ネオ・ベビーカステラブレンド②
コーヒーのブレンドに意見が欲しいといったクロは、テーブルの上に瓶に入ったコーヒー豆をいくつか並べていく。この状態のコーヒー豆をあんまり見る機会はなかったので興味深い。
瓶入りでコルクで蓋してあるコーヒー豆はお洒落でいいなぁ。
「焙煎とかに拘る人も居るけど、商会で販売するための品だから基本的には焙煎済みのものだね。焙煎前の豆の状態で買うこともできるけどね。あと豆の状態と既に挽いた粉の状態で販売する予定だよ」
「俺あんまりコーヒーには詳しくないんだけど、なんで豆と粉で分けて売ってるの?」
「理由はいくつかあるけど、まずそもそもなんで粉状に挽くかっていうと抽出しやすくするためだね。表面積……要するにお湯を注いだ時にお湯と接する面を増やすことで、抽出しやすくなるんだよ。だけど、表面積が増えると酸素との接触面も増えるから、酸化が進んで劣化して苦みや風味が落ちちゃうんだよ」
「なるほど、だから劣化しにくい豆の状態で売ってるのが多いのか……」
「うん。でも豆を挽くのも結構手間だし、挽き方で味の差も出ちゃうから手軽さ重視で粉の状態で販売してるものも多いね。粉の状態でもだいたい10日ぐらいは持つしマジックボックスがあれば劣化は気にしなくていいからね」
確かにマジックボックス持ちであれば、劣化とかを気にしなくていいので手軽で飲みやすい粉状のものを買うのが楽なのか……。
味にこだわりがある人はマジックボックスがあっても豆で買ってそうだが、俺が買うとしたら粉状か……あるいはすでに淹れてもらったものを保存しておくかだなぁ。
「クロってコーヒーに詳しいんだな」
「まぁ、ボクの知識はシャルティアやアインに教えてもらったものがほとんどだけど、ベビーカステラに合うブレンドを見つけるために結構勉強したからね。ちなみに豆の挽き方によっても味に違いが出るんだよ」
「細かいとか荒いとか、そんなかんじ?」
「うん。細かく挽くと濃く苦め、荒く挽くと薄く軽めって感じだね。極細挽き、細挽き、中細挽き、中挽き、粗挽きの5つが一般的だね。ちなみにボクの商会で粉状態で販売するときは、一番オーソドックスな中細挽きにしてあるよ」
「へ~」
やはりベビーカステラに関わることだからかいつも以上に饒舌というか、どこか誇らしげに説明する姿がなんとも可愛らしい。
「……けど、紅茶好きのイメージが先行してたけど、アインさんってコーヒーも詳しいのか……」
「アインはコーヒーも完璧だね。けど、アイン自身の好みとしては紅茶の方が好きなのと、うちの家族内でも紅茶を好む子が多いから、基本的には紅茶だね。ツヴァイとかフュンフはコーヒーが好きだけどね」
「あ~その辺はイメージ通りかも、トーレさんとかラズさんは苦手そう」
「正解、そのふたりはコーヒーはあんまり好んでないね。トーレはそこまでじゃないけど、ラズは苦いのがあまり得意じゃないからね。カフェオレとかにすれば大丈夫みたいだよ」
その辺りは結構イメージ通りである。トーレさんはドヤ顔でコーヒー飲んで……思った味と違って顔しかめてそうなイメージがある。
「あとついでに六王で言うと、アイシスはラズと同じく苦いものは好きじゃないからコーヒーはほぼ飲まないね。リリウッドはそもそも水以外ほぼ飲まない。メギドは紅茶とかコーヒー飲むなら酒を飲むって感じで、シャルティアはどっちも好きな感じだね。あと最近、マグナウェルがコーヒーを気に入ってるらしいんだ」
「え? そうなの? ああ、飲食できる分体を手に入れたからか……」
「うん。色々食べたり飲んだりしてみてたんだけど、コーヒーがかなり気に入ったみたいでいろいろ勉強してるらしいよ」
けど言われてみれば、マグナウェルさんってコーヒーを好みそうなイメージがある。分体の姿も老紳士って感じの風貌だし、コーヒー飲んでる姿がかなり似合いそうだ。
「っと、話がそれちゃったけど、そんなわけである程度候補は作ってきてるんだよ。それでカイトくんにはそれを飲んでもらって意見を出してもらえたらなぁって」
「なるほど、飲み比べって感じかな? 了解、何種類ぐらいあるんだ?」
「今回は『37種類』だね」
「…………え?」
ちょっと待ってほしい。サラっと言われたんだけど……え? 俺これから、コーヒー37杯飲むの? お腹タプタプにならない?
シリアス先輩「細挽きが味が濃くなるのは、作中でクロが言った通り、お湯との接地面が増えて抽出しやすくなるため……つまり単純に量を増やしても濃くなるわけだ。例えば荒く挽いて量を多めにすることで、苦みやコクをしっかりと出しつつ後味のいいコーヒーも淹れられる。けどその辺は調整も結構シビアで難しかったりするから、いろいろ試してみて自分の好みを見つけるのもいいぞ!」
???「そういえば、コーヒー好きでしたねこの先輩……」