イルネスの相談①
打ち上げパーティが終わり自室……魔導船の俺用に割り当てられた部屋に戻って、まずは着替えをする。パーティ用に礼服を着ていたので、流石に少しラフな格好に着替えたい。
とはいえイルネスさんが来る予定なので、あまりラフすぎず……いつものシャツとズボンでいいか。パーカーは別に着る必要はない。
できれば軽くシャワーとかでも浴びたい気分ではあるが、イルネスさんがいつ来るかわからないのでそういうわけにも……と思っていると、イルネスさんからハミングバードが届いた。
互いに軽く汗を流したり着替えたりする時間があったほうがいいので、1時間ほどしてから伺うと書いてあったので、シャワーを浴びても問題はなさそうだ。
シャワールームはオーナー室に備え付けられているので、それを利用して軽く汗を流す。いや、実際このオーナー室はかなり広くて豪華な感じで、スイートルームって雰囲気で旅行に着たような気分で楽しめる。
次にこの魔導船を使うのがいつになるかわからないし、いまのうちにしっかり堪能しておこう。
シャワーを浴びて服を着て、部屋の中を軽く見る。イルネスさんと話すなら、ソファーの方がいいかな? 対面式になってて、テーブル挟んで向かいに座れるし……。
そんなことを考えつつ軽く準備をしていると、あっという間に1時間が経過してイルネスさんが部屋に来たのか控え目なノックの音が聞こえた。
「は~い……どうぞ」
「お邪魔しますぅ」
やってきたイルネスさんは、落ち着いた雰囲気の私服……黒色でところどころに薔薇の刺繍の入ったワンピースを着ており、メイド服や一緒に出掛けた時に見た私服と比べてややラフな格好だった。
俺と同じくシャワーを浴びた後だからか、ほんのりとシャンプーの香りがして、イルネスさん自身の佇まいや雰囲気も相まってやはり大人の女性感が強くてドキドキする。
「ソファーで大丈夫ですかね?」
「はいぃ。大丈夫ですよぉ……では~失礼しますぅ」
「はい。なにか飲み物でも用意しますか?」
「それなんですがぁ、実は~ネピュラから私とカイト様で飲むようにとぉ、ワインを貰ったので~それを持ってきましたぁ」
そう言いながらイルネスさんが取り出したのは、どこかお洒落な雰囲気の木のボトルだった。容器が木とは珍しい。多分世界樹素材を使って作った容器なのだろう。
状態保存の魔法があるからこそのお洒落なボトルと言えるかもしれない。いや、そもそも世界樹の木をワインボトルの形に成型するのが難しそうだが……その辺りはさすがネピュラである。
「というか、容器がその感じってことは……ワイン事態もネピュラが作ったんですかね?」
「はいぃ。私と~ネピュラでぇ、いくつか~ワインも作ってみていたのでぇ、その一環で作ったものだと思いますよぉ」
「なるほど……というか、ワインも作ってたんですね」
「まだまだ素人仕事なのでぇ、もう少し完成度を上げてから~伝えるつもりでしたぁ。他にも~いろいろなことに挑戦していますねぇ。ネピュラは~好奇心旺盛ですからねぇ」
「あはは、まぁ、ネピュラとイルネスさんが楽しくやれてるならなによりですよ。また設備とかで必要なものとかがあれば言ってくださいね」
「ありがとうございますぅ」
そうか、次はワイン造りか……そういえば、コーヒー豆も作ってみたいとか言ってたので、そちらも進めているのかもしれない。
「……あれ? でも、ブドウの木とかは無かった気が……」
「時空間魔法を使って亜空間を作って~そちらで育てていますねぇ。私は~空間魔法はそこまで得意ではないのですがぁ、ネピュラは~かなり得意な様子でぇ、実験的に育てているものも含めてぇ、いろいろなものを~亜空間で育てていますねぇ」
「そうなんですね。やっぱりネピュラは凄いですね」
時空間魔法まで使いこなしているのはさすがネピュラというべきだ。少々驚きはしたが、それでもネピュラならできても不思議ではない。
いろいろ実験的に育てているということなので、そのうち紹介してくれるだろうから、それを楽しみに待っておこう。
シリアス先輩「相変わらずの親バカ、ネピュラに対して判定がガバガバすぎる」