ネオ・ベビーカステラブレンド⑮
シアさんとしばらく雑談して、これで今回の訪問の目的は完了したのだが、そのまま即帰るには時間が早かったこともあり、せっかくなので知り合いに挨拶をしていこうと考えた。
クロノアさんとライフさんの元を回って、そのあとで軽くフェイトさんと過ごせればいいかなぁとは思っている。まぁ、全員神殿に居た場合だが……。
「ああ、それで訪ねてきたのか、律儀なものだ。だが、よく来た、来訪を歓迎しよう」
「ありがとうございます。仕事中だったら申し訳ない」
最初にクロノアさんの神殿に訪れると、クロノアさんは快く迎えてくれた。なんとなくではあるが、クロノアさんは最高神の中でも一番忙しそうにしているイメージなので、急な来訪で迷惑になってないか心配だったが、そんな俺の気持ちを察したのかクロノアさんは微笑みながら口を開く。
「いや、むしろ最近で言えば手持無沙汰なぐらいだ。勇者祭の時期ではないというのもあるが、運命神がある程度定期的に仕事をするようになったからな。ミヤマのおかげではあるが、アヤツが脱走してそれを探して捕まえたり、そもそも仕事をするように叱ったりする手間がなくなった。生命神は元々仕事自体は期限内に必ず完了していたからな、頻繁に寝ているだけで……おかげで仕事などが遅れることもなくなり、かなり余裕があるな。改めて運命神にどれだけ手間をかけられていたかを実感した」
「あ、あはは……シアさんも同じようなことを言ってましたね」
フェイトさんの影響力というか、フェイトさんがまとも……まともかどうかはともかく、月に一回仕事するようになっただけで、激務そうだったクロノアさんやシアさんがこれだけ余裕たっぷりな感じになるってことは、それはもう本当に酷かったのだろう。
まぁ、そもそも初めて会った時点で、仕事放り出して脱走してきていたわけだが……。
「ただ、懸念点もある。最近シャローヴァナル様が、頻繁に他の世界の神々と話をしているようなのだ」
「え? そうなんですか? エデンさんじゃなくて?」
「ああ、地球神様では無かった。いや、もちろん異世界の創造主たちと交流が広がるのは素晴らしいことではあると思うし、シャローヴァナル様がよしとしているなら問題はないのだが……」
それは確かにちょっと不思議な感じである。もちろんシロさんが精神的に成長した結果、他の世界の創造主たちとも交流を持つようになったと考えれば問題はない。
マキナさんとかもいろんな世界の神と知り合いと言っていたし、創造主同士の付き合いというのもあるのだろう。
「……なんでしょうね? なんか、俺も全然根拠はないのに影響受けそうな気がしてるんですが」
「……気を強く持てよ、ミヤマ。あと、出来ればあまり派手な規模にはならぬようにしてもらえたら……本当に助かる」
「ど、努力します」
そう、クロノアさんが懸念しているのはシロさんが異世界の神と交流を持った結果得るであろうものが何かという部分だろう。
いままでマキナさんぐらいとしか交流が無かったのに、それが急に広がったというのであれば何らかの目的があるのだろうし、それが俺に関わっている可能性は……結構……いや、相当に高そうな気がした。
クロノアさんの元で若干不安になる話は聞いたものの、とりあえずは気を取り直してライフさんの神殿を訪れた。
ライフさんも俺の来訪を歓迎してくれて、クロノアさんの時と同じように少し雑談をした。内容としては主にシアさんと話していた、神族ともっと交流の幅を広げたいなぁというものだ。
「……なるほど、ミヤマさんの交流が広がるのはとても素晴らしいことですし、神族にとってもシャローヴァナル様の祝福を受け、恋人となったミヤマさんと交流を持てることは栄誉と言えるでしょね」
「それはちょっと大げさな気もしますが……まぁ、具体的になにかを考えてるわけではなく、機会があれば知り合えたらなぁという感じです。ライフさんのところの豊穣神さんとかも、結構話題に聞くので機会があれば会ってみたいとは思いますね」
「なるほど、確かに彼女は比較的接しやすい性格をしているのでいいですね。では、少々お待ちを」
「……え?」
ライフさんはそう告げた後で、空中に円を描くように手を動かす。すると、その部分の空間がブレる様に動いて、何度か見かけた人の好さそうな……豊穣神さんの顔が映った。
『はぇ? 生命神様? なにか御用でしょうか?』
「直ちに私の神殿まで来るように」
『……え? いまから、ですか? しょ、少々お時間をいただければ……』
「そうですね。貴女にも都合があるでしょうし……では、『30秒』の猶予を与えましょう」
『ひぃんっ!? ささ、30秒!?』
「……あと25秒」
『あばばば……』
豊穣神が青ざめた表情を浮かべた後でその通信映像っぽいものは消え、それより15秒後に必死の形相で豊穣神さんが神殿に駆け込んできた。
シリアス先輩「クロノアや快人も、まさかシロの方から連絡を取ってるんじゃなくて、ネピュラ関連で向こうから交流を持とうとしてきてるとは思い至らないだろうな……そして、見るからに不憫なのが……」