表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1935/2394

パーティが終わって④

~どうでもいい豆知識~

なぜ大きな川の上という空間かというと、カナーリスの名前の由来がラテン語で『運河』を示すcanalisなので、それを匂わせるシチュというだけ。



 ラグナが落ち着くのを待った後、ジェーンことカナーリスはラグナの記憶を見る。


「……ふむ、リリアさんという方に置いて行かれるというのが、最近では特に大きい悩みですかね?」

「……神様に隠し事はできませんね。はい、確かに仰る通りです。リリア嬢とはいまは月に一度ほど模擬戦をする仲で、切磋琢磨しながら互いに成長……いえ、取り繕っても仕方ないですね」


 相手は全能の神でありラグナの記憶も見ている以上隠し事は意味をなさない。そう思ってしまえば心の奥に抑え込んでいた気持ちも素直に吐き出せる気がした。

 神界での戦いを経てリリアが大きく成長し、ラグナと互角に渡り合えるレベルに到達した時、ラグナは本当に嬉しかった。

 ラグナは人界最強と呼ばれていた通り、人族の中で比類する者がいないレベルの強者だった。もちろん魔族なども含めればラグナと互角ないし格上の存在はそれなりに居る……だが、人族という括りで言えば、リリアは初めてラグナと同じ領域にまで到達した存在といえる。


 それが本当に嬉しく、いままで以上に鍛錬に打ち込み、抜きつ抜かれつのような状態を楽しんでいた。


「……リリア嬢とワシでは条件がまるで違うのです。リリア嬢はまだ全盛期も迎えていない発展途上であり、まだまだ遥かに伸びしろがあり、凄まじい速度で日々成長しています。ですが、ワシの方は違います……おおよそ1800歳、魔族や神族と比べれば若輩ではありますが、それでも長らく鍛えてきました。人間族ほどではありませんが、人族は全体的に成長速度に優れていますので、ワシも伯爵級クラスまで実力を伸ばしてこれました」

「……」


 ジェーンは口を挟むことなく静かにラグナの言葉を聞く、話を途中で遮ったりしないように……。


「……もうずいぶん前から、己の成長限界とでもいうべきものを感じています。伸びしろが無いとは言いません、成長できる要素が無いとは言いません。ですが、そう遠くないうちにワシの成長は止まり、リリア嬢の成長速度に付いていけなくなる……いえ、もう既に付いていけなくなっています。経験と技術で誤魔化してはいるものの、それもそろそろ限界でしょう」

「それが、焦燥感に似た悩みをもたらしていると?」

「はい。贅沢な悩みであるのは自覚しています。ワシとて、人族の歴史の中でも飛び抜けて才能に恵まれた存在でしょう……ただ、やはり……悔しいですね。せっかくできた好敵手に、この先ずっと差を広げられるだけというのは……」


 それがいつ頃からだったかは分からないが、ラグナは漠然と己の限界を感じていた。鍛えて、鍛えて、鍛え切った先に到達する壁……認めたくはなかった。もうすぐ己は成長を止めてしまうのだと、その事実を認めたくなくてさらに鍛錬に熱を入れた。

 そして熱を入れれば入れるほど、己の成長限界が近いことをより鮮明に感じていた。かといって鍛錬を止めれば、それこそあっという間にリリアに置いて行かれる。見えている壁に向かって、それでも突き進むしかなく、それが最近のラグナにとっての一番大きな悩みだった。


「なるほどなるほど、確かにライバルに置いて行かれてしまうのは寂しいですよね。じゃあ、やっぱりそれにしましょうか!」

「……え?」

「いえ、お礼ですよ。そうですね……さすがにリリアさんレベルにまで才能や成長速度を高めるには、貴女の存在そのものを作り替える必要が出てきますので……そうですね。貴女の成長限界を少し引き伸ばして、成長速度をちょっと上げるぐらいなら大丈夫でしょう。ちょっと待ってくださいね、いちおうシャローヴァナルに許可をとるので……はい……ええ、そんな感じで……え? この世界にはない恋人同士で一緒に食べる物? そりゃ作れますが……ええ、まぁ、ソレでいいなら問題ないです。はい、じゃあ、そんな感じで……」


 あまりにもアッサリとラグナの悩みを解決すると告げたあと、ジェーンはこの世界の神であるシャローヴァナルに話を通して許可を取る。

 そのあとで、相変わらず無表情なままで優しい声で告げる。


「ではでは、問題なく許可も取れたのでパパっとやっちゃいますね……はい、完了です」

「へ? あ、えっと……」

「成長限界の引き上げと成長速度の調整は完了です。たはぁ~実感し辛いお礼で申し訳ない! おまけと言ってはなんですか、自分が作った槍もプレゼントしますね。あっ、別に特別な効果とかは無くてとにかく丈夫で魔力を通しやすい感じです。たはぁ~凄い神器とかじゃなくて申し訳ない。その辺になるとまたシャローヴァナルの許可とか必要なので、ご容赦を!」


 無表情のままで明るく告げるジェーンに対し、ラグナは思考が追い付かないのかぽかんとした表情を浮かべていた。




【ラグナの成長限界が少し(全能神基準)上がった】

【ラグナの成長速度が少し(全能神基準)上がった】

【ラグナは丈夫(宇宙破壊規模の攻撃でも破損しない)で魔力通しやすい(伝達率100%)の槍を手に入れた】


シリアス先輩「全能神基準ってのも恐ろしいけど、より恐ろしいのはそれでもリリアの方が才能も成長速度も上であるという事実……さすが世界のバグ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そんな化け物の胃に、直接ダメージを入れる化け物が居るって本当ですか
[一言] 伝達力100%ということは第二種永久機関じゃないですかー! とはいえ神から見れば些事なんだろうな
[良い点] そうかぁ・・・ラグナさんそんなことを考えていたのか。そりゃ鍛錬必死にするよね。 これでもう少しの間リリアさんとライバル関係を続けられるようになった・・・はいいけど思考が追い付いておられない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ