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ネオ・ベビーカステラブレンド㉗



 アメルさんと一緒にいくつかの店舗を回ってショッピングを楽しみ、ブラシなどのいくつかの商品を購入した。最初は俺がシロさんの祝福を受けていることを理由に、代金は受け取れないと言われたのだが……アメルさんが機転を利かせて「シャローヴァナル様の祝福を受けた盟友が代金を支払って購入したいと希望しているのだから、無料で渡す行為の方が不敬に当たる」とそんな感じに説得してくれた結果、俺は普通に買い物をすることができた。


「まぁ、これはあくまで創造神様の祝福を受けた盟友だからこそ有効な手段ではある。神の意向に逆らうことが不敬というのは、有翼族では広くある認識だからね。いや、最も、盟友でなければそもそも対価なく品を差し出そうとはしないか……」

「なんにせよ、俺は普通に買い物ができてホッとしました。アメルさんのおかげですね」

「えへへ」


 俺の言葉を聞いてアメルさんは本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる。なんというか実年齢で言えばアメルさんの方が遥かに年上なのだが、どうにも年下感のある可愛らしさである。

 まぁ、見た目や性格は実際幼めな印象なので、年下感があるのはおかしなことではないかもしれない。


「盟友! 他に求める品はあるかい? 盟友が求めるなら、ボクは夜を照らす星の如く望む場所へと誘おう」

「ありがとうございます。でも、もう買い物は十分堪能したので……う~ん。次は景色のいい所とかあれば行ってみたいかもしれないです。ほら、有翼族の里って高い山にありますし、景色のいい場所も多いのかなぁ~って」

「任せて! ボクが綺麗な景色が見れる場所に連れて行くよ!」


 ここで終わりにしてアメルさんの家に戻ってもよかったのだが、アメルさんの期待のこもった目はまだ俺を案内したいという欲求が感じられたので、次は景色のいい場所をリクエストすることにした。

 するとアメルさんは再び表情を明るくして、サッと俺の後方に回り込んで俺の体をガッチリホールドして空に飛びあがる。

 有翼族の里に橋とかが無い以上、どうしても移動はこの形になるのだが……分かってはいても、毎回後ろから抱き着かれるとドキッとする。


「ちなみにどこに行くんですか?」

「里から少しだけ離れたところに、風の峰と呼ばれる場所があるんだ。大いなる風が導のように流れ、岩の隙間を通る風が演者となって音を奏でる。最もそれは、自然のなす奇跡ではなく、過去の同族が作り上げた作品であるらしいが……」

「風が音楽のように聞こえる場所があるってことですか? それは、凄いですね」

「ああ、それに雄大な自然を感じられる景色も素晴らしい」


 なかなか凄そうな場所だと思いつつ流れる景色を見ていると……なんだろう、ハリネズミの背中を上から見ているかのような、尖った岩がたくさん並ぶ場所が見えてきた。

 そしてよく見ると、そのたくさんの尖った岩の中心に半径1~2メートルほどの平たい場所があり、アメルさんと俺はそこに降り立った。


 周囲を見渡してみると、尖った岩はこの平たい場所より低い位置にあるみたいでほとんど見えず、先程アメルさんが語ったように絶景と言えるような雄大な山脈が目に映った。

 そしてそれだけではなく、音楽が聞こえてくる。笛の音に近いような音が綺麗に重なり合い、民謡のような独特でありながら心地よい音楽が聞こえてきた。


「……え? 思った以上にしっかり音楽として聞こえますね。これ、狙ってやってるんですか?」

「ああ、この峰は周囲の山と地形の関係で、天候が荒れたりしない限りは風が吹く方向がほぼ一定なんだよ。さっき上から見た尖った岩にはいくつもの穴が開いていて、そこを風が通り抜けることで音を奏でるように調整されているのさ。とはいえ小細工もある」

「小細工、ですか?」

「ああ、この尖った岩が並ぶ地帯の入り口に特殊な結界魔法が施されていて、音が変な重なり方をしないように、一定間隔で風を遮断して、風が岩に辿り着く間隔を調整しているんだよ。だから、ちゃんとメロディに聞こえるってわけさ」

「なるほど……でも凄いですね。景色も絶景ですし、音も綺麗で……」


 確かに風が吹き続けていれば、同じ岩の音が何度も鳴るわけで、ある程度間隔をあけるようにしなければ音は聞こえてもメロディとしては成立しないだろう。しかしそれにしても、自然に吹く風と穴を開けた岩で音楽を奏でているのが凄いし、感動する。


「ここは、ボクのお気に入りの場所なんだ。昔からよくここにきて景色を眺めた……だから、盟友と一緒に来たかったんだ!」

「そうなんですね……ありがとうございます。こんな素敵な場所に連れてきてもらえて、すごく嬉しいですね」

「えへへ、盟友が喜んでくれたらボクも嬉しい。あっ、そうだ盟友! あっちの山には……」


 心底嬉しそうな笑顔を浮かべたアメルさんは、そのままいつもの口調も忘れてしばし素の口調で、周辺の話や昔の思い出話を話してくれた。




シリアス先輩「……区切り的に、次はフレアとかのとこに行く感じかな?」

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― 新着の感想 ―
[一言]  風の峰か……天候が荒れない限りは風が吹く方向は一定なんだね。う〜ん、風は吹き続けているのかな?吹き続けているならずっと音色が鳴っている事になるよね。  自分のお気に入りの場所を友達に教え…
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました!アメルさんから翼の手入れなど興味深い内容でした! 今回も素の反応になっていて可愛い! また快人さん達が最後に向かって行った場所も個人的に行って見たい場所で…
[良い点] たのしそうなアメルさん見ていると癒される
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