閑話・最初の伝達
ネピュラと再会したカナーリスは、さっそく与えられた命令を遂行するために別世界に飛んだ。ペンダントという要因があり、恐らくというか間違いなくそろそろネピュラの復活に気付いて動こうとする者が出てくるだろうと考え、早急にネピュラの指示を伝達する必要があると考えたからだ。
そして最初に訪れたのは、カナーリスが再創造をした世界を任せた親しい間柄の神の元だった。
「どうも~お久しぶりで――うぉっ!?」
カナーリスが挨拶をしようとすると、それより早く接近してきた神がカナーリスの両肩に手を置いて迫真の表情で口を開く。
「カナーリス!? 私たち、仲いいよね? そうだよね、私はカナーリスが再創造した世界を任されたりしたわけだし、仲良しだよね!? だから、私のところに一番最初に来てくれたんだよね? ね?」
「あ~はい。というか、目が血走ってますが……」
「そりゃ血走るよ!! こっちはずっと待ってたんだから……ネピュラ様復活してるんだよね? 気付いた時にはカナーリスがもうシャローヴァナルの世界に行ってるみたいだったし、シャローヴァナルの世界に迷惑をかけるようなことをすればネピュラ様は怒るだろうと思ったし、シャローヴァナル怖いしで、我慢して待ってたんだよ! たぶん私だけじゃなくて、皆同じように血走った目でカナーリスを待ってると思う」
「う、うへぇ……これからあちこち回るのに、不安になりますね」
「それより早く説明!!」
「う、うっす……」
凄まじい気迫に気圧されつつも、カナーリスはネピュラの現状と本人の意思、そしてカナーリス経由で行われた命令に関して伝える。
それをすべて聞き終わった神は、カナーリスの肩から手を放し、納得したように頷く。
「……なるほど、ネピュラ様がそう仰られるなら、私もその意向に従うよ。うん……でもちょっとだけ、ごめんね?」
「うん?」
「ズルいじゃんかぁぁぁぁぁ!? カナーリスだけ、ネピュラ様と会ったんでしょ!? 私もネピュラ様に会いたいよぉぉぉ……」
「お、おぉぅ……ま、まぁ、気持ちは分かります。自分も逆の立場なら同じように羨ましがったでしょうし……まぁ、会いに行くのはとりあえず間隔をあけてシャローヴァナルと交渉してからですね」
「うん。とりあえず最初にカナーリスが私に話に来てくれたから、順番的に私が一番最初に交渉できると思う……けど、シャローヴァナルとの交渉かぁ……怖いなぁ」
「アドバイスしときます。なんかこの世界特有の恋人同士がイチャイチャできるような文化とか、道具とか、そういうの持っていけば交渉がスムーズに進みますよ」
「……んん?」
カナーリスのアドバイスは極めて的確なのだが、聞いた神にしてみれば意味が分からず、最初にシャローヴァナルと交渉した時のカナーリスのような表情を浮かべていた。
そのまま少し話をした後で、ふと神はなにかを思いついたように口を開く。
「……そういえば、さっきはネピュラ様の現状が気になりすぎて聞かなかったけど、カナーリスは念願のネピュラ様と再会して平静でいられたの? 絶対無理だよね?」
「あ、あ~それ聞いちゃう感じですか……ちょっと、話すのは怖いなぁと思うんですけど……まぁ、お察しの通りネピュラ様の前で大泣きしてしまいまして……」
「うん。そうなるよね。私だって、再会したら泣いちゃいそうだし、カナーリスは特に……」
「で、えへへ、泣きじゃくる自分をネピュラ様は優しく抱きしめて頭を撫でてくださいまして」
「――は?」
「たはぁ~アレはまさに至福のひと時というべきですか、ネピュラ様の慈悲深さを感じると共に幸せもMAXでしたよ」
「……」
幸せそうな声で告げるカナーリスの話を聞き、神は穏やかな微笑みを浮かべた後でカナーリスの肩に再び手を置いた。
「……そっか、よかったね。カナーリスはずっと苦しんでたし、ネピュラ様に再会してその苦しみを少しでも吐き出せたのなら、私も嬉しく思うよ」
「……そ、そうですか……あ、あの~? 手の力ヤバいんですが……肩砕けそうなんですけど……」
「うん。本当にカナーリスは辛かったと思うし、ネピュラ様が慈悲深いのもよく知ってるからその行動も不思議じゃない……うん。でもね、ちょっとご褒美が大きすぎないかな? というか、羨ましすぎて気が狂いそうだから、一発殴っていいかな? いいよね? ごめん、ありがとう! じゃあ、『銀河消滅パンチ』するね!!」
「自分まったく了承してないんですが!?」
余談ではあるが、カナーリスと仲のいいこの神もネピュラへの忠誠心ガチ勢であり、ネピュラに抱きしめられて頭を撫でてもらったカナーリスへの嫉妬で血涙を流しながら、拳を振りかぶっていた。
シリアス先輩「忠誠心はガチだけど、トリニィアに押し掛けずに自制してる辺り、絶対者の教育がしっかりしてるのがうかがえる気がする」