船上パーティ㉘
重信さんたちの場所から移動して、次の場所に向かっていると……これはまた珍しい組み合わせを見つけた。ひとりはよく知る相手……ノアさんなのだが、一緒にいるのがレイチェルさんだった。
シンフォニア王国の騎士団長であるレイチェルさんと、ノアさん……あ~もしかすると、ノアさんが元冒険者だったりする関係で知り合いなのかな?
「こんにちは、ノアさん、レイチェルさん。今日は、来ていただいてありがとうございます」
「こんにちは、ミヤマさん。楽しいパーティをありがとうございます」
「これはミヤマ様、ご無沙汰しているであります。交流の浅い自分にまで招待をいただけて、光栄であります」
穏やかに微笑みながら挨拶を返してくれるノアさんと、綺麗な敬礼をして挨拶を返すレイチェルさん、そちらもらしい感じで思わず笑みが浮かんだ。
「おふたりはお知り合いなんですか? やっぱり冒険者をしてた頃の関係で?」
「ええ、そうであります。騎士団と冒険者が共同して当たる討伐などもありますので、最上位冒険者であるノア殿とはたびたび戦線を共にしましたね」
「懐かしいですねぇ。その節は、お世話になりました」
予想通り、ふたりは一緒に魔物の討伐をしたりした……いわゆる戦友という間柄のようだ。
「ノア殿は素晴らしい実力者でしたし、引退すると聞いたときはかなり惜しい気持ちになったであります。体調の問題とあっては仕方ないでありますが」
「あの頃はもうかなり戦うのが厳しくなってきていましたからね。ルナちゃんが一人前と呼べるぐらいの実力になって、気が緩んだのもあるかもしれませんが……冒険者としての活動は難しくなってしまいましたね」
「そういえば、初めて会った時も貧血で辛そうでしたね」
「ええ、あの頃は徐々に悪化しておりまして、お恥ずかしながら出歩くのも大変な日などもありました」
いまでこそノアさんは健康的というか、ルナさんの話だと最近では貧血はまったく起こってなく元気らしいが、最初に会った時は道端でかなり苦しそうにしていたし、冒険者活動が難しかったのは間違いないだろう。
「しかし、いまのノア殿は活力に満ちているでありますな。貧血は完全に克服されたのでありますか?」
「はい。ミヤマさんの暖かなモノを体に取り込むようになってからすっかり健康的になりました」
「……は? え?」
「おかげで最近は肌艶もよく、それこそ冒険者稼業だって再開できそうなぐらい元気です。ただ、そうですね。ミヤマさんのモノがすっかり癖になってしまって、いつも心がそれを求めてしまうのは少しはしたなくも感じていますね。私としてはもっとたくさん入れてほしいのですが、フィーア先生が厳しくて……」
「……あ、あぁ、そうだったのでありますか……おふたりはそういう……」
「いや、言い方ぁぁぁぁ!? 誤解! 誤解ですから!?」
ノアさんは別に嘘を言っているわけではない。ただし、言い方が悪すぎてそれが血のことであるというのがレイチェルさんには伝わってない。
というか、頬を染めて恍惚とした表情で色気たっぷりに言われたら、事情を知っているおれでも「え?」となって思わず反応が遅れてしまったぐらいだ。
「そういえばノア殿は昔旦那を亡くされていたのでしたな。自分は死霊系に属する魔族でありますし、旦那も死霊系なので共感しにくい部分もありますが、新しい恋を見つけて前向きになっているのは喜ばしい限りであります」
「はい。私はもう、ミヤマさんの虜ですからねぇ」
「ちょっと、ノアさん!?」
勘違いしたレイチェルさんと、たぶん誤解には気づいていそうだが特にそれを否定したりする気がないっぽいどころか、乗っかっているノアさんという構図が完成してしまった。
チラリとこちらを見たノアさんは少し悪戯っぽい笑みを浮かべており、そういうところはなんだかんだでルナさんと親子だけあって似ている部分もあるのかと、そんな風に思いつつ……さてどうやってレイチェルさんの誤解を解こうかと、思考を巡らせた。
シリアス先輩「からかってるんじゃなくて、ノアは普通にのほほんとしつつ本気で言ってそう」