船上パーティ㊿
まぁ、なんだかんだこの状況で会場内に残って窓から花火を見るという感じの人はおらず、全員デッキに移動して花火を見ることになった。
パーティ開始時点はまだ明るかったが、今はすっかり日も沈んでおり花火にはいいロケーションだ。
「ご主人様、お疲れさまです」
「アニマの方こそずっと指揮をってくれてたんでしょ? お疲れ様……あとはもう本当に挨拶して見送って片付けだけだし、少し気は楽だな」
「はい」
花火が始まるのを待っていると近くにアニマが着たので、互いにお疲れさまと声を掛け合う。アニマは基本的にずっと裏方で指揮を執ってくれており、司会進行とかでちょくちょく見かけていたキャラウェイや、美術品の移動などを行っていたイータとシータと違って、パーティ中にはほぼ見かけなかった。
そんな風な話をしていると、花火が上がり始めた。大きな音と共に夜空に色とりどりの花火が現れ、その美しさに目を奪われる。
遮蔽物などなにもない海の上ということもあって、かなり綺麗に見えるので中々に贅沢だ。いや、そもそも、結構な沖まで出てきてるので、普通なら花火を上げられるような場所ではないので、神の力を使った実際にかなり贅沢な催しである。
「素晴らしい光景ですね。花火自体は見たことがありましたが、自分が知るものよりかなり鮮やかで形なども趣向が凝らされているように思えます」
「俺の居た世界では、花火大会とか……花火を見ることをメインとするお祭りとかもあって、かなり人気だったね」
今回はマキナさんも関わってることもあって、結構本格的な花火であり、昔行った花火大会を思い出した。チラリと隣を見て見ると、アニマも楽しんでる様子で視線を空に向けて目を輝かせていた。
まぁ、こうしてせっかく隣に居るわけだしと思って、そっとアニマの手を握ると……アニマは一瞬ビックリしたような表情を浮かべたが、すぐに微笑みを浮かべて指を絡めるようにして手を繋いできた。
それ以上言葉は無く、ただふたり並んで綺麗な花火を見続けていた。
花火を見た後は、パーティ会場に戻って終了の挨拶である。終わりにするのであれば、花火を見終わって一息ついたこのタイミングが一番ということで、俺は拡声魔法具を持って壇上に上がる。
『改めまして、今日は船上パーティに来てくださってありがとうございました。初めてのパーティ主催ということもあって至らない部分もあったかと思いますが、楽しんでもらえたようなら嬉しいです。ただなんだかんだで、あれこれとパーティの企画をしたりというのも楽しかったので、もしかしたらまたこういったパーティを主催することがあるかもしれません。その時は予定が開いているようなら、またご参加いただけたら幸いです』
挨拶自体は本当に簡単なものであり、数分程度で終わり、最後に会場から出る人たちの見送りを兼ねて、お土産を手渡していく。
内容としてはニフティの紅茶の試供品とネピュラとイルネスさんが今日のために用意してくれた特別ブレンドが入っており、いわゆる紅茶の茶葉セットという感じだ。
カップなどの商品も考えたのだが、流石に持ち帰りを考えると陶磁器は割れる危険もあるし、単純にサイズが大きくなると不便だろうということもあって茶葉セットになった。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ……こ、この中に、ネピュラ様の秘蔵の茶葉が使われたブレンドが……」
「アイン、ここで開けちゃ駄目だからね。家に戻るまで我慢だよ」
「うっ……はい」
お土産を受け取り、一瞬血に飢えた肉食獣かと思うような目をしていたアインさんだったが、クロに釘を刺されてしゅんとした様子で頷いていた。
やっぱりというか、確実にパーティ中に大人しかったのはクロに言われていたからだろう。
「クロもありがとう」
「ううん、こっちこそ楽しいパーティだったよ。カイトくん主催だと、あんまり立場とか気にせずに気楽に楽しめるからいいね。また開催する時を楽しみにしてるね」
なるほど、俺は対外的な意味ではどこの勢力にも属さないという立場だからか、俺が主催したパーティも比較的それぞれの立場を気にせず楽しめたようだ。
確かに普通のパーティであれば、六王であるクロとかは重要な貴賓であり、いろいろ気を使われる立場になるのだろうし、クロとしてはそういう窮屈なのはあまり好きではないだろう。
そういう意味であれば、俺が主催するパーティというのも需要はあるのか……本当にまたしばらくしたら、第二弾を考えてみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えつつ、ひとりひとりにお土産を渡して軽く言葉を交わしていき……俺が初めて主催したパーティは終了となった。
シリアス先輩「よし、終わりだな。最後にちょっとイチャイチャもあったけど、このぐらいなら大丈夫。さっ、次のエピソードに行こう」
???「パンデモニウムがネピュラさんに貰ったワイン持って訪れるイベントが残ってますよ?」
シリアス先輩「あっ……あぁぁ……そ、そうだった……」