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閑話・●●●●●後編



 神界にある神域……そこではシャローヴァナルと●●●●●、ある意味では因縁のある両者が対峙していた。とはいえ、シャローヴァナルの方はマキナと知り合いある程度の自我を獲得するまでの、ただの終わりという現象として動いていた時の記憶はほぼなく、ネピュラのように強く印象に残っているもの以外は忘れていた。

 ただ、目の前の●●●●●に関しては、当時は己でもなぜかわからなかったが別世界に逃げた相手の中で唯一『見逃した相手』だったので、ある程度印象には残っていた。


「……まず初めに言わせてください。自分に貴女に対する恨みはありませんし、この世界を害する気持ちも一切ありません」

「ふむ、分かりました」

「自分がここに来たのは……いえ、回りくどいことはやめて単刀直入に聞きます。ネピュラ様を……復活させたんですか?」

「はい」

「……っ」


 淡々と告げられたその言葉が●●●●●にもたらした衝撃は大きかった。シャローヴァナルにどんな意図があるかは分からないが、ネピュラが復活している……その事実だけが言いようのない幸福として胸に奥に染み込んでくるようで、光を失った目に涙が浮かんだ。


「……そうですか……ネピュラ様が……居るんですね? この世界に……」

「はい。快人さんの家で番犬をしてもらっています」

「なるほど、番犬……ばんけ――――――――――はい?」


 しかし続けられた言葉で●●●●●の頭は混乱一色に埋め尽くされた。シャローヴァナルが口にした快人という名前は、少し前に聞いたばかりなので分かるのだが、ネピュラが番犬をしているという意味が分からなかった。


「快人さんが不在の際などに家を守るものが必要と考え、彼女の力を一部格落ちさせて精霊に変えて、現在は世界樹の精霊として快人さんの家で番犬をしてもらっています」

「……???????」


 なにを言っているのかまったく理解できない。というよりは、まさかそんな理由でネピュラを復活させていたという事実に理解が追い付いていない。

 そんな●●●●●に対して、シャローヴァナルは順を追ってすべてを説明した。もちろん、シャローヴァナルの天然気味な思考も相まって、一部詳しく聞いてみ意味不明という個所はあったが、ひとまず現在のネピュラがどうしているかというのは理解できた。


「……な、なるほど……あ、いや、なんというか、ハチャメチャに複雑な気分ではありますが、ネピュラ様が納得しているのなら自分がどうこう言うものでも……」

「それで、貴女はどうしますか? 彼女に会うのなら、場所を教えますが……もちろん、快人さんやその周囲に危害を加えないという契約は結んでもらいますが」


 シャローヴァナルの言葉に●●●●●は思案する。もちろんいますぐにでもネピュラに会いに行きたいという気持ちはある。だが、いったいどんな態度でネピュラに会っていいのかとも悩んでいた。

 というよりは、ずっと会いたかったネピュラに再会すれば感情がコントロールできなくなるのは明白であり、少し猶予が欲しかった。


「……会いに行きます。ですが、少し時間が欲しい……この世界の者へ危害を加えないと約束します。なので、自分にしばらくこの世界に滞在する許可をいただけませんか?」

「構いませんが、条件があります」

「条件……ええ、自分にできることであればなんでも……」

「いろいろな世界のカップルで行うラブラブイベントを教えてください。貴女はいろいろな世界を渡ってきたのでしょう?」

「なるほど、ラブラブイベ……はへ? んん? あっ、その、自分の聞き間違いだったと思いたいんですが……いまラブラブイベントがどうとか……」

「快人さんとデートするときの参考にしたいので、いろんな世界のラブラブイベントを教えてください」

「…………う、うす」


 少し混乱から立ち直ったと思ったら、また深い混乱の沼に沈められたような気持ちを抱きつつ●●●●●は頷いた。









 シャローヴァナルから許可を得て、トリニィアに滞在することになった●●●●●は能力によってある程度この世界の知識を仕入れて、ひとまずと降り立った人界の町で思考を巡らせていた。


(会いたい、ネピュラ様にすぐにでも……でも本当に、どんな態度で会っていいのか……と、とりあえず、姿を確認するだけなら……いや、絶対バレますね)


 会いたいが勇気が出ないというような状態であり、迷う●●●●●だったが……そんな彼女の耳が少し離れた場所にいる集団の会話を捉えた。


「とりあえず、パーティが始まったらある程度自由で構わん。カイトも忙しいじゃろうから、紹介は無理じゃ。カイトの方から声をかけてきたりすれば大丈夫じゃが、お主たちがカイトの元に行くのは禁止じゃ。それを許せば、ライズ坊やクリス嬢からなにを言われるかわからんからな……」


 聞こえてきた会話……快人という名前を聞いて●●●●●は顔を上げて、その集団……ラグナたちの元に近づく。全能級である彼女が認識阻害魔法に近い能力を行使して近づけば、ラグナたちに気付くことはできない。


(申し訳ない、初対面の方……ちょっと記憶を覗かせてもらいますね。これはっ……宮間快人様……ネピュラ様が復活するきっかけを作ったともいえるあの方が主催するパーティ……シャローヴァナルの話だと、ネピュラ様は現在世界樹の一定範囲内から離れられないということだから、ネピュラ様は居ないでしょうが……快人様は居る)


 一目見てみたいと思った。シャローヴァナルに変革をもたらし、巡り巡ってネピュラが復活するきっかけを作った快人に……ちょうど、ネピュラに会いに行く勇気が出なくて悩んでいたタイミングだったこともあり●●●●●はまず快人に会うことを決め、そのまま認識を阻害する権能を発動させ……『ラグナの後ろに付いて行った』。




???「ああ、なるほど、嘘は言ってなかったわけですね。ラグナさん本人は気付いてないですが、ラグナさんに付いてきたって……」

マキナ「う~ん。ここで、後編って区切るってことは、ネピュラとの再会はパーティ後とかになるのかな?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ホントシロさんはブレない芯を持った素敵な女性だなぁ…(細かいところからは目をそらしながら)
[一言] 漢字表記に関しては、シンプルに"馴染み"なのかね。 英語圏だと正式な書類のサインとかも『KAITO MIYAMA』だし、外国人が、知り合いの日本人をカタコトで「KAITOさん!」って呼んで…
[一言]  ふむ、ネピュラの現状はシロさんから直接聞いたんだね。時系列的にはネピュラが復活してすぐくらいかな? とりあえず現状を理解し、ネピュラ本人が納得してるなら何も言わないけど……複雑な気持ち、っ…
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