ネオ・ベビーカステラブレンド①
初めての船上パーティ主催から数日経ち、準備ではいろいろ忙しくしていた反動かのんびりと過ごしていた。
今日は時間に余裕があったクロが遊びに来ており、一緒にのんびりしていたのだが……ふとクロがなにかを思いついた様子で立ち上がった。
「あっ、そうだ! カイトくんにも意見を貰おうと思ってたものがあるんだよ!」
「うん? 俺の意見?」
「うん。カイトくんもボクがコーヒー専門の商会持ってることは知ってるよね?」
「知ってる。というか、クロはたいていの商会は持ってそうだけど……まぁ、それはともかくとして、ベビーカステラブレンドとか売ってる商会だろ?」
クロの言うコーヒーの商会は、普段クロがベビーカステラを持って遊びに来る際に一緒に持ってくるコーヒー……ベビーカステラブレンドを販売している商会で、雑誌で知ったのだがコーヒー関連の商会ではシェアナンバーワンを誇る商会とのことで、他にもいろいろな種類のオリジナルブレンドを販売しているらしい。
「うん。丁度そのベビーカステラブレンドに関する話で、ベビーカステラブレンドはかなり前に販売して長く愛されてるブレンドでボクも気に入ってるんだけど、そろそろ改良型というか第二弾を作りたいなって思ってるんだよ」
「え~と、それはつまりベビーカステラを食べる際に飲むのに適したコーヒーブレンドってテーマで、新しいブレンドを作るってこと?」
「そう、その通り! 無限の可能性を持つベビーカステラは日々進化してるわけだし、やっぱり一緒に飲むコーヒーも同じように進化しなきゃいけないと思うんだ!」
「お、おぅ……」
しまった……ベビーカステラ関連の話だったか……興味ある感じの反応を返しちゃったから、クロのテンションが上がって乗ってきてしまった。
話の流れから察するにその新ブレンドに関する意見を出してほしいってことだと思うんだけど……できればそんなに長い話にならない感じのがいいなぁ。
「とはいえ、ベビーカステラブレンドはボクもかなり拘って作ったから、アレ以上ってなると難しくて、結構長くコーヒー豆の品種改良とかしてたんだけど、なかなかこれって言うのが出来なかったんだよ」
「まぁ、品種改良とかって難しそうだもんな。けど、今回そういう提案をしてくるって言うことは、いいのができたってことなのか?」
「うん。というか、結構最近なんだけどボクも成長してるみたいでさ、出来ることが増えたんだよ。前は魔法とかはともかく、神の権能級のレベルになると破壊系統に偏ってたんだ。元々シロがそういう風に力を分けたからだろうけどね……まぁ、シロはもう完全に元の力を取り戻してるし、ボクもここ最近ググっと成長してるんだよ」
「う~ん、それはつまり半分になってた力が完全な状態に戻ろうとしてるみたいな感じなのかな?」
「そうだね。準全能級って感じのレベルだったボクの力が全能級に近づいてる感じなのかな? まぁ、いままでよりもいろいろ権能に近い……世界の理に干渉できるような力も使えるようになってきたんだ」
ある意味ではクロとシロさんは表裏一体な存在なわけだし、シロさんが成長したことでクロの方も影響を受けて成長しているとかそんな感じなのかもしれない。
まぁ、ただ、その話はいまの本題とは関係が無いのだろう。
「……つまり、その力でコーヒー豆の品種改良が上手くいったって感じか?」
「うん。まぁ、ちょっとズルしてコーヒー豆自体を新しく作ったりもしたんだけど、いい感じのコーヒー豆が結構できたから……そろそろネオ・ベビーカステラブレンドを作ろうと思うんだ! となるとやっぱり、ベビーカステラ愛好会の仲間であるカイトくんの意見も聞きたいと思ってね」
究極のベビーカステラを作ろうとしてた時も思ったが、所属した覚えのない謎の愛好会に所属させるのは止めてほしい。
いや、確かにベビーカステラを食べた数は並みの人を大きく上回るかもしれない。なにせクロが毎日のように持ってくるから……なんならベビーカステラの食べ比べをして違いが分かるレベルではある。
…………あれ? 本当にベビーカステラ愛好会員みたいになってないか俺……メイド界に組み込まれたり、ベビーカステラ愛好会に所属していたり……なんとも頭の痛い思いである。
シリアス先輩「……はぁ……はぁ……ひどい目に合った。本編もそうだが、それ以上にあの狂神のせいで……アイツ、私を甘味製造機にしようとしてないか……と、ともかく、私は乗り切ったんだ! イルネスのターンは終わったんだ!!」
???「……(シリアス先輩がこう言ってるってことは、クロさん関連の話挟んだ後でなんかありそうですね。だいたい、恋人たちは関係が進展した後にデートしてますし……)」