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ネオ・ベビーカステラブレンド㉕



 アメルさんの家でコーヒーを飲んだ後は、せっかく来たのだからと有翼族の里を案内してくれることになった。実際俺も上空から見ただけだったので、少し興味はあった。


「ただ、盟友。気を悪くしないでほしいんだが、有翼族の大多数は盟友を創造神シャローヴァナル様の祝福を受けた尊い存在として見て、神の使途と接するかの如き態度だと思う。盟友としてはいい気はしないだろうが、悪気があってやっていることではないということだけは、理解してやってほしい」

「ええ、大丈夫ですよ。心配してくれて、ありがとうございます」

「うん……あっ、でもいちおうボクと一緒だし、尊い存在と見てるからこそ気軽に接触してきたりはしないとは思う」


 まぁ、正直その手の扱いはリグフォレシアとかでもある程度慣れてるので、大丈夫ではあるのだがアメルさんはかなり俺を心配してくれている様子だ。

 アメルさん自身、有翼族で唯一の特殊個体として、また人界でも数少ない爵位級の力を持つ存在として色々な視線を受けてきたからこその気遣いかもしれない。

 実際俺が遊びに来たのを大はしゃぎしていたし、初めて友達を家に招いたみたいなことも言ってたので、迫害とは違う意味で特別扱いされてきたのだろう。


「俺はあまり気にしないので大丈夫です。それより、アメルさんと一緒にあちこち回れるのが楽しみですね」

「あっ、うん! ボクも盟友を案内したい場所がいっぱいあって――んんっ!? さすが、ボクの盟友、心は揺るがず穏やかというわけか……では、さっそくともに行こう!」


 またも尻尾を振る子犬の幻影が見えるような嬉しそうな顔で告げた後、アメルさんは俺の後方に回る。有翼族の里に橋などは無く……建物の形状も含めて、根本的に徒歩で移動するには向いていない。なので必然的に空を飛んで移動することになるのだが、当然俺は飛べないのでアメルさんに運んでもらう形となる。


 アメルさんは嬉しそうに俺を抱えて飛び上がり、緩やかな速度で下降しながら説明をしてくれた。


「いま正面に見えるのが、様々な商店が並ぶ区画だ。基本的に有翼族の里において店舗というのは、この区画のみだね。そもそも外と交流するものが少なく、店舗数自体が少ないからね。されども、この地に座す者たちが求める煌めきは、相応に揃っている」

「里の大きさを考えると少ないかもしれないですが、買い物をしたければここに来ればいいってのは分かりやすいですね……あれは……へぇ、魚とかも売ってるんですね」

「有翼族には魚を好む者も多いね。ただ、有翼族は偏食的というか好き嫌いが極端な者が多いんだ。だから食材を取り扱う店は多いね。あくまで多いだけで、ボクのようにあまり好き嫌いの無い者もいるが……あ~でも、ボク苦いのはちょっと……んんっ!?」


 種族的な特徴として好き嫌いが多いのか? しかも特定のなにかが好きで何かが嫌いというわけではなく、それぞれにこれが好き、これが嫌いというものがあり、それが割と極端ということなのだろう。

 それはそれでちょっと面白い生態かもしれない。味覚が鋭敏なのか、偏食気味な性質があるのか、詳細は分らないので、まぁ、そういうものだと認識しておこう。


「アメルさんもこの辺で買い物とかをするんですか?」

「いや、ボクは基本的に里では買い物はしない。というのも理由があって、有翼族において長の持つ権限はとても強い。ボク自身が望んでなくとも、長は格上で畏敬の念をもって接すべきという考えの者が多い。故に金銭での売買でなく献上しようとする者が多くてね……ボクは煌めきを持ち君臨するものではあるが、暴君になるつもりはない。民たちに悪意はなく、純粋な敬意によるものと理解はしていても、己の心の示す輝きには曇りが差すのさ……」


 なるほど、有翼族にとって長であるアメルさんは非常に強い権力を持つ存在であり、アメルさんからお金を受け取るなんてとんでもない、商品は差し上げますって考えの人が多いみたいだ。

 それが純粋な敬意によるものであるとは分かっているが、アメルさんとしては気が引けるので別の場所で買い物をしているという感じだろう。

 実際アメルさんの飛行スピードであれば、近くの町に行くのなど一瞬だろうし、それほど手間というわけでもないのだろう。


「なんというか、やっぱり有翼族は独特な考えの人が多いみたいですね」

「ふふ、頭が固いともいえるけどね。まぁ、いい所もいっぱいあるけどね……あっ、盟友! あの辺りは雑貨屋や小物を取り扱うものが多いね」

「小物ですか、有翼族のアクセサリーとかも置いてるんですかね?」

「いや、そもそも買い物に来るのは基本同族ばかりだからね。その手のアクセサリーは他種族に売るものだから、里内の店には無いよ。世間一般に有翼族の特産品として認識されているものは、数少ない交流先に売っているのさ」

「なるほど」


 言われてみれば確かに、それは当然かもしれない。リリアさん曰く有翼族の特産品を仕入れるには伝手が必要とのことだが、逆に言えば伝手があれば買うことはできるというわけだし、アメルさんがリリアさんと交渉した時に担当を向かわせると言っていたので、そういう外との売買を担当している人も居るのだろう。


 しかし、家の形と言い文化と言い、結構独特なものが多くてこうして見学している分には結構新鮮で楽しいな、有翼族の里……。




シリアス先輩「さすが、世界のトップ権力者たちとほぼ全員知り合いな上に、エルフ族の英雄だとか、世界の特異点だとか呼ばれてる男だ……面構えが違う。実際、神聖視される程度まったく気にしてなさそう」

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― 新着の感想 ―
[一言]  リグフォレシアのエルフ達やオリビアさん、知り合い以外の神族達、一部の幻王配下には既に神聖視されているし、全く問題無いだろうね。比べる相手を間違えてると思うけど、フェニックスさんとかに比べた…
[一言] 4人の創造神(好感度MAX)も追加でw
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました!アメルさんが長としての考えてる様子や快人さんが褒める度に喜んだりしてる様子が微笑ましいと可愛い過ぎる! 次も楽しみに待ってます!
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