イルネスの相談④
時間が無くてやや短めです。
イルネスさんの悩みはある程度理解できた、ただまだ本題だと言われればそうではないような気もする。そもそも今回の相談は自分の気持ちを言語化できない的な感じの内容だったはず。ここまで聞いた限りでは問題なく言語化できてるように思えるし、こちらにもしっかりと伝わってきてる。
「……イルネスさんは、自分の気持ちを言語化できないことに悩んでるんでしたっけ?」
「はいぃ。頭では~理解しているつもりなんですぅ。私に芽生えている感情がどういうものなのかぁ、その結果としてなにを望んでいるのかぁ……ですが~それを言葉をして表現するのが難しいですぅ。いえ~或いはぁ、及び腰になっているのかもしれませんねぇ。いままではそれでいいと確信していたはずの環境を~大きく変えることになるかもしれない言葉を~口にすることにぃ、怯えているのかもしれませんねぇ」
「その気持ちは分かりますね。いまの関係心地いいからこそ、それが変わってしまうのが怖いって……」
告白がそれに近い気もする。いやまぁ、ここまでの話の流れがすでに告白のようなものだと言われれば、それはその通りなのだが……イルネスさんにしてみれば、俺を愛するというか、あれこれ献身的に愛情を注ぐことは当然のことでそこに迷いはない様子だが、自分自身でなにかを求めるのには戸惑いが強い。
「そうですねぇ。目指すゴールはハッキリしているはずなのにぃ、そこにたどり着く道筋がぁ、上手く思い描けないと表現するべきでしょうかねぇ? ただ~同時にぃ、自分でちゃんと~答えを出したいと思う気持ちもありますぅ。戸惑いも大きいですがぁ、確かにそれは~私が望んだものですからぁ……自分自身がどうしたいのか~これから先どうありたいのかぁ、しっかり考えて答えを出したいですねぇ」
「なるほど……今回俺に相談したのは、考える参考にって感じですかね」
「その気持ちも~確かにありますがぁ……どうでしょうねぇ? これも~なかなか説明が難しいですがぁ……カイト様に私の考えを知ってもらいたかったというべきでしょうかぁ?」
イルネスさんは珍しく戸惑うような表情を浮かべて首をかしげていた。いつも迷いなく堂々と落ち着いている印象のイルネスさんだが、本当にいまの恋愛云々に関しては戸惑っているようすで、発する言葉にも明らかに迷いが感じられた。
自分でしっかり考えて答えを出したいと言っている以上、相談に乗っている側の俺としてはイルネスさんが答えに辿り着きやすいようなヒントを出すのが望ましいと思うのだが……それはそれで難しい。
「正直、俺にできるアドバイスは少ないかもしれないですが……あ~でも、ひとつだけ言えることはあります。もし仮に、今俺が考えてることが自惚れじゃなくて……イルネスさんが出そうとしている答えが予想通りのものだとしたら、それを聞いたときに……えっと……イルネスさんを悲しませたりする結果にはならないと思います」
「カイト様ぁ……」
「なので、焦らなくても大丈夫だと思いますよ。これからどうしたいか、未来にどういう風になりたいか、ゆっくり考えても大丈夫です」
「……くひひ……カイト様は本当にぃ……」
俺の言葉を聞いたイルネスさんは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべこちらを見て、どこか愛おし気に目を細めていた。
シリアス先輩「……つまりこれ、アレだろ? 快人にちゃんと告白したいけど、うまく自分の気持ちを言語化できなくて悩んでるって……もう実質告白だろ!? そして、快人もその返答だったら、もう両思いでカップル成立じゃねぇか!?」