださいね。いきなり家に新しい住人が来るということになるわけですし、しっかり条件などは擦り合わせを行いましょう。自分は快人様の家の方針に従うつもりですので、必要なことは気にせず仰ってくださいね」
「わ、分かりました。まぁ、その辺りはゆっくり話して決めましょう」
……いや、本当にマトモすぎてこっちが戸惑ってしまうが、とりあえずカナーリスさんなら問題は無いと思う。ネピュラとも知り合いなわけだし、性格的にも明るくて接しやすいので……表情が変わらないことにだけ慣れれば、他の人もすぐ仲良くなれるだろう。
シリアス先輩「まぁ、比較対象がシロとマキナだと常識人っぷりにビックリするのは分かる。あと、快人の家に全能級INか……マジで特異点」