パーティが終わって①
船上パーティが終わり、これですべてが終了で帰って休もう……とはならない。参加者を見送ったとしても主催側の俺達には、後片付けなどがある。
会場内の片付けなどは主にメイドたちがやってくれるので、俺は何をするかというと……打ち上げの準備である。
今回はメイドの方々にも協力してもらっている訳なので、労をねぎらう意味でもこの会場の一部を使って主催側での打ち上げを行う。
パーティに出した料理もあれば店で購入した料理などもある……まぁ、マジックボックスから取り出して並べるだけなので準備もなにもないが……あとちなみに、メイドさんたちにもそれぞれ部屋を用意しており、今日はこの船に泊まってもらっても大丈夫だし、転移魔法で帰るのもOKである。
なお、俺はこのまま魔導船で一泊して明日帰る予定だ。
「ミヤマ様、お疲れさまです。片付けの人手は十分に足りているようなのでお手伝いしますよ」
「あっ、エミリーさん。ありがとうございます。じゃあ、飲み物とかを並べてもらえますか? 自分で注ぐ形でやろうと思うので」
「畏まりました」
手伝いを申し出てきてくれたのは、今回派遣メイドたちのまとめ役を務めてくれたエミリーさん……体のスーパーメイドである。
いや、実はエミリーさんとはメイドオリンピアの審査の際に自己紹介はしてたんだが、そのあとで偶然会って連絡先を交換したアリアさんことアレキサンドラさんと違って、エミリーさんとはハミングバードの連絡先等を交換していなかったので、招待状の送り先が分からずに迷っていた。
なのでラグナさんを通じて招待状を出そうと思ったのだが、それより早く世界メイド協会の推薦という形で紹介されてきた。いや、本当に早かった……聞いた話では本人が希望したとのことで、とにかく即応募があったみたいだ。
いちおう面接の際に招待状を出して招待客として呼ぶことも提案したのだが、本人がメイドとして働きたいということと、メイドたちを統率できるリーダー的な人がいると安心ということもあって働いてもらうこととなった。
「エミリーさんは大丈夫ですか、見た感じ疲れた雰囲気はないですが……」
「ええ、まったく問題ありません。打ち上げが終わった後は、王宮に戻ってそちらで仕事をする予定です」
「えぇぇぇぇ……きょ、今日も普通にハイドラ王国のメイド長としての仕事があるんですか?」
「ええ、仕事が大好きなので」
「な、なるほど……」
エミリーさんは無尽蔵のスタミナを持つメイドという話は聞いていたが、実際に目にするとすごい。今回世界メイド協会から派遣されたメイドたちは、基本的に本職を休んだ上で参加しているのだが、エミリーさんはずっとハイドラ王国王宮のメイド長の仕事もやりながらである。
ラグナさんにこちらを優先していいという許可を得て、基本的にこちらのパーティ準備とかを優先してくれているのだが、終わったら転移魔法で王宮に戻って普通に仕事をしているらしい。
ワーカーホリックというのか、イルネスさんとかもあんまり休んでるところを見ないが、エミリーさんは本当に一切休んでないのではと思うほどである。しかし、本人に疲れた様子は一切なく、なんならいまもパーティ開始時より元気な雰囲気で、流石は体のスーパーメイドというところだろう。
なおラグナさんにも確認したのだが「あ~いい、アイツは好きにさせておれば、本当に一切休まんから。しかも本人が好きでやってるから、もうほったらかしとけばよいぞ」ということを疲れた感じで言っていた。
なおエミリーさんは小麦色の肌に赤毛のサイドテールの女性で、見るからに健康そうというか身長も190cmぐらいあるし、佇まい的にも凄く鍛えられてそうな雰囲気がある。
ちなみに小麦色の肌は別に日焼けとかではなく元々そういう色らしい。高身長なアスリート系美女という雰囲気だ。
「まぁ、でも、もし疲れてたりしたら遠慮なく言ってくださいね。どうか無理だけはしないように」
「お気遣いありがとうございます。ですが気持ちいい……ああいえ、もちろん私も多少の疲労感を覚えたりすることもありますが、いまは心身ともに充実していますので大丈夫です」
ニコニコと明るい笑顔を浮かべるエミリーさんは人の好さが伝わってくる感じで、明るく優しい人みたいな感じである。ただ、かつてはラグナさんのライバルだったりもして実力は相当みたいだが……。
【エミリー】
ハイドラ王国王宮のメイド長を務め、世界に四人しかいないスーパーメイドのひとりで体のスーパーメイドと呼ばれる高身長の女性。
明るく人のいい性格で、ともかく仕事が大好きで常に仕事をしており、その無尽蔵のスタミナから疲労しているところを誰も見たことが無いと言われるほどである。
……しかしてその正体は……『疲労に快感を覚える自己完結型のドM』である。疲労感をにより快感を覚え、その快感によって肉体や細胞が活性化し疲労を回復するため、疲れるどころか働き続けるほどに元気になっていく。
かつてはラグナのライバルでもあったため、ラグナは何度も戦った経験があるのだが、ラグナ曰く「短期決戦で決めないと、時間が経てばたつほど疲弊するこちらに対して、向こうはどんどん元気になるので長期戦は地獄」とのこと……。
基本的に常に働いており、ラグナが強制的に休日を与えた際には、別の場所で日雇いの仕事をしていた。