船上パーティ㉞
エデンさんのおかげで挨拶回りが非常にスムーズにできるようになったことで、意気揚々と挨拶回りを再開した。
意識を集中してみると、まだ挨拶をしていない人が複数人固まっている場所があり、最初はそこに行こうと考えた。あくまで挨拶してない人の場所が分かるだけで、だれがどこに居るかまでは分らないので、誰なのかは近付いてみるまで謎である。
三人固まってるみたいだが、距離的にそろそろ見えてくるはず……あ、なるほど、ティルさん、エリアルさん、ブロッサムさんの三人か……。
「あっ、カイトクンさんです!」
「こんにちは、ティルさん、エリアルさん、ブロッサムさん」
リリウッドさんの元に行った際にはちょうどいなかったメンバーであり、あの時の話だと食事に行っているとのことだったので、食べ終えて移動しているところだったのだろう。
嬉しそうに笑顔を浮かべて近づいてくるティルさんに微笑み返しつつ挨拶を返す。
「挨拶……つまりは、こんにちはカイト。感謝……つまりは、招待ありがとう」
「おお、これはマスター! この度は素晴らしい席に呼んでいただけて、拙者は感激しております! アレが噂に聞くスシテンプラスキヤキなのですね!」
「……いや、寿司はありましたが、てんぷらとすき焼きは……」
寿司は確かにあったが、てんぷらとかすき焼きはない……あ~でも、串揚げはあったのでそれが近いといえば……いや、よそう、なんかこれを同一視すると茜さんに怒られそうな気がする。てんぷらとすき焼きはなかった、それでいい。
「マスター? カイトクンさんがマスターなんですか?」
「ええ、その通りです! マスターは……サムライマスターなのです!」
おっと、ブロッサムさんが変なこと言い始めたぞ……いや本当に誤解なのだが、もうブロッサムさんの中では俺=侍マスターという構図が完成してるし、侍関連にはテンションを上げまくるのでこっちの話は全然聞いてくれない。
「さ、ささ、サムライマスターなんですか!? ティル知らなかったです……」
そしてほら、素直なティルさんが信じちゃって、衝撃の新事実みたいな顔でこっち見てるじゃないか……。
「サムライっていうと、よくブロッサムが言ってるです。カイトクンさんは、サムライマスターなのでブロッサムよりすごいサムライってことです?」
「その通りです。拙者ではマスターの足元にも及ばないでしょうね」
「はわわわ、す、凄いですよぉ!? ティルはサムライのことはよくわからないですけど、マスターっていうぐらいだからきっと凄いです! カイトクンさんは、とってもと~っても凄いんですね!!」
目をキラキラと輝かせてヒーローを見るような視線を向けてくるティルさんに、俺は思わず引きつった笑みを返す。
こんな純粋な目で見られると、違いますとも言いづらいというか……子供の夢を壊してしまいそうな感じがあって気が引ける。いや、ティルさんのほうがずっと年上ではあるのだが……。
そんなことを考えていると、ポンッとエリアルさんに肩を叩かれた。
「私は誤解しない……つまりは、たぶんブロッサムが勝手に言ってるだけだと思ってる。誤解されて大変……つまりは、カイトも変な誤解をされて大変だね。のちに対処……つまりは、ブロッサムの方はどうにもならないけど、ティルに関しては落ち着いたら私がそれとなく誤解を解いておくよ」
「エリアルさん、ありがとうございます。本当に助かります」
サムライ関連の話で盛り上がっているブロッサムさんとティルさんに対し、エリアルさんはまったく誤解していない様子だったので、非常にありがたかった。
なんというか、この置いて行かれてる感じの状態で、同じような相手が居ることがどれだけ心強いか……。
シリアス先輩「ティルタニアは、よくわかってないけどなんか凄そうって感覚っぽい。ブロッサムは相変わらずの暴走機関車だけど、それでも十魔の変態どもよりはマシという……」