船上パーティ㊱
時間が取れなかったので短めです
リスティさんとニアさんと少し話した後は、再び挨拶回りを再開して移動していたのだが、そこでふとある人物が壁際に佇んでいるのを見つけた。
背中に翼がある関係上、背中の大きく開いた漆黒のドレスに身を纏い、ワイングラスを片手に佇む姿は絵になる……そう、アメルさんである。
例によって全身真っ黒に固めているが、見た目がいいので普通にかっこよくも見える。
パッと見ると、孤高というか、静かにワインを楽しんでいるように見えるのだが……あれ、たぶん違うな……なんとなくの予想ではあるが「おかしいなぁ、結構話しかけてるのに会話が長続きしない」みたいなことを考えてると思う。
こう、なんというか外見と内面が違うというか、周囲の印象と中身が違うのはロズミエルさんに近いところがあるのだが、アメルさんとロズミエルさんにはそれなりに大きな違いがある。
ロズミエルさんは本人が人見知りで臆病なことも相まって、初対面の相手やあまり親しくない相手だと表情が固まり緊張で喋れなくなるため、それを誤解されて避けられたりするタイプだ。
対してアメルさんの方は、結構社交的であり自分から積極的に声をかけに行くことが多い。実際ハーモニックシンフォニーの打ち上げでもアメルさんの方から声をかけて来たし、一緒に出店をしたときにもお客さんによく話しかけていたりと、コミュニケーションは積極的に取りに行くのだ。
ただアメルさんはその中二病チックな言い回しが難解であり、そのせいで相手に意図が正確に伝わらず、結果として気難しいという評価を受けている。
実際リリアさんもそうだが、有翼族が住むアルクレシア帝国の皇帝であるクリスさんも、アメルさんが気難しいと思っており、コミュニケーションは取ってくるのに会話を続けるのが困難というタイプだ。
なのでたぶん、今回のパーティでも結構積極的に話しかけて多少は会話をしているのだろうが、それでも長続きがせずにひとりグラスを傾けているのだろう。
そんな風に考えながらアメルさんの方に向かうと、少ししてアメルさんは近づいてくる俺に気付き……パアァっと輝くような笑顔……それはもう心底嬉しそうな表情へとみるみる変わっていった。
気のせいかもしれないが、アメルさんの背後にポメラニアンの幻影が見えた気がする。
「盟友っ!」
「こんにちは、アメルさん。今日は来てくれてありがとうございます」
「ふっ、盟友の誘いとあれば地の果てにでも駆け付けるさ。煌びやかな宴、星空の如き輝き、しかして居並ぶ極星たちは猛々しく、どこかサバドのような雰囲気も併せ持っているね」
「あ~やっぱり、アメルさんでも恐縮する相手とか多いんですね」
「うん、やっぱ六王様とかになると緊張するね。もちろん何度か会ったことはあるけど、そこまで親しくないから不安……んんっ!? まぁ、ボクも種族を背負う者であり、半端な態度では臨めないのさ」
時々素が出るところがアメルさんらしいというか、相変わらず微笑ましい可愛らしさのある方である。
シリアス先輩「ロズミエル=チワワ、アメル=ポメラニアンか……アニマはなんだろう?」
???「尻尾振って主人に駆け寄ってくるゴールデンレトリバーとか?」




