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閑話・長き旅路の果てに 後編



 ある程度の時間が経ち、子供のように泣きじゃくっていたカナーリスが落ち着いたタイミングで、ネピュラはテーブルと椅子を用意して席に座るように告げ、紅茶の準備を始めた。

 この位相のズレた空間は時間の流れも違っており、のんびり過ごしたとしても問題ないと判断したためだ。


「しかし、なんだその顔は?」

「たはぁ~いやぁ、さっきは本当に久しぶりに仕事したんですけど、落ち着いたら即座に仕事放棄状態に戻りましたね。表情筋にサボリ癖が付いちゃってるのかもしれません」

「ふむ、まぁ、本人が気にしないのであれば問題はないな。ほら、妾の作った茶葉で入れた紅茶だ」

「これはこれは、なんとも恐れ多いというか、ネピュラ様に紅茶を淹れさせている時点で恐れ多さMAXなんですが……」

「絶対者たる妾の方が紅茶を淹れる腕が上なのだから、妾が淹れるのが必然、別にそこに不敬などというものは存在せん。恐縮して味が分からないとなったりすれば、不敬だがな」

「たはぁ~なんというか、ネピュラ様らしいと言いますか……あぅ、美味しくて……また泣いちゃいそうです」


 カナーリスもネピュラが終わりを迎えるまで長らく仕えていた過去もあり、ネピュラの性格というのはしっかり把握している。上位者である己が下位の者に世話を焼くのも当然であるという考えのため、こういった場でネピュラ自ら紅茶を淹れるのも、彼女の性格を考えれば納得できる。

 まぁ、ソレはそれとして久方ぶりに再会した敬愛する主に紅茶を淹れさせて自分が座っているというのも、恐縮するといえばするのだが……。


「他の者たちも壮健か?」

「はい! ネピュラ様以外がトップにというのも皆納得できなくて、結局それぞれ自由にする感じになりましたけど、たまに連絡を取ったりはしています。ネピュラ様が復活したと聞けば、皆大喜びすると思いますよ!」

「喜ぶのは構わないが、大挙してこの世界に押し寄せてこられては、主様たちに迷惑が掛かる。妾も一度終わりを迎えた身、いまは二度目の生と認識しているからな、いまの生活もそれなりに気に入っているしいまさら以前のように君臨しようとも思わん」

「そうですか、ネピュラ様がそうお決めになったのなら、文句を言う者はいないと思いますが……あ~でも、絶対皆会いたがるとは思いますね」

「ふむ……」


 ネピュラは本当に多くの者に慕われている。そうでなければ数多の世界を統べる究極神として君臨してなどいない。

 そして彼女に永遠の忠誠を誓っている者たちの中には全知全能級もゴロゴロいるため、それほど時間はかからずネピュラの復活は知られることになるだろう。


「……では、カナーリス、お前にひとつ頼みがある」

「は、はい! なんなりと命じてください!!」


 ネピュラが告げた言葉を聞き、カナーリスは弾む声で頷く。表情は相変わらずではあったが、声には喜色がありありと現れており彼女の感情は非常にわかりやすかった。


「連絡が可能な者にで構わんから、妾のもろもろの事情を説明し、他の者にも伝えるように言ってくれ。そして、基本的に直接会いに来るのは禁ずるとし、手紙等による連絡は許すと伝えよ。この世界を訪れるのであれば、まずシャローヴァナルに対してしっかりと礼を尽くし、許可を得てからとすること……また、迷惑とならぬように間隔をしっかり開けることを伝えよ」

「はっ!」

「手紙に関しては、こっちに直接転送されても騒ぎになる。カナーリスに預けて妾の元に届けるような形が望ましいな。お前には手間をかけるが、どうだ?」

「もちろん構いません! ネピュラ様のお役に立てるのでしたら、自分は喜んで!」


 つまるところかつてのネピュラの配下たちとの連絡係を任せるという内容であり、とにかく久々に再会した主のために働きたくて仕方ないカナーリスは、本当に嬉しそうに何度もうなずいた。

 そのまま、紅茶を飲みつつ内容を話し合い、ある程度話がまとまったタイミングでカナーリスは椅子から立ち上がって、ネピュラの前で深く頭を下げた。


「……ネピュラ様に、お願いしたいことがあります!」

「うん? 言ってみよ」

「ネピュラ様のいまの生活の邪魔はしません! シャローヴァナルにもしっかりと礼を持って許可を取ります! この世界の常識にも必ず適応して見せます! なので、どうか……再びネピュラ様のお傍にお仕えすることをお許しください!!」

「……ふむ」


 それはまさに心の底からの願いであり、それを聞いたネピュラは少し思案するような表情を浮かべる。


「……構わんが、条件……というよりは、適応してもらうことがある。先に言った通り妾は現状を新たな生と認識しており、環境も刷新し、それに伴い立ち位置などにも変化が出ていると認識している。妾の傍に仕えるのであれば、それらに慣れてもらう必要がある」

「はい! どのような困難でも成し遂げて見せます!!」

「そうか、では……この世界においては妾のことを『ネピュラと呼び捨て』ないし『ちゃん或いはさん』で呼称し、畏まった態度ではなくフランクに接すること。そして、妾の方はお前を『さん付け』で呼称し『敬語で話す』ので、それに違和感なく適応できるようになるように」

「………………あ~その……ちょっと待ってくださいね。いま、恐れ多すぎて吐きそうになってます……自分、ネピュラ様への忠誠心ガチ勢なので……」


 先程までのやる気に満ち溢れた様子はどこに消えたのか、表情が変化しないままで青ざめるという器用な真似をするカナーリスを見て、ネピュラは「これはまだ時間がかかりそうだ」と、そんなことを思った。




???「ここで後編ってことは、次からパーティに戻る感じですね」

シリアス先輩「え? あの、シリアス……あったの? その……また私がいない間に?」

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― 新着の感想 ―
[一言] カナーリスってアリスと縁日デート⑦で出てた配下が該当するんですかね?
[良い点] やべぇ、カイちゃんの周辺にまた全能級が増えた
[一言] 更新お疲れ様です! カナーリスさんが感動的な再会の中落ち着いた頃にカナーリスさんが一緒に過ごしたいと述べるとネピュラさんからの提案がカナーリスさんにおいて凄くハードルが高いものにw でも気持…
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